元Psysalia psysalis psycheのshion(Vo、G)、元Psysalia psysalis psyche、元Lillies and RemainsのKousuke(Dr)に紅一点元SOFTBALL、元THE BABYSのHALUNA(B)が加わり結成されたロックバンド、COYOTE MILK STOREが自身のレーベルYELLOW WITCH RECORDSを立ち上げ初のフルアルバムを5月17日リリースした。グランジ、ストーナー、パンク等の影響を自身達のフィルターで消化し、日本から世界へと通用する独自のオルタナティブサウンドを構築。流行や馴れ合い、そういった現象を完全に無視した彼らの、重苦しく耳に残るサウンドと日本語詩は現代の音楽シーンの起爆剤となるであろう一作に仕上がっている『GAZE in a DAZE』の発売を記念してRooftop初登場COYOTE MILK STOREのshion君にアルバムのことやバンド活動についての話を聞いた。そこには音楽にまっすぐ向かうバンドマンの姿があった。 [interview:柳沢英則(下北沢SHELTER&新宿LOFT)]
やりたかったものを気合い入れて全部作った
—COYOTE MILK STOREはRooftop初登場なので、まずは結成の経緯を訊かせてもらえる?
shion:前のバンドPsysalia psysalis psycheが終わって、早く新しいバンドをやりたかったからかな。一番最初にやりたかったのがVeni Vidi Viciousの入江良介(現在は脱退している)だったんだけど、誘ったら「やる」って言って。ドラムはどうしようってなったときにサイサリの初代のドラムのコウスケを誘ったら「やりたい」って言ってくれて。ベースのHALUNAはその時Scott & Riversのサポートをやっていて、前からハルちゃんも一緒にやりたいって言ってくれたんだけど、良介は最初「ベース女かあ」とか言ってて (笑)。でもたまたまライブを見に行ったら「かっこいいじゃん」ってなって。だから一緒にやることになった。2013年の夏ごろだと思う。
—レコーディングはどうだった?
shion:長かったね。トータルで録りだけでいったら2週間ないぐらいかな。曲も最初8曲ぐらいしかなかったけど、二桁は入れたかったから必死に頑張って作りました。
—今回のアルバムは全国流通ってことも含めてCOYOTE MILK STOREにとって名刺代わりの大事な作品になると思うんだけど、手ごたえはどう?
shion:かなりあるよ。相当いいものが出来てると思うけど…どうなんですかね、1枚目だから実はそんなに期待はしてなくて。この次の作品も大事になってくると思う。
—5/17にリリースだけど、itunesで先に配信をしてるんよね?そっちの反響はどうだった?
shion:そこそこ、だね。17日の盤リリースの後にもう少し伸びると思うから。今回Spotifyと定額で聞けるApple Musicとでやってる。すぐ落とせるし、興味持ってくれてる人には広がりやすいよね。そこでの数字は結構あったから。初めてやった割には、という感じかな。
—アルバムを通して全体のコンセプトとかある?
shion:ないない(笑)。コンセプトっていうよりも、1枚目だから今までやりたいなって思ってたものを、気合い入れて全部作ったって感じ。前の4曲入りもそういうつもりだったけど前は、こういう曲もやりたい、ああいう曲もやりたいってのが3,4曲あって入れて。でも今回に関しては自分のルーツの部分、パンクとかグランジとかストーナーとか、そういうのを軸にやりたいなってのが一番あったから。オルタナっぽい感じが好きな人たちは、それをめちゃくちゃ感じると思う。こういうことをやってるバンドはあまりいなかったと思うし…いるけど、ここまでポップな要素もあるバンドはないと思う。そういう意味で、手ごたえはある。
—5曲目とか10曲目とかバイオリンとか入れてたよね。今までライブ見ててそういう印象…壮大さというか、がなかったんだけどあれは最初から意図して入れたの?
shion:ふんわりだけどね。譜面に起こせるわけじゃないから、ある程度任せてたけど。友達のバイオリニスト呼んで「この曲とこの曲に入れたい」ってのを話してあらかじめオケで録ったのを渡してフレーズを考えてもらって。当日に「こういうイメージで弾いて欲しい」って言ってみたら、そんな良くなくて(笑)。で、任せてやってもらったら結構イイ感じになったんで。向こうはプロだから任せて正解だった。
—今回のCDはかなり手作り感があるよね。ジャケットのグラフィックアーティスト、Kousuke Shimizuさんってどういう人?
