Rooftop ルーフトップ

NEWS

トップニュースRooftop Exclusive Live Report 怒髪天 Neo-JAPANESE STANDARD

Rooftop Exclusive Live Report 怒髪天 Neo-JAPANESE STANDARD

2010.11.09

歌舞伎町“NOT DEAD”ギグ:10月12日(火)新宿ロフト
トーキョー“HAYARI-UTA”:10月13日(水)九段会館
キャバレー“SHO-WA”:10月15日(金)東京キネマ倶楽部

文:椎名宗之
写真:加納亜紀子(九段会館、東京キネマ倶楽部)

dohatsuten_main.jpg

昭和の歌の良心を呼び覚ました型破りな3公演

 “昭和”をキーワードとして各公演ごとにテーマを設けた怒髪天のスペシャル・ライヴ“Neo-JAPANESE STANDARD”は、彼らのこの1年の活動の成果が如実に表れた3日間だったように思う。
 従来のバンドのイメージや持ち味を一度蚊帳の外に置き、上原子友康(g)が潤沢に用意した楽曲の中からトライアルに値すべきものを抽出する手法が採られたしなやかで野太い傑作『オトナマイト・ダンディー』、タブー・ゾーンとも言うべきJ-POP的アプローチでバンドの音楽的な革新を図りつつ、マス寄りなエンターテイメント性を打ち出したシングル『真夏のキリギリス』と、ライヴ動員が増加の一途をたどり続けているこの時期にあえて俺達界隈をふるいに掛けるかのような作品を連発した2010年の怒髪天。だがそれは、来たるべきバンドの次なるビルド・アップには欠かせない一工程だったことが今回の3公演を見てよく判った。
 『歌舞伎町“NOT DEAD”ギグ』の開演直前、新宿ロフトの楽屋で増子直純(vo)が僕に言い放った言葉にすべてが集約されている。
 「何ちゅうか、カユいんだよね。男くさい歌を過剰に熱く唄い上げるバンドだけに捉えられるのがさ。“JAPANESE R&E”の現時点での最高峰とも言うべき『ド真ん中節』を出せたこともあって、余計にそう思う。人間誰しも多面性があるし、それをバンドでも楽しく自由に打ち出していきたいんだよ。求められるものをそのままやるのがバンドじゃないんだからさ」
 あらゆるタブーをブチ壊し、好きなことをやりたいように思いきりやる遂げること。否定的な声に臆することなく、その活動指針がより明確になったことが従来のイメージを覆す新作の発表なのだろうし、その強靱な意志はこの3日間のライヴからも充分窺えた。いや、陰に陽に音楽的要素を貪欲に採り入れ、狭義なカテゴライズになど到底収まりきることのない彼らにしか体現できない絢爛たる娯楽興行だったと言うべきだ。
 日本のロックの殿堂である新宿ロフトでスターリン、ARB、BOφWYのカヴァーを織り交ぜつつバンド屈指のビートとエッジが効いた骨太なナンバーを畳み掛けた『歌舞伎町“NOT DEAD”ギグ』のようなライヴ(もといギグ)は、他のロック・バンドにもできる芸当なのかもしれない。だが、九段会館で行なわれた『トーキョー“HAYARI-UTA”』ではツイストの『あんたのバラード』に始まり西城秀樹の『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』で賑々しく締め括るという古き良き流行歌路線をひた走り(アンコールではさらに沢田研二の『時の過ぎゆくままに』を披露)、東京キネマ倶楽部で行なわれた『キャバレー“SHO-WA”』では井上堯之バンドの『傷だらけの天使』のテーマや越路吹雪の『ろくでなし』、梶 芽衣子をゲスト・ヴォーカルに迎えた『唐獅子牡丹』を粋に披露するという離れ業をさらりと成し遂げるバンドが怒髪天以外にいるだろうか。客演したソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉(key/『トーキョー“HAYARI-UTA”』)、勝手にしやがれのホーン・セクション[田中 和(tp)、福島 忍(tb)、田浦 健(ts)、飯島 誓(bs)、斉藤淳一郎(p)/『キャバレー“SHO-WA”』]の力量ももちろん大きい。だが、ロック・バンド然とした気どりを一切排除した怒髪天の軽やかなスタンスだからこそ成し得た演目だったと僕は思うのだ。昭和のメロディを道連れに平成の風を肩で斬る彼らが本懐を遂げた3日間だっと言えるだろう。
 軽やかであり、実直。この3公演、実に真摯な姿勢で彼らは音楽を心ゆくまで存分に楽しんでいた。ハイライトはいくつもある。初日なら、吐き気がするほどロマンチックな演出でキメた冒頭の『ロマンチスト』、性急なナンバーの中で一際突出した『オレとオマエ』の胸に滾る名演、オリジナルに比肩する歌と演奏力で聴かせた『さらば相棒』の凄味。2日目なら、久々に披露された『夕焼け町3丁目』や『泣いてばっかのオマエに…』の歌心、ラウンジ仕様とも言うべきスウィング調の『ドンマイ・ビート』、上原子と奥野の壮絶かつ抱腹絶倒のギター vs キーボード・バトルが聴けた『ヤケっぱち数え歌』。3日目なら、『ろくでなし』の後に『ロクでナシ』が披露されるという心憎い畳み掛け、“豪華管楽器隊参戦編”の『全人類肯定曲』や『情熱のストレート』の圧倒的なボリューム感、オリジナルにはホーンが入っていないという新曲『ハッピーバースデイマン』の爆発力。挙げていけばキリがない。
 キャリア四半世紀以上、平均年齢43.3歳のいい大人4人組が所狭しと縦横無尽にステージを駆け巡り、大真面目にバカをやるのだ。3日目のアンコールで『セバ・ナ・セバーナ』を聴いた時、無条件に楽しいライヴのはずなのに、何故か熱いものが込み上げてきた。そして、彼らが音楽と向き合う根幹はどれだけ枝葉や花の色が変わろうが不変なのだと改めて痛感した。となれば、目には目を、歯には歯を、大バカには大バカを、だ。全身全霊の大はしゃぎにはこちらもありったけのから騒ぎで応えるのが大人の礼儀というものである。徹底的にバンドを楽しむ姿勢を維持したままあえて荒野をゆく怒髪天の針路を、僕はこれからも心底楽しみながら追走するつもりだ。

