ヤングジャンプにて連載され、完結を迎えた『妖怪少女 -モンスガ-』。漫画家・ふなつかずきの手によって描かれた、かわいいキャラクターと嬉しいサービスシーンの数々は今回も健在!! それだけでなく、確かに練りこまれた物語・設定は妖怪好きから見ても読み応え十分。そんな今作はどのように作られたのかを、舞台となった秋葉原で伺いました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A]]
新しい妖怪は都会で生まれる
――まずは、『妖怪少女 -モンスガ-』(以下、モンスガ)連載の経緯を伺えますか
ふなつ:アクションを描きたいという欲求がスタートですね。前作の『華麗なる食卓』(以下、華麗)の調理シーンでも上半身のアクションは描いていたんですけど、作品の性質上で下半身のアクションが描けないというジレンマがあったんです。
――調理は手元を見せないといけないので、限定されてしまいますよね。
ふなつ:そうなんです。全身のアクションを描きたいという欲求が出てきた中で、可愛い女の子も描きたいし、妖怪も好きだしという欲求も出てきて、それらを盛り込んだ『モンスガ』の原型になる読み切りを描いたところ、読者からの反響もよく、次はこれで行きましょうってなったのが経緯です。だから『モンスガ』は足技のキャラが多いんです。
――確かにそうですね。もともと、妖怪もお好きだったのですか。
ふなつ:はい、大好きです。
――第3怪に柿男が出たときに、ほんとにこんなのいるのかって調べたんです。そしたら本当にいて、伝承もあのままでビックリしました。
ふなつ:柿男は第3怪だけで終わる予定だったんですが、描いていてあまりに気に入ってしまって「貴様の尻は何味だ」というセリフを描いた時にレギュラー決定しました(笑)。
――僕は1番好きなキャラなのでレギュラーになってもらって嬉しかったです(笑)。秋葉原の地名の由来もこの作品で知りました。秋葉大権現のことはもともと、ご存知だったんですか。
ふなつ:調べていく中で知りました。最初は舞台を田舎にしようかなとも考えていました。
――妖怪だと自然の中にいるイメージがありますよね。
ふなつ:そう思って色々調べていたら、新しい妖怪は都会で生まれているということが分かったんです。口裂け女・人面犬などの都市伝説は、読んで字のごとく都市で生まれているので逆に都会の方がいいんだなと思ったんです。そのタイミングで、『華麗』の頃に知り合った方から「秋葉原を舞台にした作品を描いてください、もっとプッシュできるので」と言われたこともあって、秋葉原もアリかなと調べていくなかで秋葉大権現のことを知ったんです。もともと、主人公の(西水流)八喜(ヤツキ)を天狗にしたいと考えていたので、これは来たなと。それに電磁波の多いところに霊が集まるとも言われていますし、この街は22時になったら店がほぼ閉まって人もいなくなるというのもいいなと思ったんです。ある本を読んだ時に、「昼は人間の時間・夜は神の時間」という記述があってこれとも繋がるなって。ほかに同じことをやった作品がなかったですし。
――確かに夜の秋葉原は人がいなくなるので、第16怪での「夜は神の時間だからさ」という千歳屋梛(以下、ナギ)のセリフは痺れました。こんなに昼と夜の切り替えがある街はないですから。
ふなつ:さらに秋葉原はあらゆる要素が詰まっていたんです。古い建物もあれば、すぐそばに超高層ビルもあって、川もあって、公園もある。シチュエーションがすごい豊富なんです。
――秋葉原舞台の作品は多いですけど、どうしても電気街・オタク街のイメージが強いですから。言われてみれば、少し裏に入れば住宅街なんですよね。
ふなつ:ほかにもナギを妖狐のキャラにしたいなと考えていたら、地名の由来になった秋葉大権現は白狐に乗っていたという伝説があることが分かったんです。花房稲荷神社は火伏せの神社でもあるし、なんなのこの偶然って。
――そうなると秋葉原でやらないと駄目になりますね。私も聞いてるだけで鳥肌がたってきました。
ふなつ:この偶然のパズルがハマった時の快感はほかでは味わえないです。それが起きると本当に描きたくてしょうがなくなります。
――読者である僕らが受ける新鮮さは、その描き手である、ふなつさんの新鮮さが伝わっているというところもあるんですね。
ふなつ:そうかもしれないですね。
――そういう点ですと、(西水流)虹緒(ナナオ)の設定も僕は読んでいて気持ちよかった点です。物語の主軸でもありますし、幽体離脱している魂という設定は最初から決まっていたんですか。
ふなつ:魂であることや八喜の影響で戻れないことは決まっていましたが、どうしたら戻れるかというのは決まっていませんでした。
――説得力があるものだったので、しっかり決められていたんだと思っていました。
ふなつ:そうでもないですよ。長く続けていくと後付け設定がでてくるのはしょうがないんです。ただ、そこがバレバレだと恥ずかしいですから、そうならないように気をつけています。