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長江俊和 / 出版禁止

2017.05.01   CULTURE | BOOK

新潮文庫
637yen(tax in)

 ライター長江俊和が手にしたのは、出版禁止となったいわくつきの原稿「カミュの刺客」。その内容は、有名なドキュメンタリー作家と不倫の末に心中をした秘書・新藤七緒への独占インタビューだった。心中の全てを記録したビデオの存在…では、秘書だけが生還した理由は? 事件を引き起こしたのは誰の思わくなのか? 本当に心中なのか? 死に向かうことで救われる愛など存在するのかと苦悩する主人公が耳にした不穏なキーワード「視覚の死角」。
 著者本人の名前が出てくるため混乱しやすいのだが、いわゆるフェイクドキュメンタリーである。後半に差し掛かるあたりで、もともと違和感のあった名称がアナグラムだということにも、仕掛けられた叙述トリック自体にも気づいてしまったのだが、その奥にある心理までは読みとれず、一気読みをした。伏線の全てが明快に回収されるわけではないことも含めて後味が悪いが、考察サイトが多数あるため読後も楽しめる。(成宮アイコ)

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