Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー児島気奈(お笑い制作会社K-PRO代表)(Rooftop2018年4月号)

東京のお笑いシーンを劇場から支える“影の功労者”
幾多の芸人から「努力がすごい」と評される児島気奈・K-PROとは

2018.04.01

 ロフトでも今や当たり前のように開催されているお笑いイベント。そんなお笑いイベントの中でも特に若手芸人のライブを中心に、東京のインディーズお笑いシーンを支えてきたのが、K-PRO代表の児島気奈氏である。現在では、都内で活動する若手芸人ほぼ全てが出演するライブを月に40~50本開催。『M-1』や『キングオブコント』など、決勝進出者のほとんどはK-PROライブ出演経験ありということで業界内外から注目されている氏に、筆者が聞きたかったことをぶつけてみた。【interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya)】

多いときで月に50本以上

――児島さんとはロフトプラスワン時代に、「FKD48」(アルコ&ピース、かもめんたるらが参加している実力派芸人ユニット。FKDとは“ふきだまり”の略称)のイベントで初めてご一緒させて頂いて、いろいろ発見があったんですね。K-PROさんって例えばホームページ (http://kpro-web.com/) を見ても、1つ1つのライブに対して説明文があって、お客さん側にもどのライブを見に行ったらいいか選びやすい形にしてますよね。お笑いライブに対して“敷居を下げる作業”を児島さんがわりと意識的にやっていらっしゃるのかなと。

児島:そうですね、私がお笑いライブの制作を始めた19年前は、ライブ自体が少なくて、各プロダクションさんがやっている事務所ライブとか、作家さんがやっている勉強会ライブとか、あと渡辺リーダー(正行さん)がやっている「ラ・ママ新人コント大会」とかはあったんですけど、それに出るためのライブがなかったんですね。上のライブに出るための若手ライブをドンドン作っていかなきゃいけないと思って始めたのが、K-PROの最初だったんですけど。で、始めていく内に、その若手ライブに出るための若手ライブが必要になってきた。さらに、その中で仲良くなった芸人さんたちで内々のライブをやりたいとか、若手さん側から“こういうライブがやりたい”という声が結構上がってきて、ライブが増えてきた感じなんですね。その中でお客様の年齢層も分かれてきたので、世代毎のライブが必要になってきたり、さらにネタだけのライブとか、バトルのライブとか、ゲームだけのライブとかいろいろ増えてきたので、お客さんにも分かりやすく提示しています。

――なるほど、ライブにも出れない芸人さんがいたんですか。

児島:オーディションを勝ち抜かなければ舞台に立てなかったんですよ。なので、オーディションで勝ち抜かなくても出れるライブをドンドン増やしていかないと、とは思いましたね、最初の内は。

――そうですよね、お客さんの前でネタを披露してこそ、初めて磨かれるわけですから。

児島:ウチでやっている一番若手のライブは、チケットの値段を800円にして“すべってもいいじゃないか”みたいな、運営側からしたら強気の姿勢で、スベっている人も見れる、だって新人だもん、というのを堂々と舞台でやって、それでもチケット代を払って見に来たいというお客様がいらっしゃれば“お願いします”と(笑)。そういう感じで、ちょっとハードルを下げて、逆に上の世代であれば確実におもしろいものが見れる、その成長過程も楽しんでもらえるようにライブを作っている感じですね。

――今すごい本数のライブをやってますよね。

児島:そうですね、多い時で月に55本とか(笑)。

――単純に大変じゃないですか? 1ヶ月って30日しかないですよね(笑)。

児島:いや、まだまだやりたいと言ってくれる芸人さんが多いので、もっともっと増やしていきたいですね(キッパリと)。

 

スタッフに敷いているルールとは

――あとK-PROさんのライブは、構成がしっかりしてますよね。ロフト系のトークライブって、基本ゆるいんですよ(笑)。元々ガレッジセールさんが、ウチでお酒を飲みながらトークできる所をおもしろがってくれて、そこに出てた当時のカリカさんとか犬の心さんとか、そういう方たちに広がっていって……。なので、構成もあえてカッチリ決めてないイベントが多いんですけど、K-PROさんはトークライブでも手を抜かないですよね。

児島:芸人さんがその時のきまぐれでしゃべるおもしろい話もあるので、そういうライブをやりたい気持ちもあるんですけど、FKDに関しては14組が参加しているので、それぞれの見せ場があるように上手いこと構成して、お客さんを飽きさせない、というのと、せっかく14組が集まっているので“こんなことができる”というアピールの場にしたいんですね。なので、ゲームコーナーとか割と企画がしっかりしたものをやってますけど、深夜のトークライブってどうしても眠くなるじゃないですか、でもおもしろいライブは全然眠気を飛ばして見れるなと(笑)。それはこちらも発見でしたね。

