Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューイギリス人(Rooftop2018年2月号)

目の前のきみを笑顔にする無敵のロックンロール、ここにあり!

2018.02.01

気がつけば歌詞に「笑顔」が多かった

──タイトなスケジュールではあったかもしれませんが、結果的にはとても充実した創作期間だったと言えるんじゃないですか。

たつ子りん:ただ新しいのを録って出しました、って感じにならなくて良かったですね。曲づくりの期間が長かろうが短かろうが楽曲のクオリティはいつも同じグレードのものをつくってるつもりなんですけど、それをただ出すよりも、オサムさんの力を借りたことで進化できた部分があるんですよ。次にやりたいことがどんどん出てきたのも良かったです。

武志:オサムさんの録りに対する姿勢がすごくて、それを見て刺激を受けたというか、ちゃんとしようと思いましたね。

──演奏にダメ出しされたりとかは?

武志:ドラムにはなかったですけど、コーラスを録ったときに「もっとちゃんとしたのをください」と言われました。

──イギリス人にとってコーラスはとても重要なのでは? ライブでお客さんが一緒に唄う大切なパートじゃないですか。

サコ:コーラスは大事にしてますね。

たつ子りん:ビーチ・ボーイズとトイドールズの影響がでかいですね。コーラスとはそうあるべきものだっていうか。

──総武線チームは、今回のレコーディングで学べたことはありますか。

トム:むかしはMTRに自分の音を入れただけのレコーディングだったんですけど、今回はすごくいいスタジオで録れたんです。それがとても気持ち良かった。天井が高くて、すごくいい環境でした。武志と2人でウキウキしながらリズム録りができましたね。

貴文:エレキギターの音を曲ごとやフレーズごとに変えたりするのはいままでそんなにやってこなかったんですけど、今回はスタジオの楽器を借りながら、たつ子りんとオサムさんと3人でいろんな音のアプローチをしてみたんです。それがすごく面白かったので、新しいギターがもっと必要なのかなと思いました。

_93A7897.jpg──リーダーは今回のレコーディングを総括すると?

サコ:期間がすごく短かったんで、全曲聴き込めていないふわっとしたところがあったんですよ。いざレコーディングになると演奏面で微妙に感じる部分とかもあったんですけど、どうしようかと悩んでたところをオサムさんに「こうすればいいんじゃない?」とアドバイスをもらって、それを実際に採用したこともあったんです。

たつ子りん:「真夜中のラヴレター」のサビの後ろで鳴ってるバンジョーですね。あれはコードを弾くでもなく、同じフレーズをループさせてるんです。サイドギターを入れてるんじゃないか? みたいなフレーズをあえてバンジョーで入れてみたりして。要するにバンジョーとしての使い方ではないやり方なんですよね。まぁ、ウチはむかしからバンジョーの使い方を間違ってるのかもしれないけど(笑)。

──サコさんのバンジョーとマンドリンは、イギリス人の特異な音楽性にとって絶対に欠かせない存在ですよね。

たつ子りん:ぼくは「後のせサクサク」と呼んでます。

サコ:どん兵衛の天ぷらかよ!(笑)

たつ子りん:フレーズ的には特に難しいことはやってないんですよ。フレーズの1小節目に1音鳴らすみたいな使い方を今回もしてるんです。「きみのことを思い出して眠れなくなった」の後半は思いきりそうで、ポーン、ポーン、ポーンと学校の鐘の音よりも少ない音数でのんびり弾いてるだけなんです。2音しかないから逆にミスれない(笑)。

──全曲の歌詞をじっくり読むと、「漫画」という言葉がよく出てきますよね。「松本大洋の漫画みたい」を筆頭に、「真夜中のラヴレター」、「河童」、「ROGUE 1」にも「まるで漫画」とか「漫画みたいに」という歌詞があるじゃないですか。

たつ子りん:無理やり「漫画」という言葉を入れてみたんです。というのも、漫画をコンセプトにしたアルバムをつくろうと思ったんですよ。真夜中に一人で漫画を読んでいる状況のコンセプト・アルバムを。それで「漫画」という言葉を全部の曲に入れようとしたんですけど、後から不自然に入れた「漫画」という言葉よりも「笑顔」という言葉が自然に多かったんです。で、これは『SMILE』じゃんか! と思って。

──ビーチ・ボーイズにも同名の幻のアルバムがあることだし。

たつ子りん:歌詞には「漫画」のほうが圧倒的に言葉数として多いと思ってたのに、特に入れようと思ってなかった「笑顔」とか「笑う」という言葉が多くて自分でもびっくりしたんです。

 

目の前にいる友達や家族を笑顔にしたい

──「真夜中のラヴレター」にも「きみの笑顔をもう二度と絶やさないから」という歌詞がありますが、誰かを笑顔にしたいという気持ちが常にあるのですか。

たつ子りん:いつもそう思ってます。やっぱり笑顔がいちばんじゃないですか。笑顔って最強ですよね。怒ってる人だって一度笑えば怒ってる気持ちを忘れちゃうし、ロックンロールと笑顔は最強なんですよ。今回のレコーディングはスケジュール的にすごく大変だったので、笑顔を忘れてピリピリしたときもあったんですけど、ピリピリしてるからこそあえてふざけたり、マジメな作業をしてるときにわざと邪魔したりしたんです。それはレコーディングの全日程に参加したぼくも、オサムさんも、ミックスまで全部参加した武志も、みんな自ずとそうしてました。誰かがピリピリしてたらふざけて笑いを取ろうとする。それは生まれてからずっと一貫してますね。

──イギリス人の歌詞はどれも生活圏内、四畳半の範囲内の「きみとぼく」を唄う歌ですよね。四畳半より外の社会的なこととか、自分の内面を深く掘り下げてみるとか、自分の生活圏外の歌を唄ってみようとは思いませんか?

