こんな音速ラインを待っていた!
「今を見て欲しい、今、出したかった音源が出来た」という今回のEP盤は表題の疾走切なナンバー『明日君がいなくなったら』を筆頭に、盛り上がり必須のアルコール・ソング『ハイボールミラーボール』、フル尺での音源化の要望が高かった『リンカラン』、この先への期待が高まる『4438』の4曲。方向性が違いながらも全てがパワーナンバーという意欲作だ。インタビューに応える2人の顔は終始笑顔に溢れ、今まさにバンドが好調期を迎えていることは明らか。「向き合う覚悟が出来た」というVo.藤井の眼はもう「先」しか見ていなかった。結成15周年の祭りへのカウントダウンは既に始まっている。[interview 朝倉文江(TOTE)]
今回のEP盤は一番素直に僕らの音楽に入れるアイテムになった
——『明日君がいなくなったら』リリースおめでとうございます。めっちゃ良い音源になりましたね。
藤井:ありがとうございます。今回コンセプトがあって、俺は海外のバンドのマキシシングルを買いあさる男だったのね。
大久保:買いあさる男(笑)。
藤井:だからアルバムに入らないんだけど、B面扱いで入ってる曲が1番良かったりするっていう、全曲良いマキシっていうヤツをやりたかった、今回のEP盤は。アルバム聴いたこと無いけど、このミニアルバムはすごく良いんだよねっていう作品になって欲しいと言うか。もちろん、アルバムも聴いて欲しいけどさ(笑)。
大久保:そういう風な意図としては、一番素直に僕らの音楽に入れるアイテムだと思います。
藤井:このプレッシャーに勝つくらいのアルバムを作る自信はあるんだけど(笑)、俺的には本当に好きなマキシシングルがあるのね、ずーっと何年経っても色あせない、そういう4曲入りって超・ヘビーローテーションしてたし、そういう一枚になって欲しい。一番重要なのは、悲しい曲を書きたくなかった時期が、やっと明けた。何かこう、悲しくて切なくてっていう世界観、もともとの俺等の得意なところがやっと書ける時期に来たのかなって、自分なりに思った瞬間があって。だから『明日君がいなくなったら』はそういう曲なんですよ。3年ぐらい前だったら、書いてもボツにしてたと思うんだけど。
大久保:もったいない!
藤井:ははは(笑)。やっと、そういう時期に来たんだと思うんだよね。上手く説明出来ないんだけど…福島の人に聞けば分かるかも。いろんなことと向き合えて、すごく向き合っている6年半後、かな。ある日突然やってくるんだよ。ちゃんと向き合える日が。そこが、俺にとっては今回のタイミングで。悲しい曲を聴きたくないっていうタームじゃなくなった。「音速っつったらココだろ!」って所に帰って来られた。みんなでライブで盛り上がれる曲とかももちろん好きなんだけどね、ただもう、切なくて聴いてて泣きたくなるような曲っていうところに戻って来られたなって。意外と難しいんだよ。
——はい。藤井さんは福島在住ですし、いろいろどうしても引きずられるんでしょうね。
藤井:そうそう。いろいろさ、経験してさ、思って、辿り着くわけでしょ? 俺らもそこに行きたいなってだけの話で。だって『明日君がいなくなったら』なんて普通書けないもん。震災後にこんな題名の曲、書けないよね。
大久保:そうね。
藤井:そこで重い思いをさせてたら申し訳ないんだけど、何か…そこを言えるようになったのは自分的には成長したんじゃないかなって。そこと対峙する覚悟が出来たっていうところ。やっと…7年くらいかかったけど。
一日一日を大事にしたいなって思う反面、大事に出来てない自分もいる。
——強いEP盤ということでこの4曲を選んだんですか?
