Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー小林司(妄撮P/ミスiD実行委員長)(Rooftop2017年4月号)

女の子目利き師

2017.04.01

 「女の子目利き師」と呼ばれる小林司。編集者になるキッカケや、4月1日にエントリー開始となったミスiD2018応募者に求めることについてお話を伺った。[interview:日野弘美(NAKED LOFT)]

父親が編集者だったんです

 

―本が好きで編集者になろうと思ったのですか

 

小林:いいえ。父が経済誌の編集者をしていたので、もともと家に本がたくさんあったんです。その中でも歴史小説、特に吉川英治文庫にどハマりして。実はこれ講談社なんで、よく考えると運命ですよね(笑)。両親が離婚してから父とはほぼ会っていないんですが、本の話もせずにいなくなっちゃったので、それだけは心残りですね。三国志や水滸伝は特に好きでキャラクターの相関図を書いたりもしてました。小学生の時から読みあさっていたので、本読み癖はその時から付いたのかもしれません。本以外にもTVやラジオをたくさんチェックしていました。たくさん好きなものがある中でも、特に歌の番組が好きで、いくつかAM番組のトップ20くらいをメモして、毎週それを集計して自分のオリジナルの順位と選評をつけてノートにつけていたりと、小さい頃から編集みたいな遊びをしていたんですよ。だから本が好きだからというよりは、編集するということが好きだったんです。

 

何かを作ると「何かの人」になるのが怖かった

 

―小林さんの一番好きなことって何ですか

 

小林:音楽もファッションも好きだったし、映画に関しては仲間と8ミリで撮るくらい好きでしたが、好きだったからこそ自分にはそんなに才能がないということも分かりました。才能がないのに「映画の人」になって一生を捧げるのも怖かったです。集中力もないし、気も散るし、他のものも好きで、自分の軟弱な部分や弱い部分も分かっているから。音楽を一生作り続けるのも、作家になる才能も勇気もなかった。それぞれ好きなジャンルではあるんですが、どこにいても「ここじゃないかもしれない」と居心地が悪く感じたり、ジャストフィットできないところが、逆に編集が向いていると思ったんですよ。編集の作業は「集めて編む」ことなので、何かと何かを合わせて生み出すことですからね。ゼロから作り出すには根気がないんです。クリエイティブ的なヒラメキや狂気もないといけないですし。僕はギリギリの常識的なところがあるので。狂気もあって常識的なところもある人は編集をした方がいいんですよ。人よりはいろいろと見ているし、興味がないジャンルはほぼないし、初恋がヤリマンで浪人したり、新宿の映画館でバイトをしてあまりにそこに居続けて2年留年したり…自分の責任でずっと人生痛い目にあってるので(笑)。

 

―雑誌の編集は希望の部署だったのですか

 

小林:会社を受けた時、本当は漫画の部署に行きたかったんですよ。その時はモーニングで『課長島耕作』や『沈黙の艦隊』の連載があったり、中国の作家さんが描いていたりして、めちゃめちゃカオスで。当時、自分が好きだった音楽や映画を何でも取り入れて仕事にできると思っていたんですが、入社時には漫画熱も冷めていたりして…(笑)。でも、配属されたのがサブカルチャーの特集が多かったりする『FRaU』という雑誌だったので、今となっては良かったと思います。雑誌の中でも一番大変なサイクルで作っている隔週誌で、死ぬほど大変でしたけど鍛えられました(笑)。その時にいっぱい好きな人に会えました。大好きだった岡崎京子さんから勝新太郎、キャメロン・ディアスまで、あらゆる好きな人に取材が出来て、人に出会う快感を深めていきました。

 

―ミスiDを始めるキッカケを教えて下さい

 

小林:女性誌と男性誌を経験した後に、雑誌を外れて一人で本を作ることになり、水原希子や二階堂ふみの本を出したんです。その時に内容や写真について、本人もいろいろと意見を言ってくれたんですよ。それが刺激的で面白かったんです。スケジュールは事務所が管理するけど、内容は自分で主張するっていう女の子たちがどんどん出てきたなと。そんな経験をした後にちょうどミスマガジンがお休みになって、そのタイミングでミスiDをこっそり始めました。最初は予算がなかったのでTwitterで宣伝しようと思っていたんですが、まだ自分にはフォロワーも何百人しかいなくて。でも東日本大震災の時に、SkypeやVineが落ちてもTwitterは動いていて。デマも多かったですが一番情報が早く細やかに伝わり、しかも一方的じゃない。信用が出来ると思ったんです。雑誌や会社のブランドに頼るんじゃなく、Twitterを見ている子たちにこそミスiDを受けてほしいと思ったんです。

 

―受ける女の子は年々変わってきていますか

 

