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平野 悠 ロフト席亭(Rooftop2017年8月号)

一番、対談したい人と衝撃の風俗嬢……

 

──そんな長い歴史の中で、一番印象に残っている出演者は誰ですか?

 

平野:やっぱり奥崎(謙三)さんだね。ここはしっかり読んでほしいな。俺はみんなみたいに、「奥崎先生、尊敬しています」なんて言わなかったからね。他の人たちは、奥崎さんがちょっと怒ったりすると、「はい! わかりました! 先生、尊敬しておりますっ!」が決まり文句。奥崎問題だけで一冊書きたいくらい衝撃の人だったよ。最初の出所のときは原一男監督の『ゆきゆきて、神軍』がすごく評判になっていたから、奥崎さんは最後の13年の刑務所生活を終えたときにも同じように大勢が出迎えるだろう、自分は英雄になるんだと思っていたら、ほとんど誰もいないし、マスコミは引くし、イベントにも人が少ないし、愕然としたと思うよ。出所記念イベントに杉並公会堂を借りようとしてたんだから。結局、奥崎さんが自分の出所日を間違えてたから実現しなかったけど(笑)。むちゃくちゃだよな。

 

──では、平野プレゼンツでイベントを開催するとしたら、一番再会したい人は?

 

平野:もう、憧れの野村監督も、アントニオ猪木も、総理大臣経験者もみんな出てくれたからな。坂本龍一さんかな。あとは、サザンの桑田佳祐さんと対談したいな。うち(下北ロフト)がなかったらサザンはなかったでしょ? って勝手に言ってみたい(笑)。だって大国民的なバンドだよ。子どもから大人まで知っているサザンに勝てるバンドいないよ。

 

──泣く泣く削ったエピソードはありますか?

 

平野:包丁妻に決まってるでしょう〜…(机を叩きながら)。これは過激すぎて梅造社長から削られたんだよ、抵抗したのに。『ロフトプラスワンゴンクショー』っていう誰でも出られるイベントで優勝した女性なんだけど、全身に包帯を巻いて包丁を持って、司会の男のズボンのチャックをあけてチ◯コを切ろうとしたりさ(笑)。こんな素敵なパーフォマンスは、見たことがないほど過激だった。

 

──ひえー! 実はわたしその方と知り合いなんですけど、そんなこわい現場は全然見たくないです(笑)。

 

平野:そして、だんだん包帯をといて最後はすっぽんぽん。風俗嬢で俳人でもあって、当時の恋人はオウム信者。最高だろ? だから単独イベントを開いたんだけど、最初は「面白い!」って評判だったのに2回目は飽きちゃってだーれも来ないの。そりゃないよな。俺は飽きなかったんだけど。

 

 

 

平野悠に文化勲章を?!

 

平野:最近のトークブームに火をつけたのはうちでしょ? だから俺は本当は紫綬褒章をもらえてもいいはずなんだよ(笑)。今の政権だったら絶対ないだろうけど。これがもっとマトモな政権になったら文化勲章をもらえるんじゃないかな(笑)。

 

──いつも「老いた自分は去るのみ」って言いつつ、新しいことを始めていますけど。

 

平野:テーマ主義者なんだよ。何か次のテーマがないと生きていられないの。今は、「ロックバーはあるけどロック居酒屋やロック喫茶ってないよな」って思って、そういう店を作りたいと思ってる。いい音楽を一人で聴いてもつまんない、人がいて同じ空間で聴くっていうのとは全然違うんだよ。映画だってそうだろ? 見たあとに今日の映画はどうだったねって話をするでしょ。そういう場を作りたいんだよ。音楽に詳しいお客さんがいたら、その人にレクチャーしてもらえばいいんだから。

 

椎名:そういうところは初期のロフトプラスワンと同じなんでしょうね。

 

平野:ひょっとしたらめちゃくちゃ流行ってチェーン展開とかしてさ、コメダ珈琲みたいになるかもよ。

 

──そしてロック居酒屋ブームが全国に起こって文化勲章をもらう、と。

 

 

ライブハウスと社会との関わり

 

平野:時代は若い人のものだから、自分が場所を作ってもあとは若い人に繋げていかないと意味がないと思っているわけ。

 

椎名:9.11でNYに行ったり、バグダッドに行ったり、3.11のあとに反原発デモをしたり、ライブハウスの本なのに社会運動の話も出てきますよね。

 

