“月9”というキーワード
――原作は6巻まで出ていますが、好きなエピソードはありますか。
宅野:キャンプで蛍を見るシーンも好きですけど、やっぱり1話ですね。公園でのネジと美咲のやり取りです。小学校の時に出会ったふたりの運命性や政府通知などのいろんな要素がてんこ盛りなので。
柴:僕も1話ですね。宅野さんが1話を作っている時にドラマの『ロングバケーション(以下、ロンバケ)』を意識したと言っていたので、それもあるかもしれません(笑)。
宅野:ライターさんとの脚本打ち合わせの時に“月9”というキーワードが出ていたんです。そこで『ロンバケ』を押していたので見たんです。
柴:あんなに流行っていたのに、宅野さんはリアルタイムで見てなかったらしいんですよ。
――本当ですか、日本にいなかったんですか。
宅野:恋愛モノを見てこなくて、最近見ました。『ロンバケ』6話のキスシーンで、カットが切り替わるとネオンがきらめいていて主題歌が流れるんですけど、そこがかっこよくて凄いなと。
――それはストーリーというよりも演出ですね。
宅野:もちろん脚本もいいんですけど、そういう演出がキレッキレで。参考にさせていただきながら作っています。
――確かに1話もそうですが単行本3巻で莉々菜の恋心に美咲が気づくシーンも“月9”ぽいですね。
宅野:そのシーンは美咲のモノローグなんですよね。全編通してモノローグは基本ネジしかないんですけど、ここだけ違うんです。
柴:本当だ。モノローグ多いけど、基本ネジだ。そこに気づくとはさすが監督。
宅野:先生に話を伺ったところ、美咲が物語のコアになっているように感じたんです。
――そこはタイトルの“嘘”の部分にも繋がっているのかもしれないですね。他に気になる部分では、仁坂が教室で寝ているネジにキスをしたシーンですが、どう考えられていますか。
宅野:そこは、あえて言いません。物語の核になる部分ですから。
柴:あそこはWEB連載ではなかったシーンを単行本で追加したそうで、すごく大事なシーンなんですよ。話せるのはこれくらいですね。
――気になりますね。そこはアニメも含めこれかの展開を楽しみにしています。
宅野:メールのノイズのシーンも含めて、物語のもつ“謎”の部分が読者の方に支持されている要因の1つでもあると思います。
柴:キャラの魅力も含めて想像の余地があることがこの作品の大事な部分ですね。
――そうですね。話は変わりますが、ヒロインの二人だとどちらが好みですか。
宅野:物語のキャラクターとしては美咲の方に惹かれます。二面性のある部分は描きがいがあるので。
柴:難しいですね。二人ともよくわからない女の子ですよね(笑)。作中で莉々菜がネジに「美咲とキスしなさい」ってよく言うなって思いますし、美咲もそれで本当にしますから、よく目の前でキスするよなって。あえて選ぶとしたらまだわかりやすい性格の莉々菜になるのかな。美咲は裏で何を考えているかわからないところがあるので。
――美咲は特に表に出せないことが多いですからね。そこは作品のキーになる部分でもありますから。ちなみに “ゆかり法”に関してはいかがですか。
柴:政府通知が来て結婚が斡旋されるんだから素晴らしくないですか。仮にすごくモテない男性でも結婚相手を政府が押してくれるからいいと思います。
宅野:僕もアリです。
――そうですか。私は人見知りなので知らない人といきなりというのは厳しいですね(笑)。
柴:離婚率も低いということですから、性格に関してもちゃんと調べてるんだと思いますよ(笑)。
――それならいいですけど(笑)。政府が相手を見つけるというのは面白い発想ですし、想像も膨らみますよね。
柴:製作委員会からは、海外からの問い合わせも多いという話を聞きました。
――確かに国を問わずに楽しめる作品ですね。TVアニメ『恋と嘘』は7月からいよいよ放送開始となりますが、意気込みをお伺いできますか。
宅野:今回は恋愛のキラキラ感を表現できればと思っていす。演出もそうですが、色使い・光の表現を絵に取り込んで、女性が見ても綺麗な恋愛を楽しんでいただける作品になっていると思います。また、男性はネジの気持ちになって、どっちを選ぼうかなと悩んでいただければ。是非、最後まで楽しんでいただければと思います。
柴:大体言いたいことを言ってもらえましたね。“ゆかり法”は通知が来れば宅野さんでも結婚できるかもしれないという素晴らしい制度です(笑)。是非、ネジくんたちがどうなるのかを楽しみに見て欲しいです。