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『標的の島 風かたか』三上智恵監督(Rooftop2017年3月号)

最後は大人が子供達のための風かたかになるしかない

 
 機動隊との激しい衝突シーンも多い三上監督の映画は、思わず目を背けたくなる時もあるが、絶望的な状況の中でも人間の優しさや尊厳を写し撮ろうとする彼女の作品は、基本的に人間賛歌であると思う。ある時、山城ヒロジさんが「朝起きると、俺こんなことやってて意味あるのかなって時々思うんだけど、意味はあるんですよ」って言うシーンは、三上監督が映画を作る気持ちを代弁しているかのようにも見える。
 
三上:どうだろう? 私はペシミストだからな。でもヒロジさんが凄いのは、どんなに悲観的な状況でも必ず勝ってるんだって言うんです。私がこんなに負けてるのにって絶望的に思っていてもヒロジさんが勝ってるって言うのを聞くと、あれ、私の方が間違ってるのかなって(笑)。彼はどんなに追い詰められていても、こうすれば突破できるという作戦を絶えず考えているんです。
 
 前作同様、山城ヒロジさん、文子おばあなど、人間的に魅力のある登場人物が多く出てくる。今作で特に特長的なのは、市長に対して怯まずに詰め寄る宮古のママさんグループ、とぅばらーまを歌う石垣の山里節子さん、嶺井さんの娘で祭りではエイサー太鼓を叩く17歳の千裕さんなど、力強く魅力的な女性達が多く登場する所だ。
 

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三上:3日前(1月22日)に宮古で市議の補欠選挙があったんですが、「てぃだぬふぁ」の香織ちゃんが組織もノウハウも何もない状態で出馬してみごと当選したんです。映画では彼女の赤ちゃんが生まれたシーンがありましたが、3人の子供を抱えて、基地反対運動をやりながら市議選にも出て、彼女、寝る暇もないと思うんです。母親の火事場の馬鹿力っていうか、本当すごいですよね。これは男の人にはない力だと思います。自分の体がボロボロになっても子供が生きるためなら何でもやるっていう。理屈抜きなんですよね。
 
 まさに「風かたか」となっている姿そのものですね。
 
三上:そうなんです。彼女達は子供のために「風かたか」になろうとしているんです。それとは別の意味で、日本は沖縄を防波堤にして安心しようとし、アメリカは日本列島を防波堤にして中国を封じ込めようとしている。そういうずるい思惑に対して、最後は大人が子供達のための風かたかになるしかない、そういう映画ですね。
 
 前作もそうでしたが、この映画も多くの人達に観て欲しいですね。
 
三上:昨年の11月中旬に編集を終えて12月にエンディングロールで最新の状況を入れたんですが、その直後にオスプレイが墜落するし、辺野古で工事が再開されるし、もう目まぐるしいですよね。ヒロジさんもまだ拘留されたままだし、沖縄はずっと異常な事態が続いていると思います。だから、この状況を少しでも知らせるためにも一日も早く上映したい。観た人は必ず、これは沖縄で起こっている問題ではなくて自分の危機なんだと気付くと思うから。
 

Live info.

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標的の島 風(かじ)かたか
 
3月11日(土)より沖縄・桜坂劇場
3月25日(土)より東京・ポレポレ東中野 他全国順次公開
 
監督・ナレーション:三上智恵
プロデューサー:橋本 佳子、木下繁貴
配給:東風
 
(C)『標的の島 風かたか』製作委員会