Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューイギリス人(Rooftop2018年2月号)

目の前のきみを笑顔にする無敵のロックンロール、ここにあり!

2018.02.01

 子どものころ、元気で明るくイタズラ好きで好奇心旺盛、親分肌で面倒見が良く、弱虫や輪の外の友達まで引っ張りこんで一緒に遊ぶガキ大将が近所にいなかっただろうか。勉強はからっきしだけど腕っぷしは強い。お調子者だけど友情に厚くて憎めない。泣き虫の友達をどうにも放っておけない。イギリス人の歌の主人公はそんな近所のガキ大将がそのまま大人になったような感じがするのだ。金にも境遇にも恵まれない、うだつのあがらぬバンド生活を送る日常だけど、根拠のない自信と夢と希望だけはある。九回裏、二死満塁の絶体絶命のピンチでも一発逆転ホームランを打とうとする心意気は充分にあるが、特大の空振りだってオッケー。尻餅をついてズッコケても、それで見る人が笑顔になるなら万事オッケー。それよりきみは大丈夫? こんな情けない男でもなるようになってるんだから、きっときみも大丈夫だよ! バッチコイで笑っていこうぜ! イギリス人の歌はそうやってぼくらの背中を押してくれるのだ。そんな彼らの最新アルバムのタイトルは『SMILE』。これほどまでに言動が一致した純朴なロックンロールが他にあるだろうか。笑顔は人に広がっていくし、大切な人と笑みをシェアすればもっと笑顔になれる。イギリス人は知っているのだ。笑顔とロックンロールが世界の共通言語であり、人の心も氷もとかすパワフルな武器であることを。(interview:椎名宗之/photo:丸山恵理)

ロフトに気に入られたのは才能があるから!

──ロフトレコードからリリースの打診があったとき、率直なところどう思いましたか。

黒沢ビッチたつ子りん(vo):「こいつらはもう自力じゃ売れないから手を差し伸べてやろう」って感じだったんじゃないですか?(笑) 最悪売れなかったらロフトから出す手もあるっていうのは、6、7年くらい前に大塚さん(新宿ロフト店長の大塚智昭)から言われてたんですよ。それから事務所を紹介されたり、自分たちでレーベルを探したり転々として、その結果「やっぱり売れないな」と判断されたんじゃないですかね。

──ロフトは以前からイギリス人のことをだいぶ贔屓にしていましたけど、なぜそこまでかわいがられたんだと思いますか。

たつ子りん:やっぱり才能じゃないですか?(笑) まず曲がポップだし、歌詞にひらがなが多い。だから小学生からF3層まで老若男女に受け入れられやすいし、さらにメンバーのキャラクターも濃くて棲み分けができてる。それで溺愛されたのかなと。

トムソンガゼル(bass):あと、お酒を呑むのがかなり好き。

たつ子りん:だけどお金を払うのはキライ。

サコ(banjo, mandolin):それはみんなそうだろ!

──先行配信されたシングルの「などわ」は既発曲でしたが、新曲で勝負したい気持ちはありませんでしたか。

たつ子りん:特に考えなかったですね。今回はあれよあれよと作業を進めなくちゃいけなかったし、シングル向きのいい新曲ができるかどうかもわからなかったし。でもいいタイミングでこの「などわ」を元にした映画(若林美保、渋川清彦の主演映画『などわ』)ができるということで、最初はそのサントラを作らないか? って話だったんですけど、予算の関係でアルバムも出さないと元が取れないってことになって。で、それならアルバムも出しますか? って感じだったんですよ。

──それから「などわ」以外の『SMILE』の収録曲をダーッと書き上げていったと?

たつ子りん:曲をつくりだしてレコーディングを終えるまでが2カ月くらいだったんです。

サコ:すっげぇ大変だった。いままでのレコーディングでいちばん大変だった。

たつ子りん:仮に10曲入りだとして10曲つくったところで全部採用されるわけでもないので、レコーディングまでの期間を考えて事前に40曲つくることにしたんです。そこから15曲まで絞ってメンバーに聴かせたんですけど、その15曲を練習する時間がなくて。つくりすぎたのはいいけど、10曲しか練習できないってことになったんですよ。それが最終的に9曲になって、もう1曲なんとかならないかなぁ…と思っていたところへレコーディングの前々日くらいに1曲できたんです。ギターとかは練習できないままレコーディングに突入しちゃって。

──最後の最後にできたのはどの曲なんですか。

たつ子りん:「東海道本線」です。

荒川貴文(electric guitar):あれは本当にギリギリにできましたね。

たつ子りん:生まれて初めてケータイのボイスメモで録音して、メンバーに聴かせました。それまではカセットテープを駆使した人生だったのに(笑)。

_68A6821.jpg──短期間の曲づくりとレコーディングが逆に功を奏したところはありませんでした?