KABUKI-CHO“NOT DEAD”GIG
2010.10.12 (tue) at SHINJUKU LOFT

01. ロマンチスト(THE STALIN)
02. 欠けたパーツの唄
03. 夕暮れ男道
04. ××××・ジ・エンド
05. 不惑 in LIFE
06. マン・イズ・ヘヴィ
07. オレとオマエ
08. 最後のひとり
09. さらば相棒(ARB)
10. NO MUSIC NO LIFE
11. 酒燃料爆進曲
12. 実録!コントライフ
〜ENCORE〜
13. NO. NEW YORK(BOφWY)
14. NCT
15. 情熱のストレート
16. 美学

dohatsuten_loft1.jpg dohatsuten_loft2.jpg

dohatsuten_loft3.jpg dohatsuten_loft4.jpg

dohatsuten_loft5.jpg dohatsuten_loft6.jpg

 

TOKYO“HAYARI-UTA”
2010.10.13 (wed) at KUDAN KAIKAN

01. あんたのバラード(ツイスト)
02. 男は胸に…
03. はじまりのブーツ
04. 俺ときどき…
05. 82.2
06. トーキョー・ロンリー・サムライマン
07. 夕焼け町3丁目
08. 泣いてばっかのオマエに…
09. よりみち
10. ドンマイ・ビート
11. ヤケっぱち数え歌
12. 酒燃料爆進曲
〜ENCORE〜
13. Merry X'mas Mr. Lonelyman
14. オレとオマエ
15. オトナノススメ
16. YOUNG MAN (Y.M.C.A.)(西城秀樹)
〜DOUBLE ENCORE〜
17. 時の過ぎゆくままに(沢田研二)

dohatsuten_kudankaikan1.jpg dohatsuten_kudankaikan2.jpg dohatsuten_kudankaikan3.jpg dohatsuten_kudankaikan5.jpg

dohatsuten_kudankaikan4.jpg dohatsuten_kudankaikan6.jpg

dohatsuten_kudankaikan7.jpg dohatsuten_kudankaikan8.jpg

 

CABARET“SHO-WA”
2010.10.15 (fri) at TOKYO KINEMA CLUB

01. 『傷だらけの天使』のテーマ(井上堯之バンド)
02. 情熱のストレート
03. ろくでなし(越路吹雪)
04. ロクでナシ
05. ナラクデサカバ
06. アフター5ジャングル
07. 悪心13
08. ビール・オア・ダイ
09. 労働CALLING
10. ハッピー バースデイ マン
11. 全人類肯定曲
12. ドンマイ・ビート
13. オトナノススメ
〜ENCORE〜
14. 唐獅子牡丹(ゲスト・ヴォーカル:梶 芽衣子)
15. 喰うために働いて 生きるために唄え!
16. セバ・ナ・セバーナ

dohatsuten_kinemaclub1.jpg dohatsuten_kinemaclub2.jpg

dohatsuten_kinemaclub3.jpg dohatsuten_kinemaclub4.jpg

dohatsuten_kinemaclub5.jpg dohatsuten_kinemaclub6.jpg

dohatsuten_kinemaclub7.jpg dohatsuten_kinemaclub8.jpg

Live Info.


このアーティストの関連記事

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