Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー米村智水(株式会社カイユウ代表取締役社長)(Rooftop2018年1月号)

ユーチューバー、Instagram、AbemaTV、新しい地図……『KAI-YOU.net』米村智水と振り返る2017ポップ業界!!

2018.01.04

 『Rooftop』2016年12月号で「ポップとは何ぞや?」というテーマでお話を伺った、ポップポータルメディア『KAI-YOU.net』を運営する株式会社カイユウ代表取締役社長・米村智水。当時、開店直後の不安の渦の中にいたLOFT9 Shibuya店長・石崎典夫が「ポップの先生」と崇めたこの米村に、約1年の時を経て「KAI-YOUと振り返る2017年ポップ業界」というテーマで再度お話を伺った。ポップ業界の最先端を俯瞰する米村の目に映った2017年ポップ業界の注目トピックとは? [interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya店長)構成:マツマル(LOFT9 Shibuya)]

ネットはもはやオタクのための技術ではない

――いきなりなんですけど、今回は「KAI-YOUと振り返る2017年ポップ業界」というテーマで、米村さんの印象に残った2017年ポップ業界の出来事を伺っていければと。

米村:全体的な印象からいくと、もともとインターネットのメインストリームって、アニメやゲームが好きなオタクのための場所だったんですが、2017年はYouTubeとかInstagramが圧倒的に市民権を得たことで、「オタクの楽園」から完全に「リアルの一部」に入れ替わった年なんじゃないかと思いますね。その中でも象徴的なのは、元SMAPのメンバーがAbemaTVに出演したことで、今まで相互干渉の少なかったテレビにすら遂にオタクの牙城を崩されてきているのかなと感じました。

――たしかにSMAPの件は衝撃的でしたね。テレビに頼らなくても全然いけるじゃないかと。

米村:僕は逆に危惧していて、ネットがマスになればなるほど、今までサブカルとかポップとか言われていたようなネット発の文化もマスに取り込まれて「普通」になっていくんじゃないか、という。HIKAKINさんが元SMAPメンバーにたじたじだったのは少し残念でした。「お前のほうが偉いよ!」って僕は思ってました。オタク文化でいくと「応援上映」とかがリアルの場に侵食する一方で、Instagramにはタレントとかモデルといった「カッコイイ」人たちが流れていますし、大きなパラダイムシフトの時期を迎えているな、と。

――ウチも時代の流れに乗って、最近はユーチューバーさんのイベントをやるようになったんですが、この前出演してもらったポッキーさんはLOFT9のキャパ(180名)に対して1万人以上から応募がありました。「1人で武道館いけるじゃん!」って思いましたね(笑)。

米村:それも全く違和感がないほどに、2017年はまさにユーチューバーの年でしたけど、実は第三世代くらいの人たちの盛り上がりが大きかったのではないかと。

――もう第三世代? 第一世代はHIKAKINさんとかですか?

米村:MEGWINさんあたりですかね。第三世代のユーチューバーでいうと、へきトラハウスさんとかを筆頭に、見た目がやんちゃっぽいストリート系の方々が台頭してきてますね。昔だったらバンドを組んでたような人たちがユーチューバーのユニットを組んでいるような感じでしょうか。実際にネットの掲示板では「ユーチューバーユニットのメンバー募集!」なんてのもあります。

――すごい時代だなあ……。最近で言うとヒカルさんの一連の騒動が話題になったりしましたが、今後、ユーチューバー業界はどうなっていくと思いますか?

米村:ヒカルさんの件もそうなんですけど、ちゃんとマネジメントできる人が周りにいるかどうか。それが一時的なムーブメントというだけでなく、ビジネスとして長く成立する鍵になるのではないかと。ユーチューバー自体は素人同然の人も多いので、本来は業界を理解している大人がサポートしなきゃいけないはずなんですけど、その大人が「ユーチューバーとは何なのか」を理解できていないという問題はあると思います。

―まさにインディーズバンドの図式ですよね。前にへきトラハウスさんがウチに出た時はメンバー以外にスタッフがいなかったので、なぜか僕が2時間くらい写真撮影スタッフとしてガッツリ働きましたし(笑)。

 

コンテンツ力で近隣国に遅れを取る日本

――何年か前からニコニコ動画の生主さんとかがイベントを開くようになって、「世間的な知名度はないけど、ネットでは有名な人」が徐々に表に出てきているな、と感じます。

米村:ニコニコ動画はまさにこの10年のネット的な文化の象徴でもあったんですが、そのニコニコ動画の退会数が急激に上がっているっていうのも2017年の象徴的な事件ですよね。川上量生さんも会長を退いてしまって……。

――去年から今年にかけて一気にネット文化のメジャー化が加速した感はありますよね。

米村:そういえば、去年このRooftopのインタビューではどんな話しましたっけ?

