トップ > インタビュー > 平野悠(ロフト席亭)×東健太郎(ロックカフェロフト店長)×加藤梅造(ロフトプロジェクト代表取締役社長)『ROCK CAFE LOFT is your room』オープン記念鼎談(Rooftop2018年3月号)

平野悠(ロフト席亭)×東健太郎(ロックカフェロフト店長)×加藤梅造(ロフトプロジェクト代表取締役社長)『ROCK CAFE LOFT is your room』オープン記念鼎談(Rooftop2018年3月号)

烏山ロフトと初期ロフトプラスワンへの原点回帰

──ずいぶんと威勢がいいですね(笑)。

平野:ロックとは一人で部屋に閉じこもってヘッドフォンで聴くんじゃなくて、全身で受け止めて聴くものなんだ。だからレコードだって身体で聴けと。そうやって俺は音楽をタダで聴いてる若い連中に挑戦状を叩きつけたいんだよ。

──なるほど。具体的にどんな営業形態をしていくのですか。

平野:基本的に昼はロック喫茶。ちょうどいまレコードのストックを増やしているところでどれだけ集まるかわからないけど、お客さんからリクエストを募る。リクエストを募るロック喫茶っていまやほとんどないと思うんだよ。そして夜はロック居酒屋。週末には音楽好きが集まって、この音楽について語りたいんだという人にレコードをかけながら語ってもらう。ミュージシャンでも音楽評論家でもレコード会社の人でも誰でもいいけど、プロのDJ(ナビゲーター)じゃないのがいいんだ。3月20日のオープニングにはPANTAに出てもらうけど、彼もプロのDJじゃないでしょ? PANTAが頭脳警察からフランス・ギャルまでいろんなレコードをかけながら喋るわけだ。「『マラッカ』のレコーディングでは実はこんなことがあったんだよ」みたいにさ。そういう話を聞けば、その楽曲にもっと深く入り込めるよね。そんな店はどこにもない。世界的にもないんじゃない? レコードを聴きながらロックを語るなんてさ。誰もやってないからこそやるんだよ。

──ロフトがこれまで取り組んだことのない店ですが、勝算があるからこそオープンに踏み切ったわけですよね。

加藤:もちろん。悠さんはそう考えていないかもしれないけど、ロックカフェロフトは烏山ロフトへの原点回帰だと僕は思うんです。音楽評論家の能地祐子さんが『ロフトラジオ』に出たときに実は予言していたんですよ。「悠さんはたぶんこの先、烏山ロフトみたいな店をまたやりますよ」って。あと、ロフトプラスワンへの原点回帰でもあると思う。ビールを飲んで1,000円でおつりが来るようにしたり、居酒屋のなかで面白い席にマイクを置いてみる発想はまさに初期のロフトプラスワンですから。それはロフトから見た側面なんだけど、いまの状況から見ると別の意味づけもできる。悠さんが言うようにいまの若い人たちは無料ダウンロードが当たり前だし、CDのセールスは壊滅的状況ですよね。アメリカではもはやCDをつくってもいないし、Apple MusicやSpotifyといったストリーミング・サービスのほうが売上は大きい。だけどその一方で、アナログレコードを再評価するブームが世界的に来ているんです。若い人にもそのブームは浸透していて、盤としてほしがる人が増えている。アナログを聴かせる店も増えてきたし、アーティストもあえてレコードを出す人が多くなった。そういう時代の流れと今度の店のコンセプトが符合しているのが面白いんですよ。そこは悠さんの商売人としての嗅覚だと思うし、だから勝算もあるんじゃないですかね(笑)。

平野:あるよね。ひょっとしたらこういう店が全国に広がるんじゃないかと俺は思ってるしさ。

──東さんを店長に抜擢したのはどんな理由で?

平野:たまたまこいつが余ってたから。

東:ひどい言われようですね(笑)。

平野:まぁそれは冗談だけど、東はもともと『BANDやろうぜ』の編集をやってたし、ロックに対する心得はあるだろうと踏んだわけ。それと以前、彼は誰かと組んで居酒屋をやり始めたわけだよ。そこをクビになってスポイルされちゃったんだけど、居酒屋スタイルも理解してるからさ。だから今度の店には最適だと思ったんだよ。いつまでもロフトプラスワンのNo.2じゃしょうがないだろう、そろそろ自分の好きなように店をつくってみてごらん、っていう思いもあったね。

 

中二階の視聴スペースはロック道場!?