小林:毎年そんなに色や傾向はないんです。玉城ティナや蒼波純だけ見ている人には偏って見えるかもしれないですが。初年度の小鳥遊しほが良い例ですが、キャリアもない普通に生活していた20代の女の子は「このオーディションじゃなかったらオーディションなんて一生受けなかった」というジャンルのわからない子が多いんです。年齢制限や、ファッションピアスやタトゥーの問題、引きこもり、いま大ブレイクしてるゆうこすもそうですが、いろんな理由で一度休業したり、他のコンテストには応募が出来ないと思っている子がミスiDならと応募してくれる。去年だと私。みたいな、ミスiDがなかったらコンテンポラリーダンス界の中で一生を終えていたような才能や、黒沢えりいみたいに9年引きこもってて初めて地上に出てきたセミみたいな才能とか。ちゃんと見ていれば、毎年モデルもクリエイターもアイドルも不良も、アスリート系もグラビアもいるんです。なので、どのジャンルを増やしたいとか思っている訳ではないし、毎年傾向はなくガチで選んでいるので蓋を明けてみるまで分からないのが本音です。

 

同じ人を集めたくないというマインドは同じです

 

―小林さんの『愛すべき女・女(めめ)たち』というイベントと、ミスiDに共通点はありますか

 

小林:基本的にジャンルを無視したいというところは同じです。僕は居場所っていうものを信用していないんですよ。増澤璃凜子だって普通に見ればただのイケテル女子大生なんです。でも外見と中身のギャップが面白いんですよ。そういう子は「こんな風に接していれば周りと馴染むから」って思っている子が多いんです。人はそんなに強くないから、どうしても周りに合わせて生きているんですよ。みんなが特殊能力を持っているわけではないし、周りがサブカルだったら、それっぽく合わせていればいいし、赤文字系の本を読んでる子が周りにいればそれに合わせる。みんなが監視し合う世界だから他の人と違うことができない。でもなんとなく「ここじゃないかも」って思っている子がミスiDを受けてくれるんです。だから最近「ミスiDを受けたらアイドルユニットを脱退する」とかよく言われるんですが、もともと「居場所は違うところにあるかも」と悩んでいる子が受けているだけなんです。そして「ミスiDはボブ率とメンヘラ率高い」みたいなイメージも多いのですがそんなことはなくて、今はまだサブカル的な感覚の方が少し自分を出しやすいだけだと思うんです。サブカルなんて知らないし、みんなと一緒に赤文字系の雑誌を読んで周りに合わせているけど、ここが本当の私の居場所なのかな? と思っている子にこそ受けてほしい。サブカルなんてほんとはどうでもいいです。「女女(めめ)」に関しては、ミスiDより僕が自分で選べるので、もっとノンジャンルにしたいんです。芸能事務所って違うジャンルをすごく怖がりますよね。カリスマモデルの菅野結以と、セクシー女優の凰かなめが同じイベントに出るなんて絶対にないんです。でも面白さと魅力のクオリティでは僕にとっては同じくらいで、なぜ分けるのかわからない。芸能ルール的にNGな組み合わせも女女(めめ)ではやっていきたいんです。イベントとしてはジャンルを集めたほうが局地的な盛り上がりを見せるので正解だと思うんですけど、それはもうロフト系のイベントがほぼ全部そうなんで、いいかなって(笑)。これはちょっとした悪意でもあるんですが居心地の悪さを作りたいんです。この子の次にこの子が出てくるんだ! って戸惑わせたいんですよ。女の子ってこんなにいろいろな子がいるんだって分かれば、もっとみんな生きやすいと思うんですよ。もっとバラバラな世界になってほしい。アンチトランプですね(笑)。女女(めめ)は自分で人を選べるからモデルケース的にやっているだけで、ミスiDもそうなってほしいです。

 

―審査員は小林さんが決めているんですか

 

小林:そうです。選考委員もバラバラにしたい。ただの仲良しごっこにもしたくないし、選考委員自体を初めてする人をなるべく入れたいんです。選考委員慣れしている人よりも初めて選ぶ人のほうが絶対楽しいじゃないですか。本当はミスiDみたいな企画は僕のような男ではなく女性が始めたほうが良かったんじゃないかなって思っているので、女性の審査員をなるべく増やしてます。

 

―CHEERZをプレエントリーに導入した理由はありますか

 

小林:エントリーシートは結構重いので、ライトエントリーを狙っていました。ついうっかり応募してしまったって子を増やしたかったです。普段は一般の人ができないCHEERZを導入して思っていた以上にエントリー数が多すぎて大変だなと思うことや、失敗したこともあるんですが、良かったことも多かったです。プレエントリーに落ちた人も4月1日よりエントリーがあるので、応募お待ちしております。

 

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ミスiD2018

「ぼっち、が、世界を変える。」

4月1日からエントリーが開始。プロアマは勿論、国籍、未婚既婚も問わず。年齢も12歳から35歳まで。タトゥーがあっても金髪でも引きこもりでもOK。自身の新たな可能性を見つけたいすべての女性が対象となる。応募締め切りは5月14日23時59分までとなっている。公式サイト https://miss-id.jp/2018

 

LIVE INFOライブ情報

まだ青く19歳
【出演】杉本桃花(ミスiD2017)

【ゲスト】小山田夢
  
【MC】小林司(妄撮P/ミスiD実行委員長)
2016年4月9日(土)
OPEN 12:00 / START 12:30
前売2,000円 / 当日2,500円(税込・要1オーダー500円以上)
前売り券はe+にて発売中!
 
映画大好きミスiD(仮)
【出演】小林司(妄撮P/ミスiD実行委員長)、他
2016年4月23日(土)予定
詳細後日発表!!!
 
全ての会場&問い合わせ:ネイキッドロフト TEL03-3205-1556
 
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