Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー駕籠真太郎(漫画家)(Rooftop2018年1月号)

自由な表現を求めて

2018.01.04

 奇想漫画家として国内外を問わず熱狂的なファンを多く持つ漫画家"駕籠真太郎"。その唯一無二の世界観はどのように生まれてきたのか。そして漫画のみならず広がる活動はどのようなきっかけでスタートしたのか。作風とともに独特の世界感をもつ表現家に話を伺いました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]

表現をするということを仕事にしたくて

 

――まずは漫画家を目指したきっかけをお伺いできますか。

 

駕籠:何かしら表現をするということを仕事にしたくて、そこで目指したのが漫画家だったんです。でも本当は映画を作りたかったんです。

 

――そうなんですか。

 

駕籠:僕は“モンティ・パイソン”が好きなので。でも、映画は一人では作れないじゃないですか、でも極端な話1人でも漫画は描けますから。

 

――そうですね。

 

駕籠:絵を描くのが好きというのもありますし、高校のころも漫画研究部に所属していたというのもあります。

 

――漫画でお好きな作品や作家の方はいらっしゃったのですか。

 

駕籠:絵だと“大友克洋先生”と“水木しげる先生”と“士郎正宗先生”です。

 

――駕籠さんの作風とはかなり違いますが。

 

駕籠:描き込みの細かさが好きなんです。なので、キャラクターではなく背景を真似したりしていました。特に士郎先生にはモロ影響を受けましたね、僕の初期の絵柄はソックリなんです。

 

――物語の面ではやはり“モンティ・パイソン”からの影響が。

 

駕籠:そうです。漫画ですと“藤子・F・不二雄先生”の影響もあると思います。

 

――SF短編ものとかは確かに近いですね。

 

駕籠:その辺ですね。中学校くらいの時に異色短編集という形で出ていたものを読んで、ショックを受けたんです。それが自分の作風に繋がっているところはあると思います。特に強烈だったのは「間引き」です。

 

――コインロッカーの話ですね。

 

駕籠:作中で戦争・疫病・飢餓を人口が増えすぎないための調節機構として肯定的に描くというのがあって、その当時としてはものすごいショックだったんです。物凄い価値観の逆転で、本来はネガティブなことも違う視点からだとプラスになるというのはショックでした。

 

もっと自由に描けるんじゃないか

 

――駕籠さんは『COMIC BOX』からデビューされていますが、それは持ち込みですか。

 

駕籠:そうですね。大学生、19歳の頃です。

 

――当時としてもマニアックな雑誌だとおもいますが、『COMIC BOX』を選ばれたのはなぜですか。

 

駕籠:一番やりやすそうだったからです。

 

――まずはデビューをしたかったということですか。

 

駕籠:そうですね。初めに青年誌とかに行っていたら、デビューも難しかったでしょうね。それまでも同人誌活動とかはやっていなかったので。

 

――その頃ですと例の宮崎事件もあり、規制も厳しい中だったかと思いますが影響はありましたか。

 

駕籠:その事件は僕がデビューをした少し後でした。その頃からホラーやエロに対する規制が厳しくなってきていたので、影響はあったと思います。ただ、デビューできたからといってたくさん作品を発表できるというわけではないですから。それにデビューしたことで、少し満足したところもあったのでそこまで積極的になってはなかったんです。

 

――そうだったんですね。

 

駕籠:その後、編集の方の繋がりで『サイバーコミック』という雑誌で描いてたのですが、自由に描けないところもあったので、エロ系ならもっと自由なんじゃないかと思い、久保書店から出ている『レモンピープル』に完成原稿を持っていて読み切りを載せてもらいました。

 

――そこでエロ系に行くんですね。

 

駕籠:もともとはエロ漫画は読んでなくて、裸の女を出しておけばいいんじゃないかくらいで考えていました。ある程度たまったところで単行本が出してもらえたんです。それがデビュー3年目くらいだったと思います。そういう意味だと1冊目の単行本を出せたのは早かったかもしれないです。

 

――エロを描くことに抵抗はなかったのですか。

 

駕籠:正直言うと、普通のSEXシーンを描くのはあまり好きじゃないんです。描いていて面白くないので。ただ自由度は高いので、エロ系雑誌をメインで活動していましたね。

 

――描きたいものを載せてもらえるところで選んでらっしゃるのが、表現を仕事にというところに繋がっていますね。

 

駕籠:そうですね。いろいろなところに持って行きました。ただ、かなり特殊なものを描いていたので2冊目が出るまでは長かったです。5年くらいかかりました。そこから太田出版で出るまでも5年かかったので、10年で2冊しか出せなかったんですよ。それでも知っている人は知っていたみたいですけどね。

 

――マニアには響いていたということなんですね。『マンガ・エロティックス』にも持ち込みで掲載されたのですか。

 

駕籠:それは向こうから話をいただきました。そこで載せるようになったことが女性の方にも読んでいただくきっかけになってますね。

 

――駕籠さんのイベントでは女性のファンの方が多い印象があります。

 

駕籠:似顔絵やイベントは確かに女性の方が多いですね。その辺は女性の方が積極的なんだと思います。

 

――駕籠さんの描くグロシーンはどこかPOPで綺麗なので、そこが女性にも受け入れて貰いやすいのかもしれないですね。

 

駕籠:僕は基本はギャグだと思って描いています。

 

――作品の発想はどのようなところから得ているんですか。

 

駕籠:いろいろです。映画や本やWEBなど、これは話になりそうだなとピンとくるものを元に練っています。

 

――物語は全体を考えてから執筆されてるんですか。

 

駕籠:全然、考えていない方が多いです。僕はそのほうがやりやすいので。

 

物語よりも発想の奇妙さを重視する

 

――奇想漫画家と名乗っていらっしゃるきっかけはなんですか。

 

駕籠:根本敬さんが特殊漫画家と名乗られていて、これはいいなと思ったので(笑)。奇想という言葉自体も好きなのもあります。僕は物語よりも発想の奇妙さを重視するところがあって、ほかの方の作品でも奇想と銘打ってあるものは気になってしまって。

 

――そうなんですね。漫画家以外の活動では似顔絵活動もされていますが、そちらはなぜはじめられたのですか。

 

駕籠:もうなくなってしまった中野のお店からグロ似顔絵のイベントやってもらえないかと依頼があって、そこから個人的にもあるようになりました。

 

――人によっては駕籠さんをイラストレーターと思われている方もいるかもしれませんね。

 

駕籠:あると思います。Twitterでもたまに絵師さんと言われることがあります。

 

――海外でも個展を開かれていますが、知られるきっかけはなんだったんですか。

 

駕籠:一番直接の原因は『VICE MAGAZINE』の表紙を描いたことだと思います。

 

――海外から依頼が来たということなんですか。

 

駕籠:いえ、日本支部の方から依頼があったんです。依頼をしてくれた方は僕の作品の読者だったらしくて、推薦してもらえたということだそうです。多分、絵のわかりやすさが大きいと思います。

 

――海外は日本とは規制が変わってきますが、その点はいかがですか。

 

駕籠:乳首はNGとかはありますけど、そこだけ隠してしまえばOKなことが多いのでそれほど影響はないです。主にファンが多いのがイタリア・スペイン・フランスとヨーロッパなのもあると思います。あちらはロリ系は厳しいですが、僕の作品はあまりそういった要素はないので。

 

 

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