4月20日に下北沢SHELTERでの自主企画ライブ【金襴緞子】(w/ GEZAN・the twenties)を控えた蛸地蔵。それぞれにギラギラとした美学を持つメンバーが集まった蛸地蔵というバンドが、自主企画ライブで他のバンドと新たな化学反応を起こしていく。そんな"遊び場"を作り出そうとする彼ら独特の音楽・アートの根源は一体なんなのか!? 今回、Drふなもと健祐とBaサクライマリィに話を聞いた![interview:川本 俊、安 佳夏(下北沢SHELTER)]
軽い気持ちで入った大学のサークルで
--Rooftop初登場になりますがバンド結成の経緯など教えて下さい。
ふなもと:そもそも僕とギターの上之蛭子が高校の同級生で、同じ大学の同じ学部、同じ学科にたまたま進学しまして。僕は大学で全く今まで経験したことないことをやろうと思って軽音サークルに入って、ドラムだったら需要があるから初心者でも受け入れてもらえるかなっていう軽い気持ちで始めて(笑)。そうしたら、同じサークルで高校の同級生、友達というほど仲良くはなかったけど顔見知りだった上之蛭子と出会ってしまったんです。そのまま今に至ります。
--で、サクライさんは後から加入されたんですよね。
サクライ:僕は僕で他のバンドをやっていて、高円寺周辺に遊びに行くことが多かったんですけど。好きなバンドがよく出演する東高円寺のU.F.O.CLUBで蛸地蔵を何度か見て気に入って、活動拠点が関西だった頃から客として遊びにいってたんです。で、(蛸地蔵が)上京してきた時に共通の知り合いのバンドマンに紹介してもらって…。そこから一緒に音を出して遊んでみようか、というのを何度か繰り返して、一昨年の夏の終わりころ加入しました。そこで、初ステージで前にやってたバンドと蛸地蔵が対バンするという(笑)。…初ライブでツーステージだったんですよ。
--引き渡しライブみたいな(笑)。そのバンドは?
サクライ:その後にすぐに解散して。そこからは蛸地蔵一本です。
ふなもと:それだけ聞いたら俺らが引き抜いたみたいになるけど(笑)。
サクライ:蛸地蔵に加入したから、とかは全く関係はないんですけどね。
ふなもと:彼がもともとやってたバンドも蛸地蔵とは方向性は違うけどすごく面白いバンドで、僕らもリスペクトというか「一度、一緒にスタジオ遊びやろうよ」となったわけです。そしたら彼と音を出した時にそれまでのどのベーシストよりも「あ、彼だ!」と思って、その後なんとかして彼を引っ張り込もうぜと蛭子と僕で話をして。「もっと音を出してセッション遊びしようよ!」それでスタジオ入って「楽しいね!」なんて言って。んで、ある時「…でさ~!実は… 」って、告ったんです(笑)。何回かセッションというデートをして、告るっていう。
サクライ:告られましたね(笑)。それで、お互いのバンドの話とかして。前のバンドが1曲20分近くあるような曲や、ミニマルっぽい感じだったりと全く別物だったんです。当時、僕が見てた頃の蛸地蔵って今より歌謡っぽさが強く印象にあって、イントロ、AメロBメロがあってサビ、みたいなイメージだったから、僕がもともとやってたバンドとは全然タイプが違ってたんですよね。
--ではサクライさんが入ってからバンドの方向性とかもちょっと変わっていった感じですか?