平野:ライブハウスっていうのは、社会と関わり合って生きているし、文化のるつぼなんだから。開店してライブやって終わりじゃなくて、そこからが始まりなんだから。自分たちも一緒に参加をしていくっていうのが大事で。だって、出演者は本を作ったり、音楽をしたり、アピールしたいことがある人たち、いわば運動者、活動者なわけですよ。そういう人たちとライブハウスも一緒に行動をしたいと思っていて、それが反原発デモだったり、下北沢の「Save the 下北沢」だったり、小倉あやまれデモだったり…いや、あれは違うな(笑)。他のライブハウスに言いたいのは、社会運動に参加しなくちゃだめだよって。儲けだけじゃダメ。自分たちも一緒に参加をしていくっていうのが大事で。だって、出演者は本を作ったり、音楽をしたり、アピールしたいことがある人たち、いわば運動者、活動者なわけですよ。そういう人たちとライブハウスも一緒に行動をしたいと思っていて、それが反原発デモだったり、下北沢の「Save the 下北沢」だったり、小倉謝れデモ…あれは違うな(笑)。他のライブハウスに言いたいのは、社会運動に参加しなくちゃだめだよって。ライブだけで終わってはダメって。

 

椎名:なんでそんなに儲けることに興味がないんですか?

 

平野:俺は中小経営者がよくやっているような、銀座のバーで一晩に30万使うとかできないんだよ、電車が動いているのにタクシーに乗れないし。もう貧乏人根性丸出し。

 

──今まさに、100円ショップのスリッパが壊れたのを両面テープで直して履いてますもんね。

 

平野:アハハハ(笑)。やっぱり会社を大きくするよりも、自分の会社で働いている人に安心して生活が送れるお給料を払いたいし。

 

──最高の経営者じゃないですか……!

 

平野:そうだよ。平野さん頑張ってきたんだから。でもこれだけは言いたいのは、今の俺はもう未来に属することは考えたくない。未来なんていいとこオリンピックまで。スポーツ観戦は趣味だから、「ニッポンチャチャチャ」だよ(笑)。オリンピックは日本が潰れようとも、断固やってほしいね。

 

──でも今後は作家になって、どんどん本を書くって言ってましたけど。

 

平野:それで、文学賞に投稿するの。今年の夏はまた100日以上をかけてピースボートに乗って世界旅行に行くから、船の上で恋の小説を書きますよ。そしてロフトブックス以外から本を出す(笑)。

 

──また断られちゃうようなら、大手出版社にデモしましょう。

 

平野:俺はもうややこしい話は嫌なんだよ(笑)。次の小説は誠心誠意書いて、賞に応募するんだから。

 

 

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▲左から:平野悠、鈴木邦男、園子温

 

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▲左から:加藤梅造、平野悠、鈴木邦男、枡野浩一、椎名宗之

 

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▲左から:加藤梅造、平野悠、鈴木邦男、DJ急行、椎名宗之

 

本文中の写真:2017年7月18日、ロフトプラスワンで開催された『「TALK is LOFT 新宿ロフトプラスワン事件簿」刊行記念パーティー』より

 

TALK is LOFT
新宿ロフトプラスワン事件簿
平野 悠 著

四六判/並製/312ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-907929-22-0 C0076
ロフトブックス 刊
全国の書店、ロフトグループ各店舗などで絶賛発売中!!

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 1995年7月、世界初のトークライブハウスとして新宿にオープンした『ロフトプラスワン』。音楽、映画、文学、マンガ、アニメ、お笑い、アイドル、エロ、政治経済、社会問題など、ありとあらゆるテーマのトークイベントを20年以上にわたり開催し、“タブーなき言論空間”としてトークライブの文化を日本に定着させてきたサブカルチャーの総本山だ。
 そんなロフトプラスワンの黎明期に巻き起こったスキャンダラスな事件の数々を、創始者である「ロフト席亭」こと平野 悠が透徹した視点と筆致で自ら語り尽くした一大回想記。
 「新宿サブカル御殿」(中森明夫)、「オタクの聖地」(唐沢俊一)、「乱闘、襲撃酒場」(鈴木邦男)、「闘鶏場」(藤井良樹)、「文化のドブさらい」(リリー・フランキー)などと呼ばれ、そのテーマが面白そうなことなら有名無名にかかわらずどんな人にでも表現の場を提供し続けてきたロフトプラスワンはどんな経緯でオープンに至り、サブカルチャーの発信基地となっていったのか。波乱含みで筋書きのないトークライブの醍醐味とは何なのか。90年代の日本のサブカルチャーを語る上でも資料的価値の高い一冊。

Live info.

2017/08/09 Wed
平野悠×吉田豪×久田将義
「タブーなき言論空間「ロフトプラスワン」の歴史、事件を語る」
『TALK is LOFT ロフトプラスワン事件簿』刊行記念
出演 :平野悠(ライブハウスロフトグループ席亭)
ゲスト:吉田豪、久田将義
時間 :20:00~22:00 (19:30開場)
場所 :本屋B&B
世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F
入場料 _ 1500yen + 1 drink order