平成に生まれ現代社会で育った自分が、昭和の時代に誕生した異空間に対してノスタルジーを感じるのは何故だろう。映像や書籍などを通じて知った過去の風景を懐かしい物として認識しているだけなのであろうか。

　しかし本作の中で紹介されている珍スポットとは、決して自分がそれまでに見聞きした世界とは違う全く新しいものでもあった。長い年月を経てなおその場所に存在する異質なモノの特異性。その空間を作り出した人間の芸術性。そういったものが自分の中で混ざり合い、どこかに自分の知らない世界が存在していているのだと感じさせられるような珍スポットの数々には、作中でも用いられている"パラレルワールド"という表現が見事に当てはまる。そういった不思議な感覚を、自分は懐かしさにも似たようなものに感じたのかもしれない。日常の中の非日常、確かに現実に存在する異世界への扉を、この本を手にとって開いてもらいたい。(Loft PlusOne West:垣内貴礼)