およそ一年半前に二度目となる日比谷野外音楽堂での特別公演を大盛況のうちに終え、活動第二期の有終の美を飾ったザ・マックショウ。その第三期始動の火蓋がついに切って落とされた。通算14作目となるスタジオ作品『GET DOWN THE MACKSHOW』は、粗野で強烈なリズム&ビートの強度と陶酔必至の甘美なメロディがさらに増した純国産ロックンロールの最高峰が軽やかに記録更新を果たした証左である。政権の意向を官僚やマスディアが忖度したり、音楽と車とバイクの愛好者が集うピースフルなイベントを暴走族の集まる不適切な催しとみなした警察機関が圧力をかけて中止に追い込んだり、誰も責任を負わないクレイジーすぎて笑っちゃう世の中。その網をかいくぐるように、マックショウの陽気なトゥイスティン・ビートはしなやかに浮遊し続けて僕らに活力を与えてくれる。月が落っこちたって止められない彼らの歩みこそ絶滅危惧種のロックンロールの灯を絶やさぬ格闘の歴史であり、同時代でそのドキュメントを享受できる僕らはつくづく果報者だと思うのだ。(interview:椎名宗之)
ロックンロールとファンキーな感じはイコール
──いつもながらの話ではありますが、今回のアルバムも発売に間に合って本当に良かったというのが率直な感想でして(笑)。一昨日マスタリングを済ませて、レコーディングの全工程をどうにかこうにか終えられたそうで。
TOMMY MACK(b, vo):今日は何日だよ!? って話だよね(笑)。
──3月22日、発売の20日前ですね(笑)。
KOZZY MACK(vo, g):しかも昨日、なぜか「ハイヒールとスニーカー」のテイク違いを入れちゃったのに気づいて、慌てて差し替えてもらったんだよ。だから本当の意味で全部の作業が終わったのは昨日(笑)。その前は、作業の終盤で全部モノラルだったことに気づいてね。もうこのままでいいんじゃない? とも思ったんだけど、ジャケットに「STEREO」って書いてあるからステレオに変換したんだよ。それで時間を食っちゃって。
── 一時は発売が危ぶまれるほど作業が難航したそうですが、一番の理由は何だったのでしょう?
KOZZY:別にのろのろやってたわけじゃないんだけど…。
BIKE BOY(ds, vo):きびきびとやってたはずなんですけどね。
TOMMY:ちゃんとやってたよね?
──いつもちゃんとやってるとは思いますけど(笑)。
KOZZY:年々エンジンがかかるのが遅くなっててさ。いつもいろんなアイディアが浮かぶものの、それを実行に移すまでの時間がちょっとずつ長くなってきたのはあるかな。
──最初のほうに録った曲は3日後くらいにノリが出たところで録り直すことが多いと以前伺いましたが。
KOZZY:それは今回もやった。最初はやっぱりノリが掴めないからね。
──前作『今夜はショウダウン』は「マックショウの第三章に向けた作品でもある」と話していましたが、今作から第三章に突入したという位置づけなんですか。
KOZZY:今回のアルバムが第三章の一枚目ということになるね。ここから心機一転というわけでは全然ないけど、これがいきなり第三章のベストっていうか。最初に制作に入ろうとしたときはいまのマックショウのごく一部、たとえばシンプルなロックンロールだけをやればいいんじゃないかと思ってたんだよ。ところがいざやり始めるといろんなタイプの曲ができてくる。エンジンがかかるのが遅いわりにね(笑)。
──今回の『GET DOWN THE MACKSHOW』はどんなことをテーマに据えたんですか。
KOZZY:テーマらしいテーマは特になかったけど、「GET DOWN」というキーワードは前からあった。1曲目の「GET DOWN THE MACKSHOW」というテーマ曲からスタートさせる構想は2年くらい前からあって、そこから先が2年くらい進まなかったね。
──「GET DOWN」=「降りる」「着地する」という意味ですよね。
KOZZY:「ダンスをする」「踊る」って意味もあるし、スラングでは他にもいろんな意味があるんだよね。
──「GET DOWN THE MACKSHOW」はちょっとPファンクっぽいファンキーな要素もあって、マックショウとしては新鮮な印象を受けましたが。
KOZZY:70年代だったら新しかったかもしれないけど、まぁいつも通りのキャロルだよ(笑)。僕のなかではロックンロールとファンキーな感じはイコールで結ばれててね。キャロルが活動していた頃はロックとファンキーな音楽が両方あった時代で、いまやそれを覚えてる人は少ないかもしれない。僕は子どもの頃にアフロヘアの兄貴がコタツに入ってキャロルを聴きながらベースを弾いてたのを見てるから(笑)。「GET DOWN」というキーワードが浮かんだときにまさにその光景を思い出してさ。今回のアルバムのファンキーで踊れるオープニングは僕のなかではめちゃくちゃロックンロールで、その答えとしてキャロルがあるんだけど、普通の人にはそういう感覚がないだろうから、おせっかいにもここでご紹介しておこうかなと(笑)。
──『TWISTIN' CARNIVAL』のテーマだった踊れる曲を主体につくる流れがいまも続いている感じですか。
KOZZY:そういうことだね。『TWISTIN' CARNIVAL』も僕のなかではすごくファンキーでいいアルバムなんだよ。
TOMMY:1曲目の頭はトゥットゥットゥットゥッ…とゆっくり入るじゃない? あんなの何十年も弾いてなかったなと思って。
KOZZY:デンデケフェイドインね。ベースもドラムもゼロボリュームから徐々に音を上げていくっていう。むかしはけっこうあったけどね。あれも人力で、フェーダーは何も動かしてないんだよ。