shion:きっかけは、仲のいいファッションブランドのKIDILLのデザイナーのヒロさんに紹介してもらって。
—キネマ倶楽部のKIDILLのファッションショーでライブもやってたよね。
shion:そうそう。そこでやったときにコウくんとかが見てくれてて。ヒロさんがコウくんを推してくれて、ハードコアとかルーツにあるような人だから、作品見たらかなりかっこよくて。それで依頼しました。
—どういうきっかけで付き合いが始まったの?
shion:HALUNAが知ってて。COYOTE MILK STOREのライブにも来てくれて、話してみたらPsysalia psysalis psycheのことを好きだったそうで。何度かライブも来てくれるようになって。まだ前の4曲入りの音源しかなかったときに呼んでもらえたからびっくりしたし、カッコ良い音やアートにちゃんとアンテナ張ってる人だから、純粋に嬉しかったですね。
—あのイベントのライブはCOYOTE MILK STOREだけ?
shion:そう。ファッションショーが大体15分ぐらいだからそれに合わせてセットして。
—Psysalia psysalis psycheを経てCOYOTE MILK STOREをやってるわけだけど、何か変わったこととかある? 曲作りなり活動方針なり。
shion:まぁ100%俺がやりたいことをやってる、ってとこが違うかな。もちろん今のメンバーの意見も聞いてるし、独裁的にやってるわけじゃないんだけど、それをみんながカッコイイって言ってくれてるから。俺の自由度はかなり高いかな。
—さっき言ってたアルバムに込めたグランジ感が、最近NIRVANAみたいだなって感じがしなくなってきたよね。
shion:だってそれはさぶいじゃん(笑)。
—NIRVANA以外でも好きなバンドって何? サウンドガーデンとか?
shion:このアルバムを作っててやっぱり好きなんだなって感じたのがNIRVANA、Queens of the Stone Age、The Mars Volta、PJ Harvey、The Vines…ぐらいかな。
—4曲入りの方で言えば『Aoite』とか、ああいうメロディアスなものを聞く側は期待してるのかなって思うけど。
shion:皆に言われるよ。本当はああいうのもやりたいんだけど、ああいう曲はこのアルバムには入れられなかった。散らかった感じというか相当浮いちゃうと思う。オルタナバンドだっていう基盤を一度作っておきたかったから。
—確かに浮いちゃうかもね。今後2作目とかで…。
shion:うん、今後の作品とかで違う面として見せることはあるだろうね。そういう方が魅力的なのかなって思うし。今回で言えば、あのアルペジオっぽい曲、バイオリンも入った曲、あれも結構異質でしょ? 俺は最初入れたくなかったんだよ。でもコウスケが「入れた方がいい。これが好きな人も多いと思う」って言うから。本当はもっと良いメロディを付けられたと思うんだけど、バイオリン入れたらめちゃくちゃ良くなったね。
今回は本当に感謝の作品
—今回PVは2本作ったんだよね。
shion:猫田ヒデヲ君が監督のものが、先に公開してる『EVIL LUCK』だね。FOX LOCO PHANTOMのベーシストで。THE TEENAGE KISSERS(現在は活動休止中)ってバンドも最近までやってて。俺のこと好きって言ってくれてて。本当にたまたまレコーディング中に会う機会があって「何か手伝わせてよ」ってことになって撮ってもらった感じかな。
—もう一人の加藤マニさんはどういう人?
shion: 既に人気もあって、めちゃくちゃ撮ってる人だけど、これからもっと有名になると思うよ。有名な人もマイナーな人もたくさんPV撮ってるから。彼もPsysalia psysalis psyche時代から俺のこと好きって言ってくれて、協力しますってことになって。売れっ子だね、忙しいもん。それが発売日に公開される『RISE ABOVE』だね。
—今回は色んな人が協力してくれたみたいだね。
shion:そうだね、今回は本当に感謝の作品というか。