たつ子りん:ないです(きっぱりと)。ぼくは基本的に急かされてもケツに火がつかないタイプで、むしろゆっくりさせてくれって思っちゃうんですよ。

トム:ぼくらは急かされるのは慣れてますけどね。今回も「ああ、いつものこの感じね」みたいな。

サコ:ただ今回はあまりの急ピッチだったので、自分は元から曲を書けなくて良かったなと心底思いましたけど。

──「などわ」以外の9曲もどれも純粋にいい曲ばかりだし、よくそんな短期間で完成にこぎつけましたね。

たつ子りん:ショックなのは、レコーディング用に15曲つくって、そのなかに「SMILE」って曲があったんですよ。練習までたどり着かなかったっていう。

──前のアルバムのタイトル曲が次のアルバムに入るって、バンドにはよくあるじゃないですか。

たつ子りん:次に入れるときは「SMILE 2」か「続 SMILE」になってるでしょうね。それか「SMILE ビヨンド」。

トム:それじゃ『アウトレイジ』だよ!(笑)

──「東海道本線」では清水駅から東京駅までの35の駅名が連呼されていたり、「ROGUE 1」は生まれて初めて新宿ロフトへ行ったときの思い出が語られていたり、みなさんのお里を知れるような曲が図らずも並んでいますね。

たつ子りん:特に意図したわけではないんですけどね。トムと貴文は千葉生まれで、錦糸町まで1時間で来れちゃうんで。そもそも2人は東海道本線に乗ったことがないだろうし。

トム:ないですね。

貴文:縁もゆかりもないですね。

たつ子りん:サコは静岡で、ぼくは清水に住んでたんですよ。それで清水駅から駅名を早口で言ってるんですけど、静岡駅は入れてないんです。

サコ:だからぼくとしては物申したいところがあるんですよ。清水の前に、静岡、東静岡、草薙も入れろよって(笑)。

 

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SMILE

LOFT RECORDS LOCA-1022
定価:2,500円+税
2018年2月14日(水)発売

【収録曲】
01. きみのことを思い出して眠れなくなった
02. 真夜中のラヴレター
03. 松本大洋の漫画みたい
04. ドッペルゲンガー
05. 河童
06. ROGUE 1
07. 東海道本線
08. 天使かと思った!
09. 月見公園放送局
10. などわ(bonus track)[短編映画『などわ』主題歌]

配信&サブスクリプションシングル
などわ

2018年1月17日(水)リリース
2018年春全国劇場公開短編映画『などわ』タイアップ曲

LIVE INFOライブ情報

アルバム『SMILE』レコ発ツアー
2月24日(土)千葉県:新松戸FIREBIRD
2月27日(火)茨城県:水戸LIGHTHOUSE
3月3日(土)栃木県:足利ライブハウス大使館
3月16日(金)神奈川県:小田原姿麗人
3月18日(日)長野県:長野the VENUE
3月20日(火)大阪府:大阪KING COBRA
3月21日(水)静岡県:浜松G-SIDE
3月30日(金)岩手県:大船渡KESEN ROCK FREAKS
3月31日(土)宮城県:仙台FLYING SON
4月1日(日)福島県:いわきSONIC
4月7日(土)静岡県:静岡UMBER
4月8日(日)大阪府:天王寺FIRELOOP
4月21日(土)秋田県:秋田LOUD AFFECTION
and more...

アルバム『SMILE』レコ発ツアーファイナル
5月23日(水)東京都:某所フリーライブ

その他のライブ
2月2日(金)新宿LOFT[with:THE BLACK COMET CLUB BAND / アシュラシンドローム]
2月4日(日)高円寺クルーラカーン[シングル『などわ』リリースツアー追加公演特別編アコースティックライブ、with:ゲンドウアコースティックミサイル / O.A こだまたいち(THE TOKYO)]
2月13日(火)下北沢 CLUB Que[with:THEだいじょぶズ / DJダイノジ(大谷ノブ彦)]
3月6日(火)新宿LOFT[with:TOKYO STRAIGHT BAND / THE TOKYO / 氏原わたる(THE BUCKS:DOES)/ ホワイトルーザー / Karakuri Novel Rabo / HIBIKI / COYOTE MILK STORE]
3月24日(土)渋谷CLUB CRAWL

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