2018年4月9日、日本中に衝撃を与えたサッカー日本代表監督・ハリルホジッチの当然の解任劇。ロシアW杯を2ヶ月後に控えた時期に起きたこの事件は、サッカー協会や選手への批判、そして様々な憶測を呼んだ。
果たしてハリルホジッチの解任は正解だったのか? そのことについて徹底的に討論するイベントが、6月12日(火)ロフトプラスワンウエストにて開催決定!(しかもイベント後には、出演者たちと一緒に日本VSパラグアイ戦を観るライブビューイングも!)
今月号のRooftopではイベントに先駆け、出演者である元Jリーガーの岡山一成とサッカーライターの雨堤俊祐、ロフトプラスワンウエストでサッカーイベントを主催するケチャップ河合による座談会の模様を掲載。ハリルの解任劇、大会のキーマン、そして戦績予想まで、ざっくばらんに語ってもらった。[interview:松本尚紀/text:平松克規(Loft PlusOne West)]
3人はどう見た? ハリルの解任劇
河合:岡山さんは今回のハリルホジッチ監督の解任劇を見て、どう思いました?
岡山:テレビとかを見てると、マスコミが会長のコメントや選手の発言を都合よく切り取ってる感じがするね。それで選手が悪者みたいになってる。「試合に出たい!」「代表になりたい!」っていうのは、選手の本能じゃないですか? だから選手に罪はないでしょ。選手の立場から言わせてもらうと、日本サッカー協会は、もうちょっと選手を守って欲しかったね。
河合:岡山さんは今までいくつものクラブチームを渡り歩いてきたわけじゃないですか? これまでに、選手が何か言って監督が変わるようなことってあったんですか?
岡山:ありますね。やっぱり。
河合:あるんや。
岡山:それは何でかって言ったら、選手は絶対的に自分を使ってくれる監督が好きなんですよ。で、「自分を使ってくれる!」と思ってる11人はチームに確実にいるわけ。その11人と何人かが、監督と強固な信頼関係を築いてたら、他がワーッと言っても、声にならない。出られないサブ組の誰かひとりふたりが揉めたって、絶対に監督が勝つしね。でも主力が半分以上、「あの監督アカンな」って手を組みだしたら、選手と監督のパワーバランスは変わってくるよね。
河合:おふたりは、今回の解任劇を見て、心情的に良い・悪いのどっちに触れてますか?
雨堤:ボクは悪いですね。周りのサッカー好きにも、「日本代表を応援したい気持ちと、こんな風になってしまった代表を純粋に応援できない!」って気持ちが、複雑に入り乱れてる人が結構います。
岡山:オレも心情的には悪いです。でも、それは雨堤くんとはまた違う理由なんですよ。オレ……、そもそもハリルのサッカーがあんまり好きじゃなかったんですよね。絶対に日本と合わないと思ってたし。
雨堤:合わないのは、間違いないですね。
岡山:ハリルは選手を駒のように扱ってた。それはある意味正しいんやけど、今、調子の良い選手をその時その時で起用するってやり方は、チームとしての一体感がなくなって、バラバラになってしまうんよね。
雨堤:ハリルさんのサッカーは、「一体感を持ってやろうぜ」っていう今の日本の家族主義とは違いますよね。あの人、「オマエとオレの仲が悪かろうが、選手同士がどんだけ仲悪かろうが、ピッチに立ったら仕事をちゃんとせえ」ってスタンスだと思うので。
河合:ジーコさんやザッケローニさんは、家族主義でしたよね。
岡山:そう。でもそうなると、今度は選手が固定されて、新しい選手が入っていけない。だから、どうやってもネガティブな意見は出るんですよね。オレも何やかんや言いながら、ハリルの応援はずっとしてたから。でもここで解任されると、これまでやってきたことの総括ができない。それが気持ち悪いんですよ。内心、予選よりも本戦の方がハリルは活きてたかもしれへんって、ちょっと思ってるしね。
河合:ハリルさんは、最後まで戦法を隠すタイプですからね。
雨堤:あの人は軍師なんですよ。引き出しがたくさんあって、敵チームを徹底的に調べて、相手ごとに対策を立てる。だから「ここ!」って決めた試合は、必ず勝ってきたじゃないですか? それ以外はテストなんですよ。韓国戦は日韓戦やから、協会からしたら大事やけど、ハリルさんからしたらテスト。そこの温度差の違いを、ハリルさんも協会も詰める努力をすべきだった。話を聞く限り、どちらもそれをやりきれていなかったみたいです。それは残念ですよね。
大会のキーマンは誰?
