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回「ものすごく危険な一線を越えたい。」

第2回「ものすごく危険な一線を越えたい。」

2020.11.24

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「いつから女の子を好きになったの?」ーーレズ風俗の世界では、定番の質問のようです。私が所属する、レズっ娘グループではトークイベントをよく開催していますが(私は出演しないんですけどね)、そこでもキャストたちに同じ質問がくるのだとか。なかには「気づいたら、好きになるのは女の子ばかりだった」というキャストもいるようですね。
 
私にとっての大きな転機は、20代前半で訪れました。大人の女性に、「私はバイセクシャルなの」と打ち明けられたのです。
 
*     *     *
 
深夜のバーでタカコさんも、ひとりでした、お店の人と話が盛り上がっていたので、私は「常連の人なのかな」と思いながら気にせず飲んでいました。すると、タカコさんが話しかけてきました。少し酔っているようでした。
 
「ひとりなの?」
 
「はい。友だちが先に帰っちゃったんですけど、もうちょっと飲みたくて」
 
タカコさんはそれを聞いて、じゃあ一緒に飲もうと私の腕を引っ張りました。このとき内心でちょっとビビってしまったのは、香水の香りを強く漂わせた、夜の雰囲気をまとうおねえさんだったから。でも実際飲みはじめると、すごく話しやすくて、陽気で、よく笑う人でした。
 
この色気のようなものは、どこから漏れてくるんだろう。
隣にいると色気にあてられそうだけど、でもそれでいてなんだか落ち着く?
なんだろう、不思議だな?
 
……私もだんだんといい気分になってきました。タカコさんはスキンシップが多く、話すときの距離もすごく近いんです。会話をしながら、飲みながら、私の肩や膝を触ってきます。
 
女同士やのになぁ。
めっちゃ酔ってはるのかな?
もう遅い時間だけど、どうやって帰るんだろう?
結婚してるのかな?
 
頭のなかがぐるぐるしてきました。きっと戸惑いが顔に出ていたんでしょう。まごまごしている私を見て、バーの店員さんが私に教えてくれました。
 
「強引やろ、変わった人やろ? わかるかなぁ……このおねえさん、君のことがタイプなんよ」
 
女の人が、私のことを好き……!? 高校のときに告白してきた、あの子のことを思い出しました。私はますます混乱して聞き返し、タカコさんが答えてくれました。
 
「えっ、なんのことですか? どういう意味ですか?」
 
「私はバイセクシャルなの。あなたみたいな女の子をいじめたくなるのよね。女性も男性もどっちも好きってことよ」
 
バイセクシャル。はじめて聞く言葉でした。このときの私はバイセクシャルもレズビアンも、何も知らなかったのです。
 
それからセクシャリティの話をおよそ2時間くらい聞いた気がします。話しつづけるタカコさんは、私の目に妙に魅力的に映りました。艶めかしいといったほうがいいかもしれません。なんだろう、はじめての感覚が頭によぎりました。それまでの人生で、男性にエッチな欲望を抱いたことはありました。でもそれをはるかに凌ぐ、大きな欲望のようなもの……。
 
この人に触れてみたい。
何かものすごく危険な一線を越えたい。
 
理性を保てなくなりました。何かが、パカっと開きました。
 
この夜、タカコさんが私の“女性同士のヴァージン”を奪った人になりました。
 
私はストレートではなくなりました。
 
私の人生に、新しい世界がめぐってきたんです。
 
 
成人するまで、同性愛というものを知っているようで知りませんでした。周りにそういったセクシャリティの友だちや知り合いはいないと思っていましたし、だから関わる機会もありませんでいた。
 
私は、もともとストレートです。
 
男性と恋愛し、男性と初体験も終えています。自分なりの恋愛観もあり、好きになったりなられたり、交際したり別れたり。それなりに悩みつつも、楽しい恋愛を経験しました。セクシャリティのことで悩んだことはありませんでいた。
 
そんな私が「自分はバイセクシャルだ」と思うようになったのは、この夜に”はじめて”を迎えたからです。
 
タカコさんと過ごした時間は、私の脳裏に強く焼きついたままです。ねっとりと張り付くように、あのときの映像が浮かぶんです。
 
それまで生きていて想像したこともない出来事でした。刺激的でした。この経験をきっかけに、私は性別を超えて人を愛するようになりました。それほど衝撃的な一夜でした。
 
……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。
 
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025
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