NGを出したのは役名と標準語を話すこと
──ニートビーツ演じる《The Screamin' Telstars》というバンドのネーミングは、スクリーミング・ロード・サッチとトルネイドースの「テルスター」からインスパイアされたものですか。
真鍋:そんなとこやね。インスト主体のバンドってことだったから、ジョー・ミークがメンバーを寄せ集めたトルネイドースのヒット曲でいこうよ、ってことになって。
──プライベーツの延原さん演じる“シンゾー”という役名は、もしかして…。
真鍋:今の総理大臣ね。で、そのバンドが《The Mad Reader》。
──“Leader”なら気狂い指導者(笑)。そういうちょっとした風刺も入っているわけですね。
真鍋:そうそう。そういうのは全部、延くんが決めたんじゃないかな。
──映画の待ち時間は相当長いと聞きますけど、その辺は大丈夫でした?
真鍋:すごい長かったねぇ。撮ったのが冬で、外で待つのがめっちゃ寒かった。とにかく寒いのだけは勘弁やったね。昼も夜もずっと拘束されてるからマイクが弁当を買ってくるんやけど、それがなぜか毎日シャケ弁やねん。さすがにそれにはキレたね。「おまえはアメリカ人なんやから、たまにはハンバーグ弁当を買ってこいよ!」って(笑)。
──撮影はだいたいこのスタジオか、近所の月極有料駐車場か、渋谷のミルキーウェイか、って感じですよね。
真鍋:そうそう、全部近場。なんでこんな近場で撮んのよ!? と思ったよね。近所の人とも顔見知りだから、「何かの撮影ですか?」って訊かれて「いやぁ、ちょっとまぁいろいろと…」なんて答えたりして(笑)。
──慣れないお芝居のほうはやってみていかがでしたか。
真鍋:そのむかし、『大阪ブギウギ』っていうニートビーツが主演したインディーズ映画もあったし、興味はあったんだけど、いざ本格的に演技をやってみると、やっぱり俳優さんってすごいなぁ…と思ったね。でもまぁ、俺たちの場合はバンドやってるヤツらが映画に出てる体だから、そこまで演技を練習してやらなくてもいいんじゃないの? って話になって。全員がしっかり演技力を学んでから撮影に入るっていうのもヘンやしね。GS(グループ・サウンズ)の全盛期に、その手のバンドが主演を務める映画がいっぱいあったじゃない? それも全然演技できてないけど、ああいう映画って単純に楽しいし。
──ニートビーツのメンバーも不慣れな芝居に奮闘しているのが伝わりますね。土佐さんも「トニー、大丈夫?」ってのっけから律儀にカメラ目線で(笑)。
真鍋:そんなに心配せんでもええやろ!? って感じだけどね(笑)。でも、あいつはマジメやから。演技はその人の性格が出るよね。
──延原さんはヒールっぷりが板についていて、なかなかの演技力ですよね。
真鍋:うまいよね。なんやかんやと各自のキャラクター設定はみんなこなせたかなと思って。あとね、実は某有名女優さんも出てるのよ。車の助手席から俺に向けて空き缶を投げるシーンでね。それは実際にスクリーンを観て確認してほしいんやけど。
──配役はマイクさんと真鍋さんが協議して決めたんですか。
真鍋:それは最初から決まってた。俺が脚本を見てとにかくNGを出したのは、役名と標準語を話すこと。標準語は絶対ムリやから、ぜんぶ関西弁にトランスレートしてくれ! って(笑)。でもマイクは関西弁がわからないから、セリフは適当でいいってことになったんだけどね。だから台本があるかないかわからへんようになって、セリフはほとんどアドリブに近かったね。大元のセリフはあったけど、それを自分なりにしゃべるって言うか。
──謎の亡霊、ピーナッツ・バター(ダレル・ハリス)と真鍋さんの掛け合いも面白いですね。
真鍋:あれがねぇ、なかなか難しくて何回も撮り直してね。向こうが英語でこっちが日本語やから、間がすごく難しくて。英語と関西弁のやり合いもすごく違和感があるなと思ったけど(笑)。どっちか合わせろよ、みたいな感じやねんけどね。