「衣・食・住+遊」Webメディア業界の異端児、
KAI-YOU.net・米村智水の想う「ポップカルチャー」とは?(Rooftop2016年12月号)

 

――そもそもの「ポップとサブカルの境界線とは」とかですかね。あとは去年ウチがオープンしたてだったので、僕が「助けてください!」って泣き付いたりしてますね(笑)。

米村:へえ……(記事を見ながら)石崎さん、「AbemaTVをぶっ潰す!」とか言ってますけど、今年、AbemaTVめっちゃキてましたね!!(笑)

――完敗でしたね(笑)。なんであんなに躍進してると思いますか?

米村:マスなものがネットでも通用する土壌がついに出来上がってきたっていうことかなと。配信系の動画サイトはたくさんあったんですけど、AbemaTVみたいなテレビのロジックでつくられたコンテンツがネットでも通用するんだ、っていう一つの証明になったのではないでしょうか。

――Abemaさんのブランド力には脱帽です(笑)。そのほかで気になったトピックはありますか?

米村:米津玄師さんはブレイクしましたよね。若い人たちの支持率で言えば圧倒的だなと。あとは韓国のTWICEも面白いですね。これまでの日本だと、韓国のアイドルグループのファンの方ってほぼ女性だったのに、TWICEはちゃんと男オタもついているという。オタク系文化では『アズールレーン』っていう中国発の『艦これ』のそっくりのゲームがあるんですけど、クオリティも登録者数も本家を凌ぐ勢いで、注目されています。で、これに出資してるのが中国のビリビリ動画っていうサイトなんですけど……。

――ビリビリ動画! パクリとパクリのコラボですね(笑)。

米村:いや、これが馬鹿にできなくて。ビリビリ動画は中国を飛び出してニューヨークで上場することも報道されています。コンテンツ周りでは近隣国の圧勝で「日本、やべえんじゃねえか」っていう恐怖はあります。アニメやコスプレとか、本来は日本発のオタク文化が海外の媒体から拡散されていくのを見ていると、日本特有の内に向かっていくサブカル的な志向性が災いしてるのかな、とか思ってしまいます。

 

KAI-YOUからポップを世界に!

 

――前にKAI-YOUさん主催で『DARK POP NIGHT』というWebメディアの編集部の人たちが集まって、「絶対に記事にできない、いろんな意味で怖い話をする」というイベントを開催していただいたんですが、僕としては今後またKAI-YOUさんと組んで色々と実験的なイベントを定期的に組んでいきたいんです。もう「絶対にこの人が呼びたい」とか希望があればいくらでも協力しますので!(笑)

米村:ありがとうございます! ウチが「特集」という括りで2か月に一度のペースで出している記事があるんですけど、それにリンクした形のイベントとか。普段、記事として情報を発信してるわけですけど、公の場で発言して初めて形になるようなイメージもありますんで、それをイベントとして発表したいとは本当に思っています。

――ぜひお願いします! この記事が出るころには2018年なんですが、KAI-YOUさんの今後の展望も伺えたらと。

米村:うーん、世界を狙いたいですね。正確に言うと、世界に届きうるポップなコンテンツを届けていきたいです。

――世界ですか! それはKAI-YOUさん発のコンテンツで、ということでしょうか。

米村:ウチはあくまでメディアなので、黒子に徹してクリエイターや作品の後押しを行いたいです。2017年は海外のコンテンツばかりが強く目立っていたので、日本発のものをなんとか世界に知らしめたいなと。あとは今までずっと二の足を踏んでいたんですが、春くらいまでに「有料版」のKAI-YOUを始めようと思っておりまして。

――有料版ですか! 意外でした。

米村:無料で見られるというのがネットの強みではあるんですが、特定のコミュニティを対象に高クオリティの記事を提供していったほうが熱量を維持できるのではないかと。それに、最近のネットビジネスの流れ的に、「課金が当たり前」になってきたなと感じます。以前はアニメとかエロとか無料で落ちているものをdigるのがカッコイイ、みたいなところがあったんですが、今は「課金することがカッコイイ」時代のような気がしています。

――以前のインタビューでは無料へのこだわりとか、「広告をなくしたい」といったようなことも仰ってましたよね。

米村:そうなんですよね。だから敗北宣言みたいなもんですけど……。僕らも含めてWebメディア業界は未成熟だし、何がスタンダードになるかまだわからないような状況だと思うんで、「打倒テレビ」くらいの勢いで頑張っていきたいです。

――なるほど……そう考えるとAbemaTVはやっぱり偉大ですね。Abemaさん、去年は「ぶっ潰す」とか言ってすいませんでした!

 

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