――あと、スタッフさんに対してもいろいろルールを敷いてますよね。茶髪禁止とか。

児島:そうですね、最初始めた時は、やっぱり私自身も女が1人でお笑いライブやるって“何が目的なんだ”っていう不信感が、周りからの目ですごくあって、お笑いライブでこういうことをしていきたいというのをちゃんと伝えられるようになって理解されるまでに相当時間が掛かったので、しっかりした部分を見せるために茶髪はダメとか、芸人さんとの親しい関わり合いはダメとか、ちゃんと一線を置くように、ということは指導はしているんですけど、それをやりすぎたせいで、スタッフが割と地味目な子しか集まらなくなっているというか……。

――わかります、どの辺までルールで縛るかですよね。

児島:ほんとに無欲というか、芸人さんに対してもイヤらしい下心はありません、ピアスも派手なアクセサリーもマネキュアも塗りません、派手な服は着ませんとか、何も欲のない純粋な子が集まりすぎて、逆に芸人さんからK-PROって最新のブームに追いついているスタッフがいないから、それは良くないんじゃないかと言われちゃって……。なので、最近はわりと間口を広くしているつもりなんですけど、それでも金髪にしてるスタッフはいないですね。でもやっぱり、お客さんに楽しんでもらうために、不快にさせないような行動を、みたいな所はすごく気にしています。

 

今の悩みとは

――あと児島さんって、わりと芸人さんに対して思っていることをズバリ言うじゃないですか。前に児島さん司会でK-PROの9周年イベント(2013.11.1 K-PRO児島気奈トークライブ『9~来年K-PRO十周年の前に振り返ります!~』)をやってもらった時も、三四郎・小宮さんに対して「私とは合わない」と言ってみたり(笑)。あとで気まずくなったりしないですか?

児島:芸人さんとの関係をよくしていくために、逆に思ったことは素直に言うし、向こうからも言ってくれっていう関係性を大事にしていて、例えばネタで評価されている芸人さんがライブでフリートークをやりたくない、変なイメージがつくから、でもやった方がいいよ、ネタがおもしろいことはわかっているんだから次はフリートークで、なんならMCで他の若手と絡んだ方がいいよ、とか、そういうことを言い合える関係を変えたくない、1組1組とちゃんと話し合いをしてきたのがK-PROらしさだと思うんですよね。

――すごいですね、そこまでできる主催者ってなかなかいないですよ。

児島:でも最近の若手芸人さんは、“K-PROが言ったことは何でもしますよ”が先になってしまっていて、K-PROが言っていることは正しい、それに従わないと今後ライブに出れないんじゃないかと思われているみたいで、それが今、悩み所ですね……。なので、若手芸人さんの心をほどく作業みたいなものが、わりと大きくなっています。

――良くも悪くもみんなイイ子なんですね。

児島:そう、素直なんです。そこを自分たちもコンプレックスに思っていて、舞台でも一皮むけないというか……。やっぱりK-PROが長い分、私との年齢差もありますし、私は体でぶつかっていっても向こうがヒョイと逃げるということ結構多くて。まぁなんとかしないとなとは思っていますけどね。

――児島さんはマジメだから、思い通りに行かないとイヤになったりしないですか?

児島:んー、イヤになることは、ありますね(笑)。やってて楽しいなとか、今すごく前向きに新しいものに挑戦できているなーという波はあるんですけど、そういう時とは逆で、全然おもしろくないし、思い通りにいかないし、お客さんも減ってきた時に不安になることもあります。でもそういう時に浮かぶのは芸人さんの顔だったり、芸人さんのためにもここで挫けている場合じゃないと思って、自分を奮起させることはありますね。やっぱりK-PROはK-PROであり続けなきゃ、みたいな覚悟して始めた部分もあるので、そこで折れちゃダメだなと思います。おもしろいものを作りたいし、お客さんに見せたいし、芸人さんの方がもっとネタとかオーディションとか、心くじける場面も絶対にあるから、芸人さんに負けてちゃダメだなと思いますね。芸人さんの方がもっと大変なんだろうなと思います。

――なるほど、舞台に出る人たちはリスクを負ってやってますもんね。それに比べたら、ですね。

児島:芸人さんも表には見せないですけど、いいネタができないとか、お客さんが付かないとか、色んな苦労があると思うので、それと同じような苦労を味わえているのが有難いというか、同じように苦労して成長できてるんだと思っているので、私もまだまだ勉強中だと思って、くじけずがんばろうと思っています。

 

LIVE INFOライブ情報

4/14(土)LOFT9 Shibuya

K-PROの「オールナイト9」

K-PROによる月1オールナイトトークライブが始動!

第一弾は「元学生芸人」同窓会!

【出演】さすらいラビー、ストレッチーズ、XXCLUB、サツマカワRPG、アメリカンコミックス飯島、サメゾンビ、バーニーズ、岡田桜井、フランスピアノ 他

OPEN 24:00 / START 24:30

前売¥1,000 / 当日¥1,200(税込・要1オーダー500円以上)

予約は「TIGET!」特設ページにて受付中

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