ベッド・シーンよりタンクトップ姿が恥ずかしい
──あと、グルーピーの女性(白川未奈)とのベッド・シーンで、真鍋さんが女性と一向に目を合わせないで演技しているのが笑えたんですけど(笑)。
真鍋:何が照れくさいって言うとね、下着姿の女の子よりも自分がタンクトップを着てることなんだよ(笑)。タンクトップなんてさ、俺、人生の中でほとんど着たことがなかったから。ずっと着るのを避けてきたの、自分の人生の中で。着たくないっていうより、似合わへんからね。だからタンクトップを着たのは、小学生の夏休みでセミを採りに行って以来やないかな? 俺の中では、おにぎりを片手にちぎり絵をするイメージやからね。
──それじゃ裸の大将ですよ(笑)。
真鍋:実を言うと最初はタンクトップじゃなくて、バスローブか裸で、って言われてたんだよね。俺はバスローブを着て、ゆうたろうみたいにでっかいワイングラスをくるくる回したかったんやけど(笑)。それが現場ではなぜかタンクトップでさ。
──スタッフと出演者が国際色豊かな作品らしく、日本語のシーンには英語字幕が、英語のシーンには日本語字幕が付く試みもユニークですね。
真鍋:あのバイリンガルな字幕は面白いね。ウチのドラムのMONDOが「なんやねん…」って言うセリフに「Jesus...」って字幕が付いてたのは笑ったけど(笑)。まさかそんな翻訳になるとは知らへんかったわ(笑)。
──カット割りや色味の加減、編集の仕方が洗練された仕上がりなのも印象に残りますけど。
真鍋:カメラをやってくれた人たちはそれなりのプロと言うか、すごく細かいところまでこだわりがあってね。俺たちの演技を撮り直すっていうよりも、カメラの位置を調整するみたいなんが多かった。撮り方の部分ではなかなかアート的な感じになってるね。
──演出は全体的にオフビートな感じで、洒脱な雰囲気もありますね。
真鍋:最初は尺がもっと長くて、サントラに入る曲もそんなになかったんやけど、演技をしていくうちに「もうちょっと短くしてくれへん?」って俺が要望を出してね。それでサントラもちゃんとしたのを作ろうと。ストーリーが単純っていうのもあるし、もっと気楽に観られる音楽映画にしたほうが方向性としてはいいんじゃないかと思って。トニーの性格も最初はすごく根暗で、心に闇を抱えてる感じで、そういうのもちょっとなぁ…と思って。演技も「あんまり元気にしないで」って言われて、どういうことですか? と思って(笑)。これで若けりゃまだいいけど、40を越えたおっさんでバンドは売れてない、心に闇を抱えてるなんて救いがないやん?(笑)
──もっとユーモアに溢れた、笑える感じにしたかったと。
真鍋:そうそう。パロディの要素もあったりとか。(古川)タロヲくんが物語の合間に解説を入れるシーンも最初はなかったんやけど、パロディっぽく説明を入れたほうがもっとわかりやすくなっていいと思ったから俺が提案したんだよね。
──確かに、あの狂言回しは小気味良いアクセントになっていますよね。
真鍋:うん。そういうのが必要だからってお願いして。マイクのやりたいこともわかるけど、それはあくまでマイクの頭の中だけのイメージやから、実際に撮影してみるとイメージと変わってくることもあるんだよね。それに、マイクは日本で一番ネガティブなアメリカ人やから(笑)、脚本もちょっと暗い感じになるわけ。それをそのままやるのは抵抗があったかな。
──真鍋さんは主演を務めながら、半分はプロデューサー的立ち位置も兼ねていたというわけですね。
真鍋:まぁ、音楽的なことも含めてね。あと、俺がメンバーを殺そうとするシーンがあるんやけど、それも最初はすごく陰湿な殺し方やった。恨み辛みで殺すみたいな設定でね。そういうのも俺はキライやから、「シンバル投げて首とれたりせぇへんの?」って提案して(笑)。
──それが見事に採用されたんですね(笑)。
真鍋:あそこで急にパロディになって、映画のトーンが変わるよね(笑)。それも撮影当日にそんな話になって、「いや、それはちょっと…」みたいな感じになったけど、最後は押し切った(笑)。あと、トニーが自分の魂をピーナッツ・バターに売り渡せば有名になれる、それでトニーが命を捧げるっていうシーンも、最初はもっと暗い感じやった。それも俺は納得できなくてね。自分なら魂を売らずに名声を得る、両方を手に入れるなと思ったから、そう話すシーンを入れてもらったんだよね。
──インタビューの続きおよび全文は映画『ゴーストロード』パンフレットに掲載!