震災前から著名なAV女優の椎名ひかるさんも含まれているが、全員「震災がなければ違う道を歩んでいた」と語る。著者前文で想起されている東北大飢饉時の「娘身売り」のような悲惨さは誰も見せようとしないが…皆が皆、実際家が被害を受けていても「自分は被災者でない」と語り、恐怖や罪悪感から沿岸を見に行けない女性も多い。「生き残ってしまった申し訳なさ」からの自傷行為にも思える。処女を撮影で棄てる…絶句するしかない。また、幾ら「企画」女優さんとはいえギャラの余りの安さに愕然（本物の処女喪失乱交に出て十数万円、とか百万円を貯める為にあと何回か頑張るとか）。風俗に遺体捜索に携わった自衛隊やボランティアらが来て膝で唯々泣き性的サービス求めない、とか突如ごく普通に幽霊話が出てきたりとか…決して表に出ない深い震災の傷跡。彼女らが「その道」を選ぶ下地としてケータイ小説「Deep Love」が性の商品化への敷居を下げたという証言も思いもよらなかった。ほか、美談だけでない震災のルポとして石井光太「津波の墓標」併読もお薦めする。（尾崎未央）