2006年に誕生した「ニコニコ動画」の出現により、インターネットに動画を投稿するという文化が生まれ、特に自らの歌声を動画におさめて投稿する「歌ってみた」カテゴリは独自の進化を遂げてきた。カラオケ音源に歌声をのせる、もともとボーカルトラックのない楽曲に歌をつける、伴奏まで自分で用意する、完全オリジナルソングを用意するなど、様々なタイプの"歌い手"が生まれた。そして、「ニコニコ動画」誕生から10年目に当たる2016年にスタートしたのが、この『i-STAR FESTIVAL』である。果たしてどんなイベントなのか? イベントの主催であり、自身も歌い手として活躍中のコニー氏に話を訊いた。[interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya)]
広告費ゼロ円
――昨年に続きまして今年もLOFT9を会場に選んで頂いてありがとうございます! 去年ビックリしたんですよ、春休みとはいえ平日のお昼から沢山のお客さんが来て、正直ボクが歌い手さんのシーンについて全く疎いもので……。
コニー:なるほど、歌い手のシーンといえば、ニコニコ動画の歌ってみたカテゴリが中心だと思いますが、この『i-STAR FESTIVAL』は、インターネットミュージックシーンで活躍するアーティストが一堂に会するイベントで、皆さんほとんど事務所に入らず、セルフプロデュースで人気を得てきた方たちなんですね。動画の投稿方法から、どうやったら再生回数が伸びるかまで、全部自分で考えてきたから、みなさん自己PR能力に長けている。なので、このイベントって広告費を一切掛けてないんですよ。
――そっか、「出演者のTwitter総フォロワー数は約600万人」って書いてありますけど、皆さんがそれぞれのメディアで発信すれば、事足りるわけですね。
コニー:そうです、公式で用意したものを「拡散、お願いします」で一気に広めてくれる。それだけ、広告拡散能力が優れているんです。自分の魅力を発信するために、今までは“路上”を使っていたと思うんですけど、あたらしい路上の場所がインターネットだと思っていて、路上よりも広く、強く、そして手軽に情報拡散ができる。伝え方もトークであったり、ゲーム実況であったり、歌を歌ったり、演奏したり、踊ったり、色々ですけど、それがインターネットという1つの場所で出来るようになったのが大きいんですよね。
――コニーさん自身も歌い手さんで、17歳の時に動画投稿を始めたんですよね。そのキッカケって何だったんですか?
コニー:私の場合は、同じような歌い手さんに憧れていたのと、もう引退しちゃったんですけどネットで知り合った“しゃむおん”くんと仲良くなって、どんどん音源をシェアしながら練習していくうちに、少し自信を持って、動画を上げてみたのが17歳の時でした。
――コニーさんの周りで動画投稿されてる方っていたんですか?
コニー:私の周りには一切いませんでした。当時、山形の高校に通っていて友達同士の会話には出るんですけど、実際にやってる人は1人もいませんでしたね。ただ、この界隈は10年ほど前から火が付き始めていて、私が始めた8年前は全盛期だったんですね。で、横の繋がりが出来るようになって、そこで出来た仲間と“Circle of friends”というグループを作りまして、夏にツアーを回ったりとか、今までにない経験をしまして。
――それがおいくつの時ですか?
コニー:ハタチぐらいの時ですね。
――はぁー、早いですよねー。
コニー:その頃に、ここに身を寄せるというか、インターネットミュージックシーンの今後を考えて行きながら生きていこうと思いましたね。
いい歌い手さんを長尺で見たい
――『i-STAR FESTIVAL』は、いつから始まったんですか?
コニー:2016年からですね、1回目はO-EASTさん、O-WESTさん、O-CRESTさん、あとduoMUSIC EXCHANGEさんを物販会場で使わせて頂いて、計4会場ですね。それまでこういった趣旨でのサーキット型イベントってなかったんですよ。
――もともとはどういうキッカケで始まったんですか?
