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【ライブレポート】SHINJUKU LOFT 35th ANNIVERSARY Glamorous Acoustic 出演:森重樹一/中島卓偉

2012.09.06

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SHINJUKU LOFT 35th ANNIVERSARY
Glamorous Acoustic
出演:森重樹一/中島卓偉
2012年8月25日(土)新宿LOFT

写真◎o-mi/取材・文◎椎名宗之

アコースティック・スタイルでロックの本質を体現した両雄のドラマティックな“共鳴”

昨年から続いている新宿LOFTのオープン35周年を記念したイベントの中でも屈指の名演が晩夏の歌舞伎町で繰り広げられた。アコースティックをテーマにした作品を奇しくも同時期に制作していた森重樹一と中島卓偉の師弟競演とも言うべき珠玉のアンプラグド・ライブである。
両者の関係性については本公演の前に行なったwebインタビューを参照して頂きたいのだが、同じ市松模様のステージに立ち、共にアコースティック・フォーマットで渾身のパフォーマンスを魅せた両者の姿は、「師弟」と言うよりも優れたミュージシャン・シップと堅い信頼の絆で結ばれた「ソウルメイト」と呼んだほうが相応しいように思えた。

卓偉自身「今日で終わるのが本当に寂しい」とMCでも語っていた東名阪のミニ・ツアー最終日。当日の会場内は満員御礼、身動きをするのも不自由なほどで、またとない両者の競演に対する期待値の高さが窺えた。
先攻は卓偉。3年前から敢行している『アコギタクイ』同様、単独での弾き語りスタイルだ。「音楽を好きになったのはビートルズ、ギターを持ったのはセックス・ピストルズ、歌を唄おうと思ったのはZIGGY」と森重のファンに対して自己紹介をした後、抑揚のついた歌声とギターで近年の代表曲である「明日への階段」を披露。初見のオーディエンスをもひと息に自身の世界へといざなうその圧倒的な歌と表現力はやはりただならぬものがある。
アコースティック・ギターの弾き語り=静寂なライブでは決してない。アンプラグドだろうと卓偉の本質はあくまでもロックだ。「mother sky」のような屈指のバラードはより深みとしなやかさを増し、「ゲルニカ」や「蜃気楼」といったアッパー・チューンはオリジナルの武骨さが損なわれることなく止め処なくパッションがほとばしる。オーディエンスとのコール&レスポンスも激しい。卓偉は声高に語ることなく、実にさり気なく証明してみせるのだ。一切の装飾を排し、剥き出しの歌とギターで奏でるからこそ真に迫る凄味が生まれることを。
「PUNK」、「Calling You」と自身のクラシック・ナンバーもエッジの効いたアンプラグド・パンクにアップデートした後、森重の了承を得て披露することにしたというZIGGYメドレーへと突入。これぞ今なおZIGGYファンを自称する卓偉の面目躍如と言えるだろう。「HOW」、「FEELIN' SATISFIED」、「BORN TO BE FREE」、「TOKYO CITY NIGHT」、「SING MY SONG」、「La Vie en Rose」、「I'M GETTIN' BLUE」と実に7曲ものZIGGYクラシックスを矢継ぎ早に淀みなく唄いきったのだ。これにはバーホールにいた森重のファンも駆け足でライブスペースへと移動、身体を揺らしながら「なかなかやるじゃん」と言わんばかりの顔でステージを見つめていたのが印象に残った。
間違いなくフロアの温度が上がり、オーディエンスの興奮が冷めやらぬ中で最後に披露されたのは大作「3号線」。母親と離ればなれに暮らした幼少期の記憶を綴った感動的なナンバーだが、ここでもアンプラグドならではの味わい深さが全面に出ていた。発表から1年も経たずして自身のベスト・ソングの域に達した楽曲と言えるのではないか。

