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少し不思議。/天久聖一

2013.11.05   CULTURE | BOOK

文藝春秋 / 1,500yen

 あらゆる媒体を用いて、独自の表現を追求する異能の創作者、天久聖一。その天久氏初の単行本化小説である本作、『少し不思議。』ご自身が 「私SF」と称するこの小説、まさに博学才穎な作者ならではの「ゴチャ混ぜ」小説でした。天久氏自身を彷彿とさせる主人公、辰彦は、物語の冒頭で自分の靴と居酒屋の便所の突っかけを履き違えて帰宅。以降、失われた記憶の断片を集めながら、現実と虚構の狭間を彷徨うこととなりますが、天久氏が書くコントのような不条理な出来事が連続していく中、突如現れる、3・11から数日間の混沌とした日々の精確な描写。これを契機に夢から醒めるような錯覚に陥った後、現実が簡単に虚構を凌駕する日をクローネンバーグを想起させるような地獄絵図で現出した終盤の展開は必読。…と、悍ましい文言を並べつつも、そこは氏のこと、しっかりと笑わせてくれます。それがまた残酷といえば残酷ではありますが…(LOFT PLUS ONE:マツマル)

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