来たる4月10日(火)、ロフトプラスワンウエストにて、人気ラーメンチェーン『天下一品』について思う存分語らうイベント『トークライブ~「天下一品ナイト!」ファンの集い~』が開催される。
天下一品グループ全面協力の元に行われるこのイベントには、なんと『天下一品』の創業者にして、現在も代表取締役をつとめる木村 勉社長も登壇。『天下一品』のこってりラーメンに負けない濃厚な内容になること間違いなしのイベントを前に、木村社長にインタビューを敢行。
御年82歳にも関わらず、『天下一品』だけでなく、温浴施設『スパリゾート雄琴 あがりゃんせ』の経営、そして新たなる事業への野心を燃やす木村社長。その底なしのバイタリティは一体どこから来るのだろうか? [interview:平松 克規(Loft PlusOne West)]
「天下一品」創業前夜
––「天下一品ナイト!」の開催、誠にありがとうございます。今回はトークイベントへの出演ですが、これまでに天下一品について人前で喋るという機会はあったのでしょうか?
木村:大学の講演会で話したことあるけど、こういう形のイベントは初めてやね。
––そうなんですか。イベントはどんな内容になりそうですか?
広報:インタビュー形式のライブで、MCのやのぱんさんは、社長からテレビでは言えないようなことを聞き出そうとしてるみたいです。
木村:ムチャクチャ言いますよ。
––それは大学の講演会では言えないようなことも……。
木村:あるわね。
––(笑)。楽しみです。
広報:社長が創業された頃の話はもちろんですけど、社長のこれからの話もありますね。今は違う事業にも取り組まれてますから、ここからさらにどう進化していくのか、社長の新たな野望や展望を話してもらうつもりです。
––なるほど。天下一品創業後の話はイベントでたくさん聞けると思うので、今回のインタビューでは創業前のエピソードをお尋ねしたいです。会社を創業される前はどんなことをされていたんですか?
木村:もともとはサラリーマンやったんです。油絵を売っとったんですけど、絵ってなかなか売れへんよね。だから自分でいろいろと考えて売っとったね。
––どんな風に売っていたんですか?
木村:描かれた絵は、当然、明くる日に運ばなあかんわね。描きたてやから、絵の具がまだ乾いてなくて、触ったらベチャッと絵が潰れてまうんですよ。それを逆手にとって、「描きたての油絵売ってるよ」って、まるでまんじゅうみたいに売り込んどったね。そしたら、お客さんは面白半分で買ってくれるんです。
––へえー。そういう売り方をしてたのは、木村社長だけですか?
木村:そんな余計なこと言うたりしてたんは、私だけやね(笑)。
––その頃から人と違った売り方をしていこう、みたいな意識はあったんですね。
木村:意識というより、ただ「キレイでっせ。買うておくれやす」って言うだけでは、売れへんのよ。せやから、自分自身で「どうしたら売れるか?」って考えて、そういう風なことを言い出したわけ。そんな油絵を売ってるトコなんて、どこ行ってもないでしょ? せやから売れるんです。
––そうやって自分で工夫されてたんですね。
木村:せやね。油絵を売ってた頃、美容師やった家内が、独立することになったんです。それやったら、お客さん集めなアカンわな。でも私は髪を触ることはできへん。じゃあ、どうやってお客さんを集めるか。
––どうやって集めたんですか?
木村:美容室は祇園でやってたんやけど、祇園にはクラブ、バー、スナックがぎょうさんあるわな。そこで働く女性のために、3つのコースを用意したんよ。例えばA会員は「月額3,000円で毎日セットに来れる」、B会員は「月額2,000円で月に10回セットに来れる」、C会員は「パーマ当てる人はカット料金が半額になる」っていう。そしたら、お客さんがようけ来はんねや。で、A会員の人も「毎日セットに来れる」言うたかて、邪魔くさがって2日に1回、実質B会員くらいしか来うへんのよ。
––よくできてますね(笑)。
木村:毎日セットしてもらえるという安心感で会員にならはんのよね。そういうのをやって、ものスゴい流行りましたね。
「どうすればお客さんが来るのか」を考え続ける人生
––創業前からビジネスセンスがあったわけですね。今年で83歳、その年齢で代表取締役をつとめるのは、相当パワフルじゃないとできないと思います。そのバイタリティはどこからくるのでしょうか?
