「やわらかスピリッツ」にて好評連載中のクリスタルな洋介による漫画「お酒は夫婦になってから」。連載当初から各所で話題となり酔デレ女子たちの可愛さ、水沢千里・壮良の甘すぎる夫婦生活。このしふくまみれの作品はどのようにして生まれ映像化されるのかを伺いしました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A]]
ヒロインは酔ったら可愛いくなる酔いデレがいい
――お酒を扱う作品ですとBARなどお店が舞台になることが多いですけど、“お酒は夫婦になってから(以下、お酒)”は、なぜ家飲みを中心にした作品にしたのかなど、連載が始まるきっかけを伺えますか。
洋介:きっかけは茂木さんからの連絡です。話をもらって、できることはなんだろうと考えたときにラブコメだと思ったんです。以前に中学生が付き合ってドタバタするという作品を描いていたので。
――“オニデレ”ですね。
洋介:はい。中学生を描いて次どうするってなった時に、年の差がある夫婦ものはどうかなと思って持っていったんです。その設定が男らしい奥さんと可愛らしい旦那さんでした。
――“お酒”の原型になっているものですね。
洋介:最初は “雄嫁(およめ)さん”ってタイトルでした(笑)
ひらさわ:面白いですね。
洋介:面白いねってなったんですけど、いろいろ問題があって。揉んでいく中で、ヒロインは酔ったら可愛いくなる酔いデレがいいんじゃないかって話がでて、そこから今の形ができあがってきました。
茂木:僕は“オニデレ”も担当していたんですけど、“オニデレ”の二人の数年後というイメージが一番向いているなと思ったんです。連載を準備している当時は映画や連ドラも夫婦ものが多くて、その中には夫婦関係がいかに絶望的かを描いていた作品もあったので、その真逆をやりたいと思ったのもあります(笑)。
――結婚に希望をということですね(笑)。
茂木:“オニデレ”の(今本)正と(育島)紗夜ならそれができると思ったんです。先生はコメディーを描かせたら超一流なので。
洋介:いやいや。
茂木:もう一つネタがあったほうがいいなと思って、流行りのグルメ要素を(笑)。でも、ヒロインが単に食レポしてるのではなく「酔ったらデレる」というキャラ要素とグルメ要素がしっかり紐付いてるのがいいなと思いました。
はたなか:いや、普通にファンとしてなるほどって思っちゃいました。
洋介:実は連載を一緒にするのは久々だったんです。
茂木:”オニデレ”以来ですね。”お酒”は「外ではキャリアウーマン。家ではデレ妻」という設定を前面に出す方向性で始めたので、序盤は(水沢)千里のキャラが定まらず、結構苦労しました。なので、1話のアフレコではご迷惑をおかけして・・・。
ひらさわ:とんでもない。
洋介:僕も最初は苦労して、連載の中で掴んでいきました。
茂木:先生はデビュー当初からキャラを描く才能がずば抜けているので、魅力的かつ自然体なキャラクターを一発で描いてくれるんです。でも、そこからもう一歩踏み込んだものが欲しいなと思っていました。
洋介:グルメやお酒が好きな人がそこを入り口にした上で、ハマってもらえないと厳しいだろうなとは思ったんです。このタイトルもよかったんだと思います。
茂木:あと先生の作品は、どんなに酔っ払ってても下品にならず、どこか上品なのが素晴らしいですよね。
――確かに艶っぽさはありつつもいやらしさはないですからね。いろんなキャラクターが出てきて酔いますけど、みんな可愛いいですから。そんな中でも各キャラが立っているので、読者は誰か好きなキャラがいますね。
はたなか:茂木さんは(白石)ユイが好きなんですよね。
茂木:ユイ大好きです(笑)。
コンビニでも買えるものにしようと決めていました
――僕もです(笑)。ちなみにおふたりはお酒を飲まれるのですか。
茂木:実は全然飲めないんです。
洋介:僕は大好きですけど、弱いです。500ml缶を3本飲んだらちょっと。
ひらさわ:全然弱くないですよ(笑)。
茂木:そこは作家さんが好きじゃないと絶対ダメですからね。レシピに関しては完全に先生任せ。僕はカクテルセットを送っただけです(笑)。
――ということは作中で出しているお酒は実際に作っているんですか。
洋介:作ってます。
――個人だと結構大変じゃないですか。
はたなか:でも、家で作れるものばかりですよね。
洋介:そこはコンビニでも買えるものにしようと決めていました。高級じゃなくても美味しいんだということを読者の方々にも共有していただきたかったので。
ひらさわ:B級のものの方が美味しかったりしますからね。
――結局、戻りますよね。お酒もそうですが、作中の料理も、すぐ手に入って調理も難しくないから再現しやすいですし。
茂木:僕、よしなが(ふみ)先生の“きのう何食べた”がすごい好きなんです。あの作品は二人の食費が月2万5千円っていう予算も決まっていて、そういうところも含めて、よしなが先生は生活を描く達人というか・・・ 素晴らしいなと思っていて。
――確かにそうですね。
茂木:高級食材がいきなり出てくるっていうのは現実味がなくて嫌だったので、コンビニやスーパーで手に入るものにしようってことは二人で話して。
洋介:作中のお酒・料理は真似しやすい敷居の低さを守るようにはしました。
はたなか:8/9のイベントでは、会場でも出してもらえるそうなので。
――正直に言ってしまうとほとんど常備しているお酒で出せてしまいます。
洋介:そうでしょうね(笑)。読者の方からも実際に作ってみましたという感想をいただいています。特にカウボーイがダントツで一番人気です。簡単ですしね。
はたなか:僕もやりました。ウィスキーに牛乳を入れるって発想がなくて、ほんとにラムレーズンの味がしてビックリしました。
――そこが作品の魅力でもあります。ちなみに作中の話で実体験をもとにされたものはあるんですか。
茂木:下戸の話の回は、僕の学生時代の苦い思い出を(笑)。
洋介:そうですね(笑)。