藤井:やっぱりこのタイミングで出すならこれかなっていう所が揃った。だって『4438』とか、このタイミングじゃなかったらダメじゃん。前にリリースした『3428』から10年後っていうのもあったし、来年じゃダメでしょ。『リンカラン』も『風景描写』で一回世に出てるけど、小作品的なバージョンで、本当はバンドでこんなにやってたのに、丸々1曲ちゃんとあるのにもったいないなって思ってたし。『ハイボールミラーボール』はもう、完全にライブでやりたくてしょうがなかったから入れたかった(笑)。…『明日君がいなくなったら』は、いろいろ考えさせられることがあって、早く出したかったのもあるんだけど、何かね、大久保に響くのに時間がかかったんだよね、この曲。だからちょっと時間が経ってるから、今回書き下ろしたと言うよりは、このタイミングだなっていう所に落ち着いた。
——そのタイトル曲『明日君がいなくなったら』についてもう少し教えて下さい。
藤井:いろんな自分の生活の経験上、分かってくることもあったりして、普通に目の前にいる人が突然いなくなる現象ってあるからね。それがあった時に、どうしたら良いんだろうなって思って。やっぱさ、誰か一人欠けたとしたら色が無くなる。白黒になっちゃう気が俺はしてて。その一瞬一瞬、一日一日を大事にしたいなって思うし、でも思う反面、大事に出来てない自分もいる。分かってんだけど出来ないっていうのの繰り返しだから。
大久保:こういうのって、ふとした時に感情的にこみ上げるって言うか、そういう時に本当に身に染みて感じることが出来ればそれで良いと思うんですよね。
藤井:そうそう。そこでずっと考えてる必要も無いんですよ。考え続けたらしんどいから。そんで、楽しむときは楽しみ、そこに向き合うときは向き合うっていう、そのオンオフをちゃんとやっていけば、人生っていうのは良くなるんじゃないかなって。なかなか難しいんだけどさ。そういう所を書きたくて作ったんだと思う。Aメロは実体験も入ってるかな。「ちくりと刺すような突然の悲しみ」。結局、通り雨みたいなものに流されて、忘れたくないけど、慣れていく。そういう中で…でも人間そうしないと生きていけなくなっちゃうじゃん。そこを折り合いつけていかないと辛いよってところでさ、一緒にさ、歌をうたったらいいわけじゃん。もう、イメージとしては泣きながら走ってる感じなんだよね。
15年目に何をやらかすんだろうなって思ってて欲しい。
——12月のツアーですが、東京、名古屋、大阪、郡山と4か所で。『音速ライン TOURハイボールミラーボール2017』と。15周年への期待も高まりますね。
大久保:続いていくのは大前提として、まだ何も言えないです(笑)。
藤井:言えはしない(笑) けど、15年目に何をやらかすんだろうなって思ってて欲しいね。
——ツアー初日はSHELTERなので、2人が知っているSHELTERの良いところを教えてください。
大久保:良いところ? 音です!
藤井:音と、ライブ感がずば抜けてるね。最高のライブハウスだと思うね。一番好き。
大久保:演奏してる側としては一体感がすごい。お客さんとも近いし。
藤井:LOFTも好きだけど、一番はSHELTERかな。
大久保:OFTはいろいろいやすい。落ち着きます(笑)。
藤井:あ、SHELTERはトイレの段差に気を付けて。あとデカい時計に気をつけろ!
——(笑)。あれはステージから時間見たりします?
藤井:見る見る。
大久保:助かります(笑)。
藤井:俺、本当に良いライブハウスだと思う。本当に好き。
——そこから始まるツアーもヤバいことになると。
大久保:今回、本当にね。基本的に2人で決めるけど、EP盤だし選曲もいろんなやり方が出来るんじゃないかなって。
藤井:アルバムの場合ってさ、10曲あるから結構埋まっちゃうけど、これは4曲だからね。今まで聴けなかった、やってくんないかなって曲をやると思う。
大久保:サポート陣が大変っていう(笑)。懐かしめ曲ゾーンも強化していきたいなって。
——最後にどんな作品になっているか教えてください。
藤井:4曲入りなんだけど、自分の人生の中でものすごく宝物になるようなマキシとかe.p.盤ってあるの。それを俺らも作りたかった。俺的にベルベットクラッシュとかね、いっぱいあるんですよ。そういうのを再現したくて。聴いてもらえれば分かると思うんだけど、絶対に宝物になると俺は思ってるので。これを聴いてライブに来たくなると思うし。
大久保:シングルとかマキシとかe.p.とか言われてますけど、1曲目だけ聴いときゃいいやとか、そんな感じじゃ絶対ないので。捨て曲が無い本当にバランスの良い内容になってるので。バランスとかじゃないな…強いですね。本当に今回「強い」です、全てが。自分たちも心から楽しんで作れた一枚になってます。