広範な文学知識と冷静かつ経験豊富な臨床精神科医としての二つの顔がじつにバランスよく混淆し、「顔面考」「屋根裏に誰かいるんですよ。」など多くの著書を持ち、サブカルチャー好きにもファンの多い春日武彦先生。そんな春日先生初の長編小説がまさか純文学系でなくエンタメ系とは夢にも思わなかった！ある日突然仏壇の前に転がったまま１５年間病的な沈黙を続けてきた男と、高飛車な女性芸能人と、イケメン美女普通が混じった男女混成３人の個性溢れる精神科医との対決というか根比べというか、なお話。豊富な文学作品／臨床症例引用はいつもの春日先生の著書の通り、なのに大衆小説として凄く面白かった！ドラマか映画化の引き合いがあってもおかしくなそうなビジュアルに訴えかけてくる場面満載。「特命ファイル」なんてタイトルについているくらいだし、ぜひ続編を出してほしいものです。（尾崎未央）