──東さんはどういう店にしていきたいんですか。

東:悠さんは最初から視聴室をつくりたがっていたけど、視聴室のある居酒屋ってどうなんだろう? と、初めはあまりピンときてなかったんですよ。自分としてはロックの雰囲気があって、美味しいお酒や食べ物を用意した居酒屋にしたいと思ってたんです。それを、船旅を終えた悠さんにちゃぶ台をひっくり返すように覆されたんですけど(笑)。でも、そもそも悠さんの思いつきから始まった店だし、悠さんのやりたい意向をまずは汲もうと。そこから自分なりのオリジナリティを出していけたらいいなと思ってます。店づくりにあたって悠さんが全然興味のない部分、たとえばフードとかにはまるで関心がないので、僕はそういうところに力を入れたいですね。

平野:俺はフードにはむかしから興味がないんだよ。もろきゅうとあたりめがあればいいと思ってるから(笑)。

東:僕はそうは思わないので、悠さんがそこに興味がないのであればこちらでこだわらせてくださいと話してるんです。いざオープンしてみたら立ち行かないことも多々出てくると思うし、そこはその都度改善していって、お客さんに楽しんでもらえる完成度の高い店にしたいですね。それとここ1軒で終わるのではなく、もっと先を見据えて2軒目、3軒目とどんどん広げていけるような土台や基礎をこの店で固めなくちゃいけないと思ってます。

平野:話を遮って悪いんだけど、今度のロックカフェには中二階に視聴室があって、そこをロック道場と命名したんだよ。

加藤:エッ!? いつの間にそんな名前が付いたんですか?

東:いま初めて聞きましたけど(笑)。

平野:話視聴室じゃなくてロック道場。そこで椎名とかがロックの講釈を垂れるんだよ。

──ああ、僕も強制参加するんですね(笑)。

平野:むかし吉祥寺にジャズ道場メグという店があったんだよ。俺たちはその店に行くときはすごい気合いを入れるわけ。別に何か言われるわけじゃないんだけど、ジャズ道場なんて言われると姿勢を正して行かなきゃまずいよなって気になった。ロック道場はそこから来てるんだよ。まぁそれはいいんだけど、ロック道場と一階の音のレベルは全然違う。一階はロックを聴きながら喋ることもできるけど、中二階はお喋りができないくらいの大音量でロックを聴くスタイルの店なんだ。キャパは一階が30人、中二階が15人といったところかな。本当はあと10坪あるといいんだけどね。できれば喫煙室もほしいし、トイレも2つほしいし、従業員の控室もほしいんだけど、その狭さが逆にいいのかもしれない。密なコミュニケーションができるからね。

──ところで、現在募集しているレコードははっぴいえんどやシュガー・ベイブ、森田童子やムーンライダーズといった歴代のロフトに出演したアーティストばかりですよね。

平野:それは全部、梅造さんの発想。俺にはそんな発想はなかった。

加藤:悠さんはその部分にあまり興味がないんだけど、ロックカフェロフトのテーマはロフトの歴史の継承といまの時代への共感なんです。悠さんが書いた『ライブハウス「ロフト」青春記』(2012年、講談社刊)を読むと、錚々たる面子が西荻窪、荻窪、下北沢、そして新宿のロフトに出演していたのを改めて実感するんですよ。当時のレコードを聴くのもいいんだけど、若い人もそういう日本のフォークやロックの歴史を知るべきだと思うんです。ライブハウスにお客さんが全然入らなかった時代をね。

平野:ライブハウスのチャージっていますごく高いじゃない? それとは別に600円払って気の抜けたコーラを飲まされてさ(笑)。もっと気軽に、安い値段でロックをゆっくりと聴ける空間をつくりたいと俺はずっと思ってたんだよ。まぁ、あまりチャージ設定を低くすると家賃が払えないとかいろんな問題が出てきて、いずれはロフトプラスワンみたいにチャージを上げていくしかなくなるかもしれないけど、まずは安いチャージでやっていきたい。そうじゃなきゃ若い人が来てくれないと思うからさ。牧村憲一さんやベルウッドの三浦光紀さんといったこの世界の功績者に日本のフォークやロックの歴史を語ってほしいし、それを若い人たちに伝えたいんだよ。リズム&ブルースからヒップホップまでの歴史をジャンルごとに語ってもらうのもいい。そういうのを一冊の本にしたいよね。