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イヤミス短編集 / 真梨幸子

講談社文庫
734yen(tax in)

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 イヤミスを6編収録した短編集。人を淡々と追い込む真梨幸子の文章を味わうには長編が一番だが、そこはイヤミスの女王、短編でも読後の悪さは健在。格上のステータスに行かせないようマウンティングしあう女友達、笑顔で見張り合う悪意、呪いのように交わす「わたしたちいつまでもこうして仲良しでいようね」。あらかじめ用意されている最悪への道すじ。進めば想像を上回る悪い結果になると分かっているのに「もしかして」というわずかな希望を捨てさせない文章力で、人の弱みを思いのままに掴む。そしてもっと悪いことに、掴まれてしまうことに快感すら感じさせる。わたしたち読者は、騙されないぞと思いつつ、騙されたくてたまらないのだ。だが、現実世界では騙されては困る。だから本を開く。欲望のままに生きて堕ちていく疑似体験と、その様子を安全地帯から俯瞰するために。長編よりも読後の重さは控えめなので、初心者はこの短編集から読み始めるのがおすすめ。(成宮アイコ)