たつ子りん:思わないですね(きっぱりと)。だって嘘くさいじゃないですか。会ったこともない人のことを歌にしたり、元気づけたりするなんて。ぼくはそれよりも目の前にいる友達や家族を笑顔にしたいし、笑顔になった人がその友達を笑顔にしていけばいいんじゃないかと思うんです。誰か一人のことを笑顔にできれば、いずれ全部の人が笑顔になれると思うから。だからぼくは目の前の誰かを笑顔にする歌を唄いたいんですよ。

_68A0672.jpg──「東海道本線」でも「夢をやめる理由わない」「夢を守ることにする」と高らかに唄われていますが、バンドという夢を守り続ける理由とは何なのでしょう?

たつ子りん:単純にバンドがかっこいいからじゃないですか? なんていうか、他の職業とは明らかに違いますよね。給料日まであと半月あって、手元にあと1,000円しかないとします。その1,000円でCDを1枚買ったらアウトじゃないですか。それなのにうっかりCDを買ってしまう。そんなギリギリ感がバンドにはありますよね。買ったらヤバイとわかってるはずなのに、買った瞬間は明日のことなんてどうでもいい。買った数日後に「ヤッベェ、腹減った…! やっちまった…!」って後悔するのに(笑)。だけどCDを買ったときのあの高揚感は自分でも抑えられない。

サコ:バンドは純粋に楽しいし、あと、ぼくの場合は地元のヤツらを見返したい気持ちがバンドを続けてる理由としてありますね。

たつ子りん:まぁでも、やめる理由がわからなくなってるところはあるよね。

サコ:ここまで来ると、やめるほうが勇気が要るしね。

たつ子りん:友達にも親にも迷惑をかけっぱなしじゃないですか。正月に実家に帰ることも少なくなったし、親に連絡するのはお金を無心するときだけだったりして。友達にもさんざんお金を借りたりご飯を奢ってもらったりしたし。いまさら就職して親孝行したり友達にお金を返すこともできないから、バンドで一発当てて恩返しするしかないんですよね。

貴文:だけど、バンドをやればやるほど今回みたいにロフトが力になってくれたり、やれる幅がどんどんでかくなっていくんですよね。そのたびにバンドとしての面白さがどんどん増してるんですよ。だからもっともっと先へ行きたいし、たつ子りんが言うようにいろんな借りを返したい気持ちもありますね。

トム:バンドを続けてるのは、やっぱり楽しいからですよね。苦しい場面のほうが多いけど、さっきたつくんが言ったように笑顔になれば辛いことも忘れちゃう。ライブをやれば「うわッ、楽しい!」って心底思うし、その楽しさが続くとやめられなくなるんです。

武志:ぼくはこのバンドにいることで、このバンドの曲を聴いてくれるみなさんの背中を押したいと思っているんですね。なぜならぼくはこのバンドに入ったのがいちばん遅くて、入ったきっかけは「夢はいつか叶う」みたいな歌がイギリス人には多かったからなんです。それで自分もこのバンドで叩きたいと思って、一度は田舎に帰ったのに、3、4年前にイギリス人に加入させてもらったんですよ。このバンドで自分が何をできるのか? を考えると、かつて自分が背中を押してもらったように、悩める人たちの背中を押すきっかけになればいいなと思うんです。歌は唄ってないですけど。

 

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SMILE

LOFT RECORDS LOCA-1022
定価:2,500円+税
2018年2月14日(水)発売

【収録曲】
01. きみのことを思い出して眠れなくなった
02. 真夜中のラヴレター
03. 松本大洋の漫画みたい
04. ドッペルゲンガー
05. 河童
06. ROGUE 1
07. 東海道本線
08. 天使かと思った!
09. 月見公園放送局
10. などわ(bonus track)[短編映画『などわ』主題歌]

配信&サブスクリプションシングル
などわ

2018年1月17日(水)リリース
2018年春全国劇場公開短編映画『などわ』タイアップ曲

LIVE INFOライブ情報

アルバム『SMILE』レコ発ツアー
2月24日(土)千葉県:新松戸FIREBIRD
2月27日(火)茨城県:水戸LIGHTHOUSE
3月3日(土)栃木県:足利ライブハウス大使館
3月16日(金)神奈川県:小田原姿麗人
3月18日(日)長野県:長野the VENUE
3月20日(火)大阪府:大阪KING COBRA
3月21日(水)静岡県:浜松G-SIDE
3月30日(金)岩手県:大船渡KESEN ROCK FREAKS
3月31日(土)宮城県:仙台FLYING SON
4月1日(日)福島県:いわきSONIC
4月7日(土)静岡県:静岡UMBER
4月8日(日)大阪府:天王寺FIRELOOP
4月21日(土)秋田県:秋田LOUD AFFECTION
and more...

アルバム『SMILE』レコ発ツアーファイナル
5月23日(水)東京都:某所フリーライブ

その他のライブ
2月2日(金)新宿LOFT[with:THE BLACK COMET CLUB BAND / アシュラシンドローム]
2月4日(日)高円寺クルーラカーン[シングル『などわ』リリースツアー追加公演特別編アコースティックライブ、with:ゲンドウアコースティックミサイル / O.A こだまたいち(THE TOKYO)]
2月13日(火)下北沢 CLUB Que[with:THEだいじょぶズ / DJダイノジ(大谷ノブ彦)]
3月6日(火)新宿LOFT[with:TOKYO STRAIGHT BAND / THE TOKYO / 氏原わたる(THE BUCKS:DOES)/ ホワイトルーザー / Karakuri Novel Rabo / HIBIKI / COYOTE MILK STORE]
3月24日(土)渋谷CLUB CRAWL

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