河出書房新社 / 1260yen
昨年起こった人気お笑い芸人の母親が生活保護を不正に受給していたという騒動はまだ記憶に新しいと思うが、私は不正受給そのものよりも、それに対する世間の大バッシングの方に何とも言えない嫌な感じを受けた。ネットはもちろん週刊誌、テレビなどで連日のようにバッシングが続き、ついには国会議員までが個人攻撃を繰り返した。それはまるで生活保護そのものが悪いものだと言わんばかりの異常ぶりだった。本書は労働問題に詳しい雨宮処凛が、すっかり悪いイメージのついた生活保護について基本的な所から解説した入門書だ。そもそも生活保護の不正受給額はたったの0.4%で、ほとんどの受給者は高齢者や病人、ケガ人、シングルマザーなどやむを得ない事情にあるという事実。一方、長びく不況で日本の貧困率は16%にも達している。誰もがいつ貧困に陥るかもしれない状況で、生活保護に対する正しい知識を持つことは社会全体にとって非常に重要なことがよくわかる。特に若い人はネットやマスコミのイメージに流されないで欲しい。（加藤梅造）
