Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー平野悠(ロフト席亭)×東健太郎(ロックカフェロフト店長)×加藤梅造(ロフトプロジェクト代表取締役社長)『ROCK CAFE LOFT is your room』オープン記念鼎談(Rooftop2018年3月号)

ロフト創始者が吠える! 「ロックをタダで聴くいまの時代に挑戦状を叩きつけたい!」
ロフトプロジェクトが新たに挑む「ロックを聴きながら語り合う」音楽空間がついに今月末、歌舞伎町にオープン!

2018.03.01

中二階の視聴スペースはロック道場!?

──東さんはどういう店にしていきたいんですか。

東:悠さんは最初から視聴室をつくりたがっていたけど、視聴室のある居酒屋ってどうなんだろう? と、初めはあまりピンときてなかったんですよ。自分としてはロックの雰囲気があって、美味しいお酒や食べ物を用意した居酒屋にしたいと思ってたんです。それを、船旅を終えた悠さんにちゃぶ台をひっくり返すように覆されたんですけど(笑)。でも、そもそも悠さんの思いつきから始まった店だし、悠さんのやりたい意向をまずは汲もうと。そこから自分なりのオリジナリティを出していけたらいいなと思ってます。店づくりにあたって悠さんが全然興味のない部分、たとえばフードとかにはまるで関心がないので、僕はそういうところに力を入れたいですね。

平野:俺はフードにはむかしから興味がないんだよ。もろきゅうとあたりめがあればいいと思ってるから(笑)。

東:僕はそうは思わないので、悠さんがそこに興味がないのであればこちらでこだわらせてくださいと話してるんです。いざオープンしてみたら立ち行かないことも多々出てくると思うし、そこはその都度改善していって、お客さんに楽しんでもらえる完成度の高い店にしたいですね。それとここ1軒で終わるのではなく、もっと先を見据えて2軒目、3軒目とどんどん広げていけるような土台や基礎をこの店で固めなくちゃいけないと思ってます。

平野:話を遮って悪いんだけど、今度のロックカフェには中二階に視聴室があって、そこをロック道場と命名したんだよ。

加藤:エッ!? いつの間にそんな名前が付いたんですか?

東:いま初めて聞きましたけど(笑)。

平野:話視聴室じゃなくてロック道場。そこで椎名とかがロックの講釈を垂れるんだよ。

──ああ、僕も強制参加するんですね(笑)。

平野:むかし吉祥寺にジャズ道場メグという店があったんだよ。俺たちはその店に行くときはすごい気合いを入れるわけ。別に何か言われるわけじゃないんだけど、ジャズ道場なんて言われると姿勢を正して行かなきゃまずいよなって気になった。ロック道場はそこから来てるんだよ。まぁそれはいいんだけど、ロック道場と一階の音のレベルは全然違う。一階はロックを聴きながら喋ることもできるけど、中二階はお喋りができないくらいの大音量でロックを聴くスタイルの店なんだ。キャパは一階が30人、中二階が15人といったところかな。本当はあと10坪あるといいんだけどね。できれば喫煙室もほしいし、トイレも2つほしいし、従業員の控室もほしいんだけど、その狭さが逆にいいのかもしれない。密なコミュニケーションができるからね。

──ところで、現在募集しているレコードははっぴいえんどやシュガー・ベイブ、森田童子やムーンライダーズといった歴代のロフトに出演したアーティストばかりですよね。

平野:それは全部、梅造さんの発想。俺にはそんな発想はなかった。

加藤:悠さんはその部分にあまり興味がないんだけど、ロックカフェロフトのテーマはロフトの歴史の継承といまの時代への共感なんです。悠さんが書いた『ライブハウス「ロフト」青春記』(2012年、講談社刊)を読むと、錚々たる面子が西荻窪、荻窪、下北沢、そして新宿のロフトに出演していたのを改めて実感するんですよ。当時のレコードを聴くのもいいんだけど、若い人もそういう日本のフォークやロックの歴史を知るべきだと思うんです。ライブハウスにお客さんが全然入らなかった時代をね。

平野:ライブハウスのチャージっていますごく高いじゃない? それとは別に600円払って気の抜けたコーラを飲まされてさ(笑)。もっと気軽に、安い値段でロックをゆっくりと聴ける空間をつくりたいと俺はずっと思ってたんだよ。まぁ、あまりチャージ設定を低くすると家賃が払えないとかいろんな問題が出てきて、いずれはロフトプラスワンみたいにチャージを上げていくしかなくなるかもしれないけど、まずは安いチャージでやっていきたい。そうじゃなきゃ若い人が来てくれないと思うからさ。牧村憲一さんやベルウッドの三浦光紀さんといったこの世界の功績者に日本のフォークやロックの歴史を語ってほしいし、それを若い人たちに伝えたいんだよ。リズム&ブルースからヒップホップまでの歴史をジャンルごとに語ってもらうのもいい。そういうのを一冊の本にしたいよね。

 

コミュニケーションがロフトの基本

──となると、やはりターゲット層は若い人中心なんですか。

平野:老若男女に来てもらえたら嬉しいけどね。俺みたいに70歳を過ぎたジジイだってロックを聴きたくなる瞬間があるんだよ。ロックっていいねって純粋に思える瞬間がさ。でもレコードを買って家でヘッドフォンをしながら聴くのはなんか寂しい。みんなでわいわい話をしながら聴いてみたい。