ふなもと:今はマリィ君が色づけというか、バンドの可能性をすごい広げてくれたなという感じがしていて、もともとこれしかできなかったというわけではないけど、結果的に展開がきちっと決まっている歌謡曲っぽくなってたんですよね。でも彼は、それもできるし、いま僕らがやってるようなことにも向かう力をくれるというか。彼が入ったら僕らはもっと面白いことをなんでもできるようになるな、っていうのがセッションを繰り返してわかったんですよね。彼のプレイヤーセンスにビビッときたので、ラブコールした、と(笑)。
趣味はバラバラ、共通するのはアート性
--アングラな空気漂う作品が魅力だと思うのですが、何か影響を受けた音楽なり作品なりあれば教えてください。
ふなもと:3人が影響を受けたものは…俺が今パッと思いついたのはPinkFloydのファーストですかね。
サクライ:そもそも前にやってたバンドのときもPinkFloydとかKingCrimsonとか…日本でいうと四人囃子とかも好きで、でも結局みんな趣味がバラバラだったので、それぞれの好きなモノを持ち寄って、という感じ。蛸地蔵に入ってからもそれはやっぱり同じですね。
ふなもと:名前が挙がってるのはほぼプログレばっかりやけどね(笑)。まあでもプログレっていうよりは、アート、ですかね。サウンドとか曲の構成とかによるアート性っていうものが僕ら3人の中で最もヒットする項目です。
全く違うタイプの3人が起こす化学反応
--PVのアートワークとかもサイケな感じですけど、どういったコンセプトで作っていますか。
ふなもと:僕らが思っていることとか考えていることを、余計な脚色をせずなるべく純に出そうとすると、サイケになるんですよ。1人1人が影響を受けたものはバラバラなんですけど、そこから全くタイプの違う3人が集まって化学反応を起こすと、ああいうアートワークになる。
サクライ:僕は蛸地蔵に対して、和…というとニュアンスが違うけれど、日本的なイメージが昔からあって、そこにサイケデリックの代表的な原色の渦巻いているようなイメージとかが…単純に、そういうのが好きなんでしょうね。それらが混ざって、ああいうビデオやアートワークになってるんだと思ってます。蛭子くんの考えの中のアート性や、蛸地蔵が持っているイメージみたいなものは3人内でもそんなにぶつからずに、これかっこいいからやろう、みたいな感じで。
ふなもと:実は僕ら普段からプライベートで一緒に遊んだり、っていうのがあんまりないんですよ。友達的な遊び方をそこまで3人ではしないんですけど、なんやかんやお互いのことが好きなんですよね。作品は、蛭子の持っている美意識が最も根底にあって、その上でお互いがかっこいいと思うものが共通している。蛭子が生み出したものをどう大きくしてやろうかという思いがすごく強いので、いかに面白くやっていくかということを常に考えていますね。プレイにおいても表現においても、作品を作る時も。
--次の質問がライブ時に心がけていることはありますか、というものだったんですけど(笑)。そういうことを心がけている、という感じですかね。
サクライ:僕も蛭子くんの持っているものとか美意識とかをすごく信頼しているし、その上で今、巡り合わせで自分がメンバーとして選ばれたんだから、やっぱり自分だからこその反応も起こしていきたいです。例えば最近やってる新しいこととして、ライブの時に曲をリアルタイムにアレンジして演ったりするんですが、あれは面白いですね。一般的にはギターボーカルがフロントにくると思うんですけど、ベースだから、とかそういうことで引っ込まない。3人が各々魅力的なバンドとして、ステージ上で一緒に演奏してはいるけど、持っているものを全力でぶつけ合っている緊張感、っていうのを生で感じられることがライブの魅力だと思うし、ヒリヒリしながらやってます。
ふなもと:最初の話に戻るけど、それさえもできちゃうのがマリィ君。
サクライ:持ちあげますねえ(笑)。
ふなもと:蛭子の世界観を表現するコマというわけではなくて、むしろ今マリィ君が言ったことができるのが今のこのメンバーでの蛸地蔵だと思います。…どんだけ自分たちのこと大好きなんだよ(笑)。
サクライ:じゃなきゃバンドやってないですよ。
ふなもと:だから、親友というよりは戦友ですね。馴れ馴れしくしないけどいざとなったら背中を預けられるような。
スリーマンのイベントを企画する意味とは
--4月20日にはシェルターで蛸地蔵企画がある訳ですが、どういった日になりそうでしょうか。
サクライ:なんというか…始まりから終わりまで、ものすごく熱いんじゃないですかね。GEZANもthe twentiesもすごくリスペクトしている2組だし。だからと言って仲良しこよしだけでやるために呼んだ訳ではないので、極々でぶつかりにいきたいと思います。
ふなもと:スリーマンのイベントにこだわって去年から企画をしている理由が、普段だったらこのバンドとこのバンドのお客さんってそうそう出会わないよね、っていうのが間に僕らが入ることによって繋がって、一つのイベントになるから。普段だったら出会わないような人たちが出会ってお互いの良さを知ってくれるっていうのが、僕たちの狙いで最も嬉しいことですね。
サクライ:そういう場所、遊び場として仲間で集まってワイワイやるライブハウスの規模が、どんどん大きくなっていったら面白いと思っています。
ふなもと:自分たちが本当に好きでリスペクトできて、でも負けたくないという思いを持てる相手とこうして一緒にイベントやらしてもらえるっていうのが何よりも僕らミュージシャン冥利につきるので、4月20日はそういう日になると思います。