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『第3回全日本フォークジャンボリーの真実 〜現場からの報告〜』【後半】

#1『第3回全日本フォークジャンボリーの真実 〜現場からの報告〜』【後半】

2019.03.11

2018年11月25日(日)ROCK CAFE LOFT is your room
【講師】牧村(第1サブステージ)憲一
【ゲスト】上條G.G(メインステージ進行補佐)俊一郎

 1969年夏、中津川の椛の湖で開催された『第1回全日本フォークジャンボリー』に集まった2,000名弱(と、言われている)の観客が、1970年の第2回には8,000名、1971年の第3回には18,000名へと膨れ上がっていった。

 およそ50年の歳月は今、そこにいた観客、出演者、主催者たちの記憶と記録を失わせつつある。大げさに聞こえるかもしれないが、生存者の証言をきちんと残さねばならないと考えた。その後編です。(文責・牧村憲一)

第1サブステージの「人間なんて、ラララ」

牧村:それでは、2日目のお話をしましょう。プログラムでは第1サブステージの吉田拓郎と六文銭の出演時間は夕方と記してありますが、遅くても15時には第1サブステージに着いていたと思います。すでに「3バカトリオ」と呼ばれていた高田渡、加川良、岩井宏がステージ上にいました。渡さんは酔いが回っているのか、ブツブツ言いながら演奏していました。一方、拓郎も酒が入っていた様子で、ステージ脇からヤジを飛ばし、渡さんをからかうとステージから渡さんが「死ね!」と返しました。録音だけ聴くと喧嘩している、吉田拓郎と高田渡は犬猿の仲だとか言われますが、実際は酔っ払い同士がバカヤロウとやっているだけですね。

上條:そんなことを言い合えるくらい仲が良かったということなんですよね。

牧村:第1サブステージは、100人が入れば満員になるような小さい空間だったんです。ところがPAがトラブルを起こしてしまいました。それで、もうマイクが使えない状態になったんですね。観客から「人間なんて」のリクエストが来ました。この曲は拓郎がお客さんとコール&レスポンスのようにやりとりができる曲だったんです。ステージには拓郎のバック、パーカッションとエレキギターに加えて、そこに居合わせたミュージシャン全員で「人間なんて」を唄い始めました。普通にやっても20分くらいかかる曲なんですが、他にやることがないので1時間くらいやることになります。周囲にいたスタッフまでも巻き込んで、僕もステージに乗って「ラララ」のところを一緒に唄いました。この時のライブ録音を聴いてみましょうか。

──吉田拓郎「人間なんて」

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牧村:これを1時間以上やったんです(笑)。最後なんて、拓郎はまったく声が出なくて空気の出る音がしているだけでした。声だけ出していると貧血が起こるんですね。体力がなくなってフラフラになっていて、いつ前のめりに倒れてもおかしくない状況だったんです。そんな状況の中でもノリつつ、クールな役を引き受けていたのが小室等だったんです。100人くらいで満員になるような空間に、1,000人以上が集まってきてしまいました。PAなしで生楽器と肉声だけでやっていますから、みんな聴こえなくて前に行きたいんです。それで前にいた人が潰されていって、いつ事故が起こってもおかしくない状況になりました。そこで、小室等が止めに入ったんです。「もうここはおしまいにしよう」と言ったんです。メインステージは夜中までやっているわけだから、「メインに行こう」と言ったんですね。ここから事件が起こります。拓郎は負けん気で「ここはサブではなくて、こっちがメインステージだ!」とアジっていたんです。それを受けて小室等は「サブステージに行こう」と言ったんです。メインステージのことです。劣悪な環境でイライラが募っている観客たちの一部が、オー! と隊列を組んでメインステージに向かってしまった。後の伝聞では、この第1サブステージでの出来事は夜に起こった、そこにいた観客がメインステージになだれ込んでトラブルが起こったと書いているんですが、この写真を見てもわかるように、まだ夕方なんです。どう考えても夜ではない。トラブルが起こったのは深夜なので、時間差が5、6時間はあるんです。G.Gはメインステージにいて、どうだったのでしょうか。