河合:まぁ、変わってしまったものは仕方ないですよね。監督が変わると、チームにどんな影響が出るんですか?
雨堤:単純に、やるサッカーと使われる選手が変わるっていうのが多いですね。今回は理由が理由だけに、ハリルさんのやってきたサッカーを変えざるを得ないでしょ。でも、これで西野さんがハリルみたいなサッカーをしたら、それはそれで大したもんですけどね。
河合:ありえますけどね、西野さんなら(笑)。
雨堤:まぁ、いろんな報道を見る限り、ハリルさんのもとでは冷遇されてたり、代表入りの怪しかった選手が、代表に入る流れになっているので、それはないと思いますけど(笑)。
河合:おふたりから見て、監督としての西野さんの評価はどうですか?
岡山:西野さんの代名詞って、一般的にはアトランタ五輪でのブラジル戦でしょうけど、個人的に良いと思ってるのは、2008年のFIFAクラブワールドカップでのガンバ大阪とマンチェスターユナイテッドの試合なんですよ。「こんなに点を獲ったり、獲られたりをする殴り合いをするんや!」っていうのが衝撃的やった。自分が奈良クラブでプレイしてたから分かるんやけど、格下が格上に勝つ方法って「11人で守って、チャンスを伺う」のひとつしかないんよ。
河合:俗にいう、「引きこもりサッカー」。アトランタのブラジル戦は、こっちの戦法でしたよね。
雨堤:だから代表とクラブチームで、戦法を使い分けられる人ですよね。そういう監督としての手腕はあるけど、現場を離れて結構、久しい。それにガンバ以降は、あんまり良い成績を出せていない。そこの不安要素はありますよね。せめて、あと5年早ければ……。みんな思ってることやと思うんですけど。
河合:大会のキーマンは誰になると思います?
雨堤:僕は本田ですね。ハリルの時は、本田は単なる一兵卒やった。でも西野さんが監督になったので、選手がピッチの中・外含めたマネジメントもやらないといけなくなった。その筆頭が本田ですよ。パーソナリティがあれなんで、賛否はあるけど、こうなった以上はアイツがやるしかない。ちゃんとやらな、いろんな意味でヤバいですし。
岡山:本田と香川は、選手を超えた意味合いを良くも悪くも持っちゃったよね。でもハリルやったら、このふたりは代表から外れてる可能性が高かった。それは世間も分かってるやろうから、彼らをまた違った視点で見て欲しいよね。
雨堤:あとサッカーとしてのキーマンは、(吉田)麻也と槙野のディフェンス陣かな。グループリーグの対戦相手の前線には、世界一線級のフォワードがいるんで、彼らがどれだけ抑えられるのか。あと個人的には、永井謙佑。スピードがあるのは、それだけで武器になるので。
岡山:ディフェンス陣だと、長谷部もクローズアップされるやろうね。彼も今回の騒動の責任を背負いこんだから。
河合:なるほど。この座談会、まだ代表発表前の収録じゃないですか? どうします? 結局、本田も香川も長谷部もおらへんかったら?
岡山:それは……ある意味スカっとするよね。
雨堤:「西野さんやったな!」って。
ズバリ! 日本代表の戦績は!?
河合:それでは率直にお聞きします。本戦で、日本代表はどんな成績だと思います?
岡山:オレの希望は、1勝2分。1勝1敗1分でも良い。とにかく1勝と1分をして欲しい。
雨堤:ボクも希望として、1勝はして欲しい。ただ現実的に考えて、日本代表のレベルって本戦だと下の方なんですよ。だから1勝もできんと大会を去る可能性は十分にある。
岡山:もう3分でも良い。こんなゴタゴタがあってもそれができたんやったら、オレは「良かったな」って思えるもん。とにかく負けて欲しくない。
雨堤:ボク的には、ほんまに勝負に出て負けるんやったら、それはそれで良いんですけどね。
河合:勝負するところ見たいですけどね。
岡山:最後の1試合まで勝負に行かんといて欲しい。
河合:引き分けで粘って、最後の1試合に賭けると。
岡山:だから最初の1戦目は負けんとって欲しい。負けたら終わった感が出ちゃうから。
河合:初戦は相手も様子見で来るやろうから、そこを利用して頑張って欲しいですね。6月12日(火)に、ボクらのワールドカップに関するイベントがあるんで、答え合わせがてら来て欲しいですね。この座談会の記事を持ってこられて、「全然違うやないか!」って言われる可能性ありますけど(笑)。