Rooftop ルーフトップ

REVIEW

トップレビューバカだけど社会のことを考えてみた/雨宮処凛

バカだけど社会のことを考えてみた/雨宮処凛

2013.11.05   CULTURE | BOOK

青土社 / 1,470yen

 社会運動家、ジャーナリスト、作家など様々に活動する雨宮処凛の新刊。しかしすごい直球なタイトルだけど、実際、雨宮氏の知人や読者で彼女をバカだと思っている人はいないだろう。聡明であり人柄も素晴らしい雨宮氏だが、そんな彼女はかつてリストカットを繰り返していた時期があった。その頃、彼女は自分自身をバカでクズだとで思いこんでいたという。
 もちろん、これは彼女が悪いわけではなく、社会的に弱い人をバカでクズで無能だと思い込ませるような社会そのものに問題がある。そして残念ながらこうした社会は「格差社会」という形で現在も拡大しているのだ。だから雨宮氏が社会に目を向ける(バカだけど社会のことを考えてみる)ことで、自虐のスパイラルから抜け出せたのは当然の結果だったのかもしれない。彼女はかつての自分の生きづらさをこう振り返っている。
 思えば私の生きづらさは、人間への不信感と、己の無力感といったものに彩られていた。様々な矛盾や不条理に溢れた世界の中で、多くの人がそれに目を背け、見ないふりをし、時には「自己責任」と突き放し、そして時には「自分たちがどうせ何をしても変わらない」と諦めている。
 本書は雨宮処凛が3.11以降考えてきたことを、様々なテーマで綴っている。本人は「生活保護」から「山本太郎」までと書いているが、ここ10数年の社会の動きが非常によくわかる良書だ。(加藤梅造)

関連リンク

このアーティストの関連記事

CATEGORYカテゴリー

TAGタグ

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