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大坪ケムタ(Rooftop2018年3月号)

 LOFT9 Shibuyaに欠かすことのできない様々なジャンルに特化した外部ブッカーにお話を聞くインタビュー企画第三弾。今回は、外部ブッカーの中でも一番長いお付き合いとなる、大坪ケムタ氏。98年からフリーライターとして様々な雑誌メディアを中心に活動。先月には紙とwebの狭間に揺れる出版業界の現状を綴った『少年ジャンプが1000円になる日~出版不況とWeb漫画の台頭~ 』(コア新書)を刊行したばかりの氏に、これまでのイベントについて振り返ってもらった。【interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya)】

まだ知られてない部分を見せたい

――僕とケムタさんと言えば、ロフトプラスワン時代からのお付き合いですけど、ケムタさんをイベンターとして認識したのが、かつてネイキッドロフトでやった佐伯誠之助さんのイベント(2005.4.29『佐伯誠之助東京初単独ライブ~佐伯誠之助 完全なるイカセ1時間』)でして。

ケムタ:あー、あった。ネイキッドがオープンしてまだすぐの頃じゃないかなー。あの時点でネイキッドをソールドアウトさせたのが向井秀徳、戸川純、で、3人目が佐伯誠之助だったという(笑)。

――ゲストが殿方充さんというのも、シビれる人選でした(笑)。それからケムタさんとイベントをやらせてもらう流れになるんですけど、これだけライターさんが自分主催でイベントやるって、なかなかないと思うんですよね。

ケムタ:でも感覚的には、雑誌の記事を作るのと同じですよ。

――あ、そうですか?

ケムタ:この人とこの人を呼んで、こうやったら面白いでしょ? って発想は、ほぼ雑誌と同じ感覚でやっていて、それをお客さんの前でやる場合はいつものインタビューとはやり方が変わってきますけど、企画の作り方は全く一緒です。特に自分がやったアイドルがTwitterについて考えるイベント(2017.7.5「SAKA-SAMA Dr.まひるんの『アイドルのTwitterについて考えてみた』討論会!」)とか、映画『堕ちる』をアイドルと見て、その感想を言い合う会(2017.1.19 映画『堕ちる』再再アンコール上映会+アイドルが語る『堕ちる』座談会!)もそうだし。

――あの「〇〇と、〇〇を観る」シリーズは発明だと思いましたよ。歌舞伎とか落語とか、阿佐ヶ谷でやっている『大島薫とゲイストリップを見ようの会』もそうですけど、誰かを介するだけでそのジャンルの間口が広がる感じがしますよね。あとケムタさんで言うと、ネイキッドでやっているUNDERHAIRZ(2017.5.13『ラップ酷いリリック烈伝』)とか、生ハムと焼うどんと革命アイドル暴走ちゃんを掛け合わせたイベント(2016.10.3『生うどん美少女説証明会』)とか幅広くやってますけど、ケムタさんがおもしろがるポイントというかベースってどこにあると思います?

ケムタ:んー、ひとつ大きいのは“まだ知られてない”っていうのがあるんでしょうね。こんなにおもしろいのに世間が知らないっていうのが納得いかないというか……。それはライターとしてもそうで、AKBとか大手の人たちも扱うけど、その人たちがまだ見せていない、おもしろいってところを見せたいっていう気持ちがあって。

――なるほど、前にケムタさんがロフトプラスワンでやっていた『バカAV専門学校』も、AVのイベントなんですけど、AV女優さんの普段とは違う一面が見れるイベントでしたよね。

ケムタ:一回目のゲストに呼んだ南波杏さん(2008年まで活躍した元AV女優)が、ニューヨークまでX-BOXを買いに行くほどのゲーム好きと聞いて(笑)、それはヤバイと思ってゲームの話だけをしようと。

――覚えてますよ、10人同時プレイできるテトリスで南波さんとお客さんがガチで対決して(笑)。

ケムタ:そうそう、テトリスの海外版買ってきて(笑)。AV女優がエロい話をするイベントは他にもあったから、それとは別の良さを見せたい、そこは今と変わってないかもですね。

――まだ光が当たっていない部分を。

ケムタ:そう、アイドルのメインはライブだし、AV女優はAVで見せればいいわけだから、それ以外の部分をね。まぁ、それを皆が見たがっているとは限らないんだけど(笑)。

 

“アイドルの定義”とは

――LOFT9が出来てからもケムタさんにはいろいろとイベントをやってもらってますけど、印象に残っているものってありますか?