コニー:これは先ほどの“Circle of friends”でツアーを回っている時に、なにか新しいことをやりたいという話になりまして、その中で「サーキット型のフェスイベント」ってないよねという話になったんですね。それでO-GROUPを経営している渋谷テレビジョンさんに協力して頂けることになりまして。私たちのお客様って10代の方が圧倒的に多いんですね。1回目は10代のお客様が7割で、学生の方が5割以上だったんですけど、そうなると開催は春休み期間がいいのではないかということで、1回目からこのタイミングで開催をしています。
――前にコニーさんのツイートを見た際に、“今まで歌い手さんが集まるイベントはあったけど、大体みんな5~10分ぐらいなので、長尺で見たいという気持ちがあった”と書いてあったんですけど、そういうものなんですか?
コニー:そうなんです、今までのオムニバスイベントって入れ替わり立ち代わりで1曲ずつとか、そういうイベントが多かったんですけど、これだともったいないなと思っていまして。『i-STAR FESTIVAL』は最低でも30分から45分ほどの出演時間を設けていますので、そのアーティストの魅力を深く見せられる。たとえチラ見するだけでも、長尺だとライブの作り方が違いますから、オムニバスイベントよりも、そのアーティストの魅力を伝えられるんじゃないかと思います。
――興味ある人はもちろんですけど、それ以外の人のライブもたくさん見られるのが、フェスの醍醐味ですよね。
コニー:そうなんですよ、今年はLOFT9さんを入れて9会場で、ちょっと増えすぎたかとも思っていますけど(笑)。でも大御所もいれば、活動してまだ1~2年目の方もいると、上の方たちからは、こういう若い人たちがいるんだという認識が出来ますし、若い人たちからはあの憧れの人と同じフェスに出られたという嬉しさがあって、横だけでなく縦の繋がりも出来ると思うんですよね。お客様も出演者のキャリア関係なくイイ所を、かいつまんで見ることができる、そういう文化がこのインターネットミュージックシーンになかったので、じゃあ取り入れよう、ということでこの『i-STAR FESTIVAL』3年目、やらせて頂いております(笑)。
目指すはフジロック、ROCK IN JAPAN
――2016年からやり始めて、コニーさんの中で“変わってきた”と思う部分ってありますか?
コニー:ありますね。最初の頃は、ニコニコ動画の「歌ってみた」カテゴリの方たちがほとんどだったんですけど、ボーカロイド文化の波及と合わせて、その波がドンドン横に広がっていってるんですよ。「歌ってみた」シーンが少し落ち着いた変わりに、ツイキャスとかYouTube LiveとかLINE LIVEとか、生配信の音楽カテゴリーでしっかり頑張る方が増えていて、だったら『i-STAR FESTIVAL』は、インターネットミュージックシーンで活躍する人たちの総合フェスにしようと、本当にフジロックとか、ROCK IN JAPANみたいになればと思っています。
――それをチェックするコニーさんも大変そうですね。
コニー:そうですね。最近ようやくお手伝いスタッフができまして、その子にめぼしい配信者さんをリストアップしてもらったんですよ、3000組ぐらいいるんですけど(笑)。
――えーっ!
コニー:それを時間がある時に逐一目を通しているんですが、やっぱりインターネットは本当におもしろくて、しっかり頑張ればちゃんとお客さんは付いてくるんですよ。その中から私が魅力を感じる人たち、『i-STAR FESTIVAL』に出て欲しい人をピックアップしていますので、来年、再来年、更に幅を広げながらいい音楽フェスにしていけるんじゃないかと思っています。この作業はホント1人じゃできなかったので、スタッフに感謝してますね。
――では改めて、Rooftop読者にフェスの見所をお願いします!
コニー:『i-STAR FESTIVAL』とは、インターネットミュージックシーンにて活躍するアーティストが一堂に会する、サーキット型のフェスイベントです。もちろんたくさんのジャンルの方が集まります。ロック、パンク、ヒップホップ、ダンスからゲーム実況で音楽をやる人まで、色々な人がいますが間違いなく今後、世界に羽ばたいていける魅力を持つ人たちを集めている自信があります。もし来て頂けるようであれば、確実に満足して頂けるアーティストと出会えるはずですので、是非、新しい世界に一歩足を踏み入れて頂ければ、これ以上の幸いはございません。3/26、渋谷にてお待ちしております!
――コニーさんの人柄も最高なんですよね(笑)。当日も宜しくお願いします!