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キノコホテル / マリアンヌの逆襲

2013.05.01   MUSIC | CD

YCCW-10197 2,100yen(tax in) / 5.1 IN STORES

1. エレキでスイム
2. ノイジー・ベイビー
3. 今夜はとってもいけない娘
4. かえせ!太陽を
5. すべて売り物
6. 悪魔巣取金愚

 作品を出す度に私達の予測を越えてくるキノコホテルが、3rdアルバム『マリアンヌの誘惑』に続きリリースするのは、60年代〜80年代の日本のロックの膨大なアーカイヴから6曲を厳選してカバーしたミニアルバム。カバーといっても知る人ぞ知る名曲といった選曲で、すべての原曲を知ってる人はかなりの音楽通だろう。今作の最大の特徴は、新ベーシスト・ジュリエッタ霧島の加入後初の音源という所だ。超絶テクニックを持つ霧島の粘りのあるベースはキノコホテルの音楽的冒険を一気に飛躍させている。1曲目に東京ブラボーのインスト曲「エレキでスイム」を持ってきたのもそうした自信の表れだろう。とにかく全曲がキノコホテルの世界観で新たに生まれ変わっており、キノコホテルの今後の方向性を指し示す重要作と言える。
 特筆したいのは5曲目。日本のパンクを生んだ最重要バンド、アーント・サリーの「すべて売り物」(1979年作)をさらに研ぎ澄ましたソリッドな演奏が圧巻だ。この曲を聴いて何にも感じなかったら一生キノコホテルに縁はないだろう。また4曲目の「かえせ! 太陽を」の原曲は1971年の映画『ゴジラ対ヘドラ』の主題歌で、2011年の3月11日以降、キノコホテルはライブで何度も演奏している。以前から邦楽マニアの間ではカルトな人気曲だったが、3.11以降に大きく意味が変わった曲だ。〜汚れちまった海 汚れちまった空〜と歌われる歌詞は、福島原発事故以降の日本の現状そのもので、レトロな昭和の曲という雰囲気は微塵もない(それは不幸な現実でもあるのだが…)。この曲に限らずだが、常に時代とリンクした作品を提示していこうというパンクスピリットに溢れた、キノコホテルらしいアルバムだ。(加藤梅造)

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