──いい音楽は人を饒舌にさせますしね。

平野:「このギターすごいね!」とか「このベースはどう弾いてるの?」とか、誰かと話をしたくなるものだからね。

加藤:ロフトの歴史から言えば、悠さんはそういうことを烏山ロフトのころからやってたんですよね。

平野:そうなんだよ。坂本龍一さんは烏山ロフトの常連だったし、夜中まで音楽論争を盛んにやってたからね。新宿ロフトだってそうだよ。ライブが終わってからいろんなミュージシャンや業界の連中が集まって、音楽の話を延々語り合ってたんだから。

──大瀧詠一さんが西荻窪ロフトで『GO! GO! NIAGARA DJパーティー』を毎月開催したり、初期の新宿ロフトでもレコード会社の人が『ニューディスク・コンサート〜今月の注目盤を社員が語る〜』というイベントをやっていたり、ロックカフェロフトでやろうとしていることの雛型は70年代からあったんですよね。

加藤:そうそう。ロフトはそういうイベントを先駆者としてやってきたんですよ。ラジオ文化に近いところもあったと思うんだけど、それもひとつの文化として継承していきたいんです。

平野:ネットラジオで中継するのも面白いだろうね。いろんな広がりができるだろうし、すごく可能性のある画期的な店だと俺は思ってるんだよ。まぁどうなるかね。店員がどんなレコードをかけるのかも店の質が問われると思うよ。むかしのジャズ喫茶には「ここのマスターは次にどんな曲をかけるんだろう?」っていう緊張感があって、そこは勝負なわけ。俺も烏山ロフトでレコードをかけてたけど、客がレコード・ジャケットを見に来たら俺の勝ち。その曲に興味を持てば、参加ミュージシャンは誰で、プロデューサーは誰みたいなところが気になるからね。だから今度のロック喫茶でも、レコードをかけるのは店員と客の勝負なんだ。「あの店のセレクトはひどいよ」なんて客に言われたら、すぐに店長を取り替えるつもりだよ(笑)。だけどそれくらいの緊張感はあって然るべきだと思う。

──それにしても平野さんはブレませんよね。『ROCK CAFE LOFT is your room』の「is your room」は烏山ロフトのチラシにも使われていたキャッチじゃないですか。47年間まったくのブレなし(笑)。

平野:いま「is your room」を使うのは梅造さんのセンスだよ。

──みんなでわいわいやりたいというのもブレてないと思うんですよ。

平野:そうかな? 烏山ロフトは本当に客が入らなくて、いつ潰れてもおかしくなかったんだよ。でもね、お客さんに一声かけてちゃんと話せば、そのお客さんは必ずまた店に来てくれる。こっちが誠心誠意お客さんと向き合って音楽の話をしっかりすればお客さんは増えるんだよ。今度の店だって、俺が店長なら絶対に潰さない自信がある。とにかくお客さんに話しかけて、フェイス・トゥ・フェイスで向き合う。それに尽きるよ。

──そういう接客の基本を含めて原点回帰と言えそうですね。

加藤:うん、そうだと思う。

平野:俺はね、今度のロックカフェが全国に広がるのが夢なんだよ。俺が45年前に西荻窪ロフトをつくって、いまやライブハウスは全国に2,000軒あるという。それと23年前にロフトプラスワンをつくって、トークライブハウスは東京だけで30軒あるらしい。そこで今度のロックカフェだよ。音楽好きなんて世の中にごろごろいるわけだから、こういう店は一気に広がると俺は思う。レコードを1,000枚、2,000枚持ってる人なんていくらでもいるからね。だからみんなやればいいんだ。

──全国にいくつもあるライブハウスやトークライブハウスにはないロフトの特性とはどんなところだと思いますか。

平野:内装に関しては既製品を使わないこと、手づくりにこだわることなんだけど、店の姿勢で言えばやっぱりコミュニケーションだろうね。店と客と演者のコミュニケーションをどうつくりあげていくか、それが基本だと思う。だってコミュニケーションがないなんて最悪じゃない? ネット右翼を見てみろよ。普段からしっかりとコミュニケーションをしていればあんなバカげた差別発言はしないはずだよ。いまの時代はコミュニケーションがなさすぎるし、ネットでつながってるのがコミュニケーションだとみんな勘違いしてるんだ。ネットで自分に都合のいい情報ばかりを受け取って悦に入ってるだけだよ。反対意見があったって別にいいし、意見の違いがあるからこそ面白いコミュニケーションが生まれるんだ。音楽だってそう。それを面白いと感じる人、つまらないと感じる人、いろんな意見があっていいんだよ。

──そういえば、平野さんが新しく店をオープンするときに必ず言う「若いOLに来てもらえる店にしたい」という方針は今回も変わらないんですか。

平野:今回もそうだよ。今度は女性誌に載るような店にしたいね。

東:ロック道場じゃ若いOLは来ないし、女性誌にも載りませんよ(笑)。

 

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店舗詳細

ROCK CAFE LOFT is your room

〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1-28-5

【営業時間(予定)】

平日(日曜含む):11:30〜24:00

金、土曜、祝前日:11:30〜4:00

■Twitter

https://twitter.com/rockcafeloft

■オフィシャルサイト

http://www.loft-prj.co.jp/rockcafe/

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