一方、森重樹一はYOUと山本陽介という二人のギタリストを従えて貫禄のパフォーマンスを披露。曲によってサンプリングを用いながらアコースティック独自の深淵なる世界を変幻自在に体現していた。
今月26日に発売されるミニ・アルバム『NAKED SUN』から「まんざら捨てたもんでもないぜ」と「DICE」、アルバム未収録の新曲「鮮やかな色彩」を立て続けに唄う森重の研ぎ澄まされた歌には、酸いも甘いも噛み分けた風格が漂う。とりわけアーシーな雰囲気の「DICE」はこうしたアンプラグド仕様のライブにはうってつけの好ナンバーで、ロックの純度の高さを保ちつつ深いコクとまろみをにじみ出す絶妙なブレンド感覚は森重ならでは。オーディエンスも曲に合わせてハンドクラップで熱演に応え、序盤からフロアの一体感が抜群だ。
「どんな花より美しい」や「今日が今日であればいいさ」といった近年の佳曲でも、「I WANT YOU TO KISS ME ALL NIGHT LONG」のような22年前に発表されたZIGGYナンバーでも、貫かれているのは普遍的なポップ・ソングとしての資質である。プリミティブなロックの匂いを内包しつつも、聴き手を選ばぬ親しみやすさが常に一貫しているのだ。文字通り“裸の歌”となるアコースティック・ライブでは、そうした森重のポップなソングライティングの素晴らしさを改めて実感する(卓偉がその親しみやすさを重視した曲作りに絶大な影響を受けていることは今さら言うまでもないだろう)。
琴線を震わせるバラード「散りばめられた星と欠けた月のピアス」、「あんたの奴隷はごめんさ」と連呼するブルージーな「支配者の声」と七色の歌声を惜しげもなく轟かせた後、圧巻だったのはZIGGY時代の異色の楽曲「暗流」だ。森重が今の卓偉の年齢だった時に発表された同曲は7分を超える大作だが、ヴォーカリストとしての底知れぬ力量に緩急のついたギターの技巧が相俟って弛むことなく一気に聴かせた。それはまた、アコースティックでも充分にロックできるんだという森重の矜持を感じずにはいられない瞬間でもあった。
SNAKE HIP SHAKESの「POISON CHERRY」、ZIGGYの「ONE NIGHT STAND」と一撃必殺の不朽ナンバーが連射され、否応なく盛り上がるオーディエンス。それに煽られるように歌と演奏がさらに熱を帯びていく。目前で繰り広げられるステージとフロアの理想的な相乗効果に思わず笑みがこぼれる。
ダンサブルな「TOKYO CROSS ADDICTION BLUES」に続き、往年のファンにはお馴染みの「LAST DANCEはお前に」で締め括り本編が終了。近年のソロ楽曲とファンの望むレパートリーがバランス良く凝縮した構成で、卓偉のファンにもその存在感を存分にアピールできたパフォーマンスだったと言えるだろう。

アンコールは事前に告知されていたスペシャル・セッション。
まず、先月29日に発売された卓偉のニュー・アルバム『アコギタクイ-共鳴新動-』に収録の森重参加曲「今は何も言わずに」(作詞:森重樹一/作曲:中島卓偉)が披露され、両雄によるドラマティックな歌の共鳴に息をのんだ。壮大なスケールを感じさせる原曲だが、ライブで披露されると雄大さと深みがより増しているように感じた。間違いなくこの日のハイライトであり、日本のロックのDNAが森重から卓偉へと着実に受け継がれていることを如実に物語る見事な二重奏だったと言う他ない。
続いて、卓偉がソロ・デビューを果たした年に発表されたZIGGYの『Goliath Birdeater』から「VENUS」。これは卓偉によるリクエストだったようで、古くからのファンも狂喜したレアな選曲だ。
その後、このライブの3日後に誕生日を迎えた森重の誕生日をサプライズで祝う一幕を挟み、最後はZIGGYのデビュー・アルバム『ZIGGY〜IN WITH THE TIMES〜』からノリの良いロック・チューン「BOOGIE WOOGIE TRAIN」で大団円を迎えた。大好きなZIGGYの曲を思う存分やれる喜びを全身で表していた卓偉の姿が何とも微笑ましく、そんな自慢の後輩を温かく見守る森重のロック・スター然とした佇まいは品位を感じさせた。

卓偉のツイッターによると、終演後にこんなやり取りがあったそうだ。
「森重さんと話しました。次はお互いバンドでのツアーにしようか、そしてどんな形でもまた一緒にやろう、と」
稀代のヴォーカリストである両名の豪華な競演がこれっきりとは確かに惜しい。東名阪以外でライブに参加したかったファンも多かったことだろう。いつの日かまた心を震わせる二人の共鳴する様を僕たちに見せつけて欲しいものである。

──セットリスト──
【中島卓偉】
01. 明日への階段
02. mother sky
03. ゲルニカ
04. 蜃気楼
05. PUNK
06. Calling You
07. ZIGGYメドレー
08. 3号線

【森重樹一】
01. まんざら捨てたもんでもないぜ
02. DICE
03. 鮮やかな色彩
04. どんな花より美しい
05. 今日が今日であればいいさ
06. I WANT YOU TO KISS ME ALL NIGHT LONG
07. 散りばめられた星と欠けた月のピアス
08. 支配者の声
09. 暗流
10. POISON CHERRY
11. ONE NIGHT STAND
12. TOKYO CROSS ADDICTION BLUES
13. LAST DANCEはお前に

【アンコール:森重樹一×中島卓偉】
01. 今は何も言わずに
02. VENUS
03. BOOGIE WOOGIE TRAIN

 

※写真はクリックすると拡大して見ることが出来ます。

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