なんと硬くて面倒臭そうな表紙でしょうか。書店では『思想書』の棚にあるかもしれませんが、この本は今から100年ぐらい前の、当時からすれば超・自由に生きようとした、超・前のめりな女の子の評伝。やりたいことをやる(=やりたくないことはやらない)ために全力を尽くした野枝は日本の全ギャルの指針となるべき人物。旦那を捨てて、日本の歴史に残るアナキスト・大杉栄の家に転がり込み、セックスと啓蒙活動に勤しみ、現代感覚で言えば大炎上しまくった挙句、国家の敵とみなされ最後は殺されてしまいます。野枝はそのあっけらかんとしたガッツと気迫で閉鎖的な大正の世において自由を高らかに叫び、荒れ狂います。地元では今だにあの淫乱女!と蔑まれ、お墓は森の中に大きな石が一つだけ。か、かっこいい!大杉栄の評伝も著作にある栗原さんの文章は、相変わらず捉えどころのないわかりやすさ。これを書いた栗原康という人物に興味が湧くこと請け合いです。この人、変な人です。(Naked Loft:齋藤 航)