上條:メインステージと本部の間を行ったり来たりしている間に、サブステージも何度か通ったんですが、何回通っても同じ曲をやっているなと思っていて(笑)。だから僕の感覚だと、半日くらい同じ曲をやっていたのかなという気持ちでした。その隊列がメインステージのほうに来たのは確かですが、そこで何か起こったりはしていないです。予定もきっちり決まっていたので。

観客からのジャズへの不満、追い打ちをかけた安田南の発言

牧村:初日のトリは岡林信康だったので、2日目にも最後に岡林が出るんじゃないかと思っていた観客もいたと思いますが、実際の進行はどうだったんですか。

上條:多少、場が荒れてはいたんですね。商業主義がどうのとかデモをかけられて。そういう意味もあって20時くらいに岡林信康と、前日にスターになってしまった三上寛を出したら、お客さんに大受けして一旦騒ぎが落ち着いたんです。でも次が日野皓正だったんですね。そこからまたフォーク・ファンが騒ぎ出した。「なんでここでジャズなんだ!?」という気持ちがあったと思います。

牧村:フォーク・ファンとジャズ・ファンは重なっていなかったんですよね。

上條:そうですね。なんで出演することになったんだろう、と話していましたが、このちょっと前に近くで『箱根アフロディーテ』というイベントがあって、その流れでの出演だったんだと思います。

牧村:そうそう、『箱根アフロディーテ』からでした。存在するのだが見ることができない『第3回全日本フォークジャンボリー』の映像がありますよね。それ、テレビマンユニオンが『箱根アフロディーテ』の流れで中津川に来て撮ったものなんですね。

上條:主催側が怒っていましたけど、立っていたノボリに火をつけて撮影したり、ちょっとヤラセのような撮影があったようなんですね。どこかに残っているはずだということで、佐野史郎さんが依頼をしてテレビマンユニオンを探したんですけど、どこにも見つからないんです。

牧村:当時の関係者の方がもういなくて、現在残っている人ではそのテープがどこにあるのかわからないんですね。それで、日野皓正のライブは実際どうだったんですか。ここは大事なところなので、日野皓正、次が安田南+鈴木勲トリオという流れだったんですよね。

上條:日野皓正たちの演奏は素晴らしいし、ロックと融合しているようなことをしていたので会場はいい感じでした。そのあと安田南、となるわけです。そこで中止になってしまったので、僕も記憶が確かではないんですが、遠藤賢司がメインステージではやっていないんです。それはあり得ないので、後日、大塚まさじさんに聞いたら、「あの暴動のあとに自分たちが出番だったんだ」と言っていたので、ザ・ディランIIと遠藤賢司がスタンバイしていて、そこでイベントを閉めようということだったと思うんです。安田南の後には山下洋輔トリオがいつでも行けるようにスタンバイしていました。

牧村::山下洋輔トリオはプログラムにも書いていないので、隠し玉として用意されたということですか。

上條:あれほどのフリー・ジャズは他にはないので、あの人たちが出たら何とかなるだろうと思っていたんです。

牧村::忘れられないマネージャーというのが何人かいるんですが、そのうちのお二人が山下洋輔トリオのマネージャーなんです。

上條:チーフ・マネージャーが阿部登、もう一人が柏原卓。

牧村:この二人が今か今かと山下洋輔トリオの出番を待っている時に、メインステージで安田南が唄い出します。ジャズはもういい、フォークを出せという不満が溜まった観客が騒ぎ出すんですが、その時の様子を収録した音源があるので聴いてみましょう。

──観客の暴動の声、ステージの上で安田南のマイクが奪われて討論が始まる音声。

牧村:ステージに上がっていた人たちは別として、この現場を目撃し、体験したのは今やG.Gしかいないので、当時の様子を聞かせてください。

上條:いま聴いていただいたのは、ステージが占拠されて安田南がマイクを奪い取られて討論会が始まる冒頭です。1曲終わって会場がざわめいていた場で、それは言ってはいけないことを彼女は言ってしまったんです。「文句あるんなら上がってらっしゃいよ」と。それを聞いていて、僕はもうね、「ウワァ」と思いました。それで、ステージに2、30人の観客が上がってきてしまって…とにかく僕たちスタッフは楽器を守らなくてはいけない、その間にも背中に空き缶やビール瓶をボンボン浴びせられたという記憶です。

