信念がないことが、信念
——自分の中でボーカルというポジションでの欠かせない、ゆずれない信念とかこだわりは何ですか?
椎名:答えに手を抜くわけではないんですけど、僕はないですね。この質問を聞いて、信念とかを持ってとかは、この19年やってないなって思いました。やらざるを得ないじゃないですか。もう当たり前のようにフロントに立っていて、フロントマンとしてやることって決まっていて。ずっといろんな先輩方を見てきて、培っているノウハウというか、ボーカルってこうなんだなっていうのがあるから、そこを自分だけビュッと飛び出して何かしようと思っても、やっぱり無理なことで。当たり前に収まっているところに、僕はいますね。フロントマンとして引っ張らなきゃいけないっていうのも当たり前のことだし、お客さんを盛り上げなきゃいけないとか、MCはしゃべらなきゃいけない、面白いことを言わなきゃいけないとかっていうのは、みんな先輩方が教えてくれたことなんで。そのレールに乗っかっちゃってるんで。そのレールも、転がって行って、最後はふすまのレールに入って行くと高得点なんですけど。
一同:(笑)
椎名:だから信念じゃないなって、今、思いました。これって信念ではなくて、いろんな先輩方から教えてもらった、悪く言うと猿真似というか。スタンスとしては、ボーカルっていうのはそういうもんなんだろうなって、今、思いますね。
涼木:格好いい! 僕もそれにします。
一同:(笑)
松本:僕も最初はないって思ったんですけど…。ずっとありすぎたんですよ。
椎名:考えすぎちゃったんだね。
松本:はい。こうじゃなきゃいけない、ああじゃなきゃいけないとか。我慢とか要望とか、いろいろ。たまたま20代前半でデビューできて、その時もこうじゃなきゃ、ああじゃなきゃって、ワーってなって、逆に上手く歌えなかったりして、そういう自分を責めて、自分だけの中に閉じ篭ってとか。
椎名:似合うよ。すごく似合う。
一同:(笑)
松本:そういう時期がずっとあったんです。
涼木:今は?
松本:今は逆に、振り切っちゃったんです。当時は歌う歌とかも、僕を全面に出して、真空ホロウの松本明人はこうですみたいな風に歌って、1回でそれを分かってもらおうと思ったって難しい話じゃないですか。歌に全部を詰め込めれるかって言ったら、分からないし。そういう意味では、今は逆にこだわりとか、信念みたいなものをなくすっていう方に向かってるかもしれないです。
椎名:あった、そういう時期。多分俺もあったんだろうなって思います。話を聞いていて、何か懐かしい感じもするね。信念がないことが信念だよね。
松本:それをズバッと言えるっていうのが、すごいなって思いました。
椎名:もう40歳を越えると怖いものがないですからね(笑)。
涼木:僕は逆に、それが頭の中でパンパンに張り詰めてるので。椎名さんの“ありのままがこだわり”みたいな言葉は、自己啓発本を読んだ時みたいな感じで、ハッてなりました。
椎名:もうちょっと先なんだろうね。あと1ヶ月なのか、半年なのか、何年なのかは分からないけど、涼木くんの中で、「こんなにパンパンに張り詰めていたのは、何だったんだろう」って弾け飛ぶ時が来るのかもしれないね。
涼木:僕は現状で言うと、メンバーはもちろん、バックで演奏する人間がいて、聴いてくれる方もいて、共演する方もいて、僕を取り巻くシーンがあって。って中で、僕は何で今立って、こうやってやってるんだろう、やるべきことは何かって。
椎名:クッソ真面目! 偉いよ。
涼木:っていうのを、隠すのがこだわりかもしれません。
椎名:おー、格好いいね。今は言っちゃったけどね(笑)。
一同:(笑)
涼木:ボーカリストって、僕の中で赤レンジャーなんで。赤レンジャーが嘆きたくはないなって。
椎名:格好いい!
涼木:赤レンジャーになりたいって思ってるところが、こだわりです。
椎名:ものすごく同意します。いいボーカルだ! 俺は青でいいやって思って。
一同:(笑)
椎名:赤レンジャーにいくなら、俺は青でいいしね。
涼木:えっ、ここで組みます?(笑)
松本:僕は黒がいいです。
椎名:出た、出た、出た〜(笑)。
一同:(笑)
椎名:たまにいない奴な。
涼木:でも人気があるんだよね。
松本:人気がある奴(笑)。
椎名:たま〜に、いなくなるんだよね、黒は(笑)。