THE NEATBEATS、THE PRIVATESの延原達治、ザ50回転ズのダニーらが出演する"メイド・イン・ジャパン"のロックンロール・カルト映画『ゴーストロード』。1970年代後半にロサンゼルスで活動していた伝説のパンク・バンド、THE ROTTERSのリード・シンガーであり、現在はラジオ・パーソナリティとして知られるマイク・ロジャースが製作・企画・監督・脚本を手がけた本作は、永遠に色褪せることのない《Perfect Song》を作り出すためにロックンロールの亡霊と禁断の契約を結んでしまうミュージシャンの世にも奇妙な物語を描いた悪戯心満載のパーティー・ムービーだ。クラウドファンディングの支援を受け、2年の歳月を経て完成した本作について、主演を務めたTHE NEATBEATSのMr.PANこと真鍋崇にすべらない話の数々を大いに語ってもらった。(interview:椎名宗之)
死ぬ死ぬ詐欺に遭って映画製作!?
──去年の春、『MORE BEAT SIDE HITS』をリリースした時のインタビューで「映画は夏くらいに公開したい」と話していましたが、ずいぶんと間が空きましたね。
真鍋:内部でモメてね(笑)。モメたというか、外人対日本人みたいな文化の違い、ギャグセンスの違いが出てきて(笑)。
──そもそもどんな経緯で映画の製作が始まったんですか。
真鍋:InterFMのDJをやってたマイク・ロジャースと知り合って仲良くなって、ずっとニートビーツを応援してくれててね。その彼が体調を崩して、入院することになって。命を落とす危険性のある大病を患ったっていうんで心配してたんやけど、そのときマイクに打ち明けられたんだよね。「死ぬ前に一度やっておきたいことがある」って。
──それが映画を撮ることだった。
真鍋:そう。それで冥土の土産じゃないけど、「いいよ、みんなで映画を作ろう」ってことになったわけ。最初はこっちもどこまでタッチするのかわからなかったんやけど。自分たちが出演するのかもわからんかったし。
──でも、土佐さん(Mr.LAWDY)は「『ニートビーツの映画を撮ろう!』とマイクさんから思いがけない連絡があった」と資料の中でコメントしていましたけど…。
真鍋:マイクはね、人によって話してることが違うねん(笑)。でも、マイクの死期が近いってことで、半ばボランティアの精神で協力することにした。普通は脚本を見てから「じゃあ撮ろうよ」ってことになるけど、今回は脚本を見る前に撮影をOKしてね。だけどいざ撮りだしたものの、マイクは全然死なへん。なんであいつ死なへんねん? 死ぬ死ぬ詐欺やな! って話になって(笑)。これで映画の公開日に死ねば、映画の主人公ではなくマイクが伝説になるんやけどね(笑)。
──勝手に殺しちゃダメですよ(笑)。撮影前にお手本にしようとした音楽映画は何かあったんですか。
真鍋:自分の中ではいろいろあったよ。たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいなノリでいきたいとか、低予算の映画だから、ラモーンズの『ロックンロール・ハイスクール』とかロジャー・コーマンが手がけたB級映画みたいな感じならいけるんじゃないかと思ったり。ああいうB級のノリは俺がすごく好きな感じやから。とはいえ、そういう方向性も言い出しっぺのマイクがまず納得しなくちゃいけなかったからね。
──マイクさんはどんなテイストにしたいと考えていたのでしょう?
真鍋:あいつはどうなんやろねぇ。予算があればもっと大きいことをやりたいとは言ってたけども。でもマイクは基本的に根暗やから、とにかく人が死ぬのが好きだよね(笑)。
──当初、脚本の第一稿にはだいぶダメ出しをされたそうですね。
真鍋:最初はまったくおもろなくてね。「こういうのは違う」とか「このシーンはいらない」とか、みんなけっこう文句を言い出して。あと、クラウドファンディングで映画の製作費を募ったんだけど、俺はそもそもクラウドファンディングのシステム自体があまり好きじゃなくて。
──人に頼るのを良しとしないと?
真鍋:そうそう。方法としては全然いいと思うけど、お金を出してもらって撮る以上、絶対やらなあかんやん?(笑) 俺はやりたくなくなったらやらへんっていうのがいいし、やりたくないことはやりたくないから。
──ということは、脚本は二転三転して完成に至ったわけですか。
真鍋:売れないバンドマンの前にアンプの中から亡霊が現れて、「おまえの夢を叶えてやる代わりに命をよこせ」とバンドマンに告げるという、現代版『クロスロード』みたいな大まかな筋はそのままなんやけどね。その大筋は、マイクがこのスタジオ(GRAND-FROG STUDIO)に来て思いついたみたいで。ただ、“トニー”っていう俺の役名が、最初は“タカ”って脚本に書いてあったのよ。“タカ”って、『あぶない刑事』の舘ひろしかい!? みたいな(笑)。ちょうどその頃、『あぶない刑事』の映画もヒットしてたし、それはちょっと旬すぎるぞ! ってことで役名を変えてもらった。
──なぜ“トニー”だったんですか?
真鍋:俺がむかし好きやった映画で、アル・パチーノが主演の『スカーフェイス』っていうのがあって。その主人公がトニー・モンタナっていう名前だったから、そこから取った。日本人なのに“トニー”っていうね(笑)。