もしもあのステージ占拠事件がなかったら…

牧村:この半日の間に起こったことが、「『人間なんて』を聴いていた観衆が徒党を組んでメインステージを乗っ取った」と面白おかしく語られてきたんです。安田南自身はその後も、ステージ占拠のきっかけを作ってしまったと思わなかったようですが、タイミング悪く、苛立って待っていた観客がステージに上がるチャンスになってしまったんですね。

上條:観客も、ジャズなんか引っ込めということではなくて、とにかく劣悪な環境で、しかも2日目でイライラが高じていたんですね。

牧村:2日間食べるものが足りなくて、トイレも充分にない、汗と泥にまみれた中で。せめて音楽を聴いて一緒に唄ったり踊ったりして解放されようとしていたところにジャズが。当時、ジャズ喫茶でも、目をつむって聴きながら首を振るくらいだったんです。「フォークではない音楽」が、日野皓正、そして安田南と2組続いてしまったのがきっかけにもなった。この不毛な論議は明け方まで続いたんですね。『フォークジャンボリー』を事実上進行していたのが中津川労音、リーダー格が笠木さん、そしてURC。結局、この後始末を見てどうお考えになったのか、そばにいたG.Gからお聞きしましょう。

上條::商業主義と言われてしまったけれど、第3回目にしてやっと少し利益が残ったと聞いています。でも、その利益は、亡くなった高校生にお見舞金として渡ったんです。あの占拠事件がなくても、第4回目以降があったかどうかは定かではないと思いますね。

牧村:笠木さんがのちに語っていたのを聞くと、もう自分たちが制御できないくらい大きなコンサートになってしまったと。今みたいに立派なPAがあるわけじゃないし、1,000円という入場料でまかなうことも限界だったんだと思います。第3回はチケットを買って入った人は17,000〜8,000人、無料で入った人が数千人いて、ピーク時は2万人を超えたんじゃないかということです。せいぜい2,000万円くらいなんですね。当時の給料は初任給で30,000円代だったかな…。ですから、これだけの出演者を揃えてコンサートを運営するのは経済的にもきつかったと思います。そこで、ギリギリで出た利益を亡くなった高校生に渡したというのは、騒ぎ自体ばかり面白おかしく書かれてしまっているせいで、後日談としてもあまり知られていないんですね。中津川労音の方々は、自分たちが元来の意味のフォークソングを伝えるべきだと、自らギターを弾き唄い全国を行脚したんです。笠木さんは亡くなるまで、自分の考えを貫きながら生きて、ご自分の生涯を全うされたのではないかと思います。その後、音楽舎は如月ミュージック・ファミリーを立ち上げますね。

上條:音楽舎の内部でもちょっと問題があって、我々は高木照元を中心に如月ミュージック・ファミリーを立ち上げました。そこになぜか、第3回に出損なった山下洋輔トリオも所属することになったんです。でも、如月ミュージック・ファミリーも1年ちょっとしかもたなかったんです。僕も、途中でこれは危ないなと思ったので、「今月で山下トリオはクビだ」と宣言しました。柏原はずっとそれを恨んでいたのですが(笑)。でもあの人たちを巻き込んじゃいかんと思ったので、早めにやめていただいたんです。それから、プロデューサーだった白井道夫さんも、何年か前に亡くなられているのですが、白井さんは「『フォークジャンボリー』は何年か経ったら無料にして、8月の第1週になったら全国からプロアマ問わず勝手に2日間一緒に唄い騒いで、またそれぞれの場所に帰っていくようなお祭りにしたい」とおっしゃっていました。

牧村::中津川で第1回を開いた時の目的に戻ったということですね。3回目はもう本当にコントロールができなかった。2日間48時間のことを二人でお話ししてきましたが、面白おかしく伝えられているが、そうではなかったということをお伝えしました。それでは、ロックの第2サブステージで唄ったあとにロサンジェルスに行ってしまって、つい先ごろ帰国してコンサートをした、かねのぶさちこさんの歌をラストにおかけします。ロスに旅発つ前に、日本で最後に作って、『フォークジャンボリー』でも唄った曲を最後に聴いてください。上條さん、ありがとうございました。(拍手)

──かねのぶさちこ「時にまかせて」

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*文中敬称を略させていただきました。

 

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