木村:歩くことやね。今でも、毎日ウォーキングマシンで1時間歩いてますから。ゴルフ行ったら、18ホール全部歩きますよ。ゴルフは下手やけどね(笑)。
––運動がその秘訣と。天下一品のラーメンは、今でもお食べになるんですか?
木村:少なくとも1日置きにラーメンライスを食べてるね。
––83歳でラーメンライスを食べるのは、食欲旺盛ですね。
木村:でも年かな……最近はご飯1杯は食べられんようになって、半ライスになったね。
––それでもスゴいですよ(笑)。今でもいろいろと遊ばれたり、新しい事業を始めたりと、行動的じゃないですか。昔から今のようにアクティブだったんですか?
木村:いや、天下一品を作ってから、そうなったんやな。36歳の頃に、油絵の会社が倒産して、3万7千円の持ち金で天下一品の屋台を始めたからね。もう行動的になるしかないわな。
––なるほど。天下一品の創業時と今で、変わらないことはなんでしょうか?
木村:変わらないことは、「どうしたらお客さんにもっと来てもらえるか?」って考え続けてることやね。天下一品も、あがりゃんせも、始めた時はなんの経験もなかった。だから「どうやってここを流行らせるか」。それだけをずっと考えてたね。
––ずっと純粋にそれをやってるだけだと。
木村:でも、まだ満足してへんから。やらなかんことはナンボでもある。これでええねや、ってことはあらへん。でもそれって楽しいやんか。「これでええか」と思った時点で、人間は何の進歩もないよ。やっぱ夢を持って、それを追わな。私は、テレビやラジオでいろんなことを言うんです。出来へんかったら、嘘つきになるわな。でも全部実現してる。屋台の頃から私を知ってるお客さんはみんな、「ホンマに実現さすねんねぁ……」って驚いてはりますから。
––創業時には、周りに何と言ってたんですか?
木村:「店を持ちたい」って言うてたね。
––その次は?
木村:遊べるくらいのお金が欲しいやね(笑)。人生、お金がなかったら寂しいで。世の中やっぱりお金。こんな言い方したらイヤらしいけどね。
––でも事実ですよね。
木村:私は若い時に頑張ったから、今はどんな贅沢しても無くならんお金がある。好きな時に、好きなもんを食べれるしね。でも、それで人生終わったらあかんわな。将来、社員に「社長、あんなに厳しそうやったけど、こんなもん残してくれたんや……」っていうものをつくりたい。だからこれから始める事業も、自分のお金儲けのためじゃなくて、社員のためにやるんよ。社員が何十億もかけた事業を始めるのは難しい。だから私がやる。新しいもんを作って、お客さんに来てもらって、全社員にちょっとでも給料を多く渡せるようにする。それが、私の仕事やね。
––最初の一歩が自分の仕事と。では最後に読者の方へ、何かメッセージをお願いします。
木村:余計なことかも分からんけど、やっぱりみなさん助けおうて、良い友達をようけ持って欲しいですね。悪い友達はあかんよ。良い友を持つこと、それが大事。あと若い時に頑張って欲しい。私は「定年退職してからが人生」って、みんなによう言うてるんです。あがりゃんせのお客さんの中には、定年退職してから毎日のように来てくれる人もいるんです。そういう人は、みんな若い時に頑張ってはったんです。お金があるから、毎日お風呂に入りにこれる。だから若い時に頑張って、定年退職してから好きなことをやって欲しいね。こりゃ大事なことよ。