この作品の大枠を言うと「ある学校を舞台にした、擬人化した動物たちの群像劇」になります。ただ、食物連鎖も気にせずみんな仲良くといった都合よく目隠しされた部分はなく、本能を内に秘めどこか歪な共存社会が出来上がっています。そんな社会で殺人はもちろん犯罪なので植物による代替えを食物とし、肉食獣はしのいでいます。そんなかで力を持つのは捕食される側だった草食動物、弱いことが武器にすらなっている社会。実社会でも度々見られる、弱者は守られるという事が武器になり、強者になってしまうという事を視覚的にもわかりやすく表現されているように感じました。そんな世界で起こった殺人事件を軸に物語は展開、まだまだ序盤なので謎も多いですが登場人物たちの心情が丁寧に描かれていてどんどん物語に引き込まれていきます。某大御所作家のお子さんではという噂話もありますが、そんなことは関係なく一新人作家としてこれからが楽しみな方です。（Asagaya/Loft A：柏木聡）