ケムタ:ここ最近で一番インパクトあったのが、戸田真琴さんのイベントに大森靖子さんがゲストで来てもらった時ですかね(2017.6.27 戸田真琴デビュー1周年記念トークライブ「Who is a MAKORIN? vol.1」)。最初は戸田さんのデビュー1周年だから何かやろうかって話から、ゲストに同じSODの女優さんを呼ぼうとか思ったんですけど、戸田さんから大森靖子さんが好きだと聞いて、大森さんはロフトにも出てるから頼めないこともないだろうと思っていたら出演オッケーしてくれて、戸田さんのために「第一回大森靖子賞」のトロフィーまで作ってきてくれて(笑)。

――直筆の手紙も書いてきてくれて。あれだけ仕込んでくる大森さんの凄さですよね。

ケムタ:大森さんも凄いし、そうさせた戸田さんも凄いなーと。

――キッチリ爪痕残していきましたね。

ケムタ:インパクト的にはあれが一番かな。あとはさっき話に出た「SAKA-SAMA Dr.まひるんの『アイドルのTwitterについて考えてみた』討論会!」。あれは個人的に凄く実験的なイベントで、Dr.まひるんってフォロワー500人ぐらいの、当時はまだそこまで有名なアイドルではないんですけど、ブログがむちゃくちゃおもしろいし本人も魅力的で。あとTwitterの使い方についてもすごく悩んでいて、それはどのアイドルも一緒で、じゃあTwitterについて考えるイベントだから出演したいアイドルもTwitterで募集してみようと。自分の中では相当ギャンブルだったんですけど、出演者もお客さんも集まって、内容もとにかくおもしろかったんですよ。

――「ファン全員にリプライは返すべきか?」とか、「自撮りはアイドルにとって必要なのか?」など、それぞれのテーマで色んな意見が出ておもしろかったですけど、そんな細かいことまで気にしないといけないアイドルって大変なんだなと思いました。

ケムタ:僕の中のアイドルの定義って時期によってコロコロ変わるんですけど、最近だと漫画家の江口寿史さんが「どういう絵を描きたいですか?」という質問に、「女の子の無敵の瞬間を捉えたい」と答えていて。それを聞いて、アイドルって女の子の無敵の瞬間が見れるものじゃないかなと。その辺の素人の女の子であればあるほど、ステージに上がった時に輝く瞬間があって。スーパーヒーローなんだけど、突然注目を浴びたことで、本人も戸惑ったり悩んだりする。昔のスパイダーマンはそんな悩まなかったけど、今悩んじゃうみたいに(笑)。そういう裏のモヤモヤっとした部分も含めて人間らしさがあると思うんですけど、それをイベントとしてやれた気がしますね。

 

これからのライター像について

――なるほど、で、ようやく本業ライターとしてのお話になりますが(笑)、ケムタさんにとって2冊の新書『少年ジャンプ゚が1000円になる日~出版不況とWeb漫画の台頭~』が発売中ですね。紙媒体が売れなくなって久しいと聞きますが、こうして数字で見るとシャレにならないことが分かります。

ケムタ:特に雑誌は悲惨ですよね。全盛期の1/3以下ですから。

――この本は、どういうキッカケから生まれたんですか?

ケムタ:これは毎日12時にweb漫画サイトの更新を心待ちにしている自分がいて。これって子供の頃に、「ジャンプ」の発売日を楽しみにしていたのと一緒で、それを家に居ながらにしてできると。で、おもしろい漫画って実はドンドン増えていて、web漫画の量も増えているから、タダで面白い漫画をいくらでも読める時代になっているんですね。でもこれだけ出版不況だと言われている、じゃあ実際どうなんだ? ってことを、この本で明らかに出来ればと思いまして。

――現在の出版界の状況と、web漫画が台頭するキッカケから現在に至るまでが詳細に書かれているんですが、サクサク読めますよね。

ケムタ:そう、エロ本出身だからね、小難しいことは書かない(笑)。

――でもこの状況だと、今まで雑誌中心で書いていたライターさんの仕事のあり方も変わってくる気がしますね。

ケムタ:最近ホント思うのが今、紙媒体の景気が悪くて、webメディアもありますけどギャラがすごく安かったりするから、今のライターは自分のメディアを作らないとダメなんですよね。自分はこれが得意です、ってこと発信していかないといけない。

――仕事を待ってるだけじゃなくて。

ケムタ:そう、だから大変な時代だけどネットならすぐ発信できますしね。そういう意味で言うとイベントって、僕の中ではメディアなんですよ、自分で雑誌を出そうとは思わないですけど、今までやってきたイベントを見て判断してもらえるというか、おもしろいと思うものをイベントにして発表しているので。自分のイベントは全部おもしろいと思ってますから(キッパリと)。

――スゴイ、言い切りましたね(笑)。

ケムタ:うん、すごい自信がある。まぁ、お客さんの多い少ないはありますけどね(笑)。

 

『少年ジャンプが1000円になる日~出版不況とWeb漫画の台頭~』
大坪ケムタ (著) 

コア新書
850円 (税込)

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テーマは「出版不況」と「Web漫画の台頭」。出版不況と呼ばれて久しいですが、その一方で売り上げを伸ばしているのがWeb漫画。紙の漫画とはまったく違う形で利益を生み出しているのです。本書はWeb漫画のヒットの秘密を明かすとともに、出版不況の内実も暴露。紙とWebの狭間に揺れる出版業界を、キーマンへの取材によって解き明かします!

Live info.

3/6(火)LOFT9 Shibuya

DEADLIFT LOLITA PRESENTS

『渋谷マッスルイリュージョン! vol.3』

【出演】DEADLIFT LOLITA(レディビアード&才木玲佳)
【ゲスト】伊藤麻希(トキヲイキル)、まお(せのしすたぁ)

OPEN 18:30 / START 19:30
前売¥2,000 / 当日¥2,500(税込・要1オーダー500円以上)
前売券はe+にて発売中