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「三里塚のイカロス」代島治彦(監督)インタビュー

管制塔占拠は希有な勝利だった

 本作も前作同様、闘争当時の記録映像が折に触れて挿入されている。中でも印象に残るのは、1977年の「岩山大鉄塔強制撤去」の場面だ。
 
代島「三里塚闘争の特長として、農民の反対同盟がすごかった。いろんな知恵を働かせて、4000メートルの滑走路ができそうになったら、そこに飛行機がひっかかるような大鉄塔を建てちゃった(笑)。それを実行するエネルギーがすごいんです。あの大鉄塔はひとつのエポックでした。それまでは地上での闘争だったのが、第二次強制代執行の時に東峰十字路で3人の警官が殺されてから闘いが激化していく。もう殺し合いですよね。それで考えたのがあの大鉄塔だった。滑走路の端に鉄塔を建てれば飛行機が飛べないから、それをたった一晩で建てて死守する、そういう闘いをしようと。あれは東大の工学部の連中が設計したんだけど、現在のスカイツリーと同じ工法だったらしい(笑)。だからあの鉄塔は支援に入った若い学生と農民の実行力が合わさって建った記念すべきものだったんです」
 
 もう1つのすごい映像としては、1978年3月26日に決行された「成田空港管制塔占拠」の映像だ。
 
代島「福田赳夫首相が1978年の3月30日に開港すると宣言した。それで反対同盟は3月26日に空港の中に突入して管制塔を占拠する計画を立てた。もうそれしかないと」
 
 前日から地下排水溝に潜んでいた部隊は、他の部隊の空港突入騒動で混乱する中、マンホールから空港内に這い出し、一気に管制塔を登って管制室に侵入した。
 
代島「彼らは本当にアンジェイ・ワイダの『地下水道』をイメージしていたみたいで、もう管制塔占拠だけで映画が撮れる(笑)。ただ、中川さん達はマンホールから出たらすぐ捕まるんじゃないかと思ってたらしいけど、実際は管制塔のエレベータに乗って上まで行き、コントロールルームに侵入してそこを破壊しちゃったんです。これにはみんな驚いた。彼らの思想として、死人は出さない、空港の職員には手を出さない、人質を取らないという方針だった。だから壊しておしまい。僕と同じ世代の作家の鴻上尚史さんは『ヘルメットをかぶった君に会いたい』という小説を書いたんですが、彼は管制塔占拠をこんなにすばらしいテロリズムはないと言ってる。人を殺さない、目的を遂げたら潔く捕まる。管制塔占拠は、三里塚闘争の中でも希有な勝利だったんですね」
 
 記録映像だけ見ても十分すごい迫力なのだが、映画では前作に引き続き音楽を制作した大友良英のフリージャズが現場の臨場感をより高めている。
 
代島「大友さんが言うには、やっぱりあの時代ってフリージャズだよねって。それぞれが自由に自分のやり方で攻めていって、それが混じり合って一つの音楽になっていく。そう思って、大友さんは、サックスの坂田明さんとドラムスの山崎比呂志さんを呼んで自由に演奏してもらった」
 
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飛んでる時よりも落ちた時に何を思うか?

 この日の行動で、管制塔突入部隊、空港突入の大部隊他、計168人が逮捕された。管制塔を占拠した中川憲一の刑期は8年だった。
 
代島「中川さん達が刑期を終えて出てきた時、闘争はすっかり様変わりしていた。管制塔占拠でピークを迎えた運動は、その後仲間割れをしたり、政府と水面下で交渉したり、ついには同盟が分裂する所までいってしまった。中川さん達が闘う場所はもうなくなっていたんです」
 
 空港が開港したことも大きかった。管制塔占拠事件の2ヶ月後、機動隊が厳戒態勢を敷く中、一般乗客が一人もいないターミナルビルで関係者のみの式典がひっそりと行われた。記念すべき日本の空の玄関の開港としてはあまりにも異様な光景だった。
 その後も闘争は続いたが、反対同盟は分裂。内ゲバに至ってその勢いは失速する一方だった。空港行きの京成電鉄の破壊行為も世間からの反発を招き、反対派の中から徐々に移転の交渉に応じる者が出てきた。
 結局、空港反対闘争で勝ったのは誰なのだろう? 高額の補償金を手にして移転した農民なのか、空港を開設した国なのか、そして負けたのは農民を助けに行った若者だけなのか?
 
代島「今回、『三里塚のイカロス』というタイトルを付けましたが、人間は、飛んでる時よりも落ちた時に何を思うか、それが希望につながると思うんです。ずっと夢ばかり追い続けている人生なんてないですよね。三里塚で闘った人達が、70年代、80年代にいろいろな挫折をして、それからどう生きてきたのか? 彼ら一人一人のインタビューを立体的に重ねていくことで1つの大きな物語、記憶のドラマになっていたら嬉しいですね。
 僕は“あの時代と呼ばれるような時代を生きてないんです。今回の登場人物と話していると、やっぱり激動の時代を生きてきた彼らの熱が伝わってくるんです。それは偶然巻き込まれちゃったということも含めてなんだけど。だから戦争世代の人が戦争時代の映画を作るように、あの時代の映画監督にあの時代を描いて欲しいと思いますね。来年は日大全共闘から50年だし、再来年は安田講堂事件から50年なんです。僕は彼らより下の世代だけど、これを描かないと死ねないという思いはあります。劇映画でもいいと思うんだけど、僕は生身の人間のリアルな声を聞いていく方が好きだから、やっぱりドキュメンタリーとして描いてみたいと思います」
 
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Live info.

『三里塚のイカロス』
シアター・イメージフォーラム他にて全国ロードショー
 
監督:代島治彦 
出演:加瀬勉、岸宏一、秋葉恵美子、秋葉義光、前田深雪、ほか 
撮影:加藤孝信|音楽:大友良英|写真:北井一夫
2017年/日本/カラー&白黒/138分/DCP/5.1ch
 
問い合わせ:シアター・イメージフォーラム 03-5766-0114
© 2017 三里塚のイカロス製作委員会
 
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