自分で読み返すと感情のままに描いているなと感じる
──『クズの本懐』は漫画でありながら、同時に小説的なアプローチもしている作品だと感じました。モノローグで魅せる、というか。あと、セリフのテンポが良くページがデザインされていて、すごく読みやすいですよね。
横槍:確かにモノローグは多いと思います。読みやすいと言ってもらえるのはすごく嬉しいです。とにかく間口を広い作品にしたかったので、行間は思い切って飛ばしたりして読みやすさはすごく気にしています。
──キャラクターはどのように動かしているのですか、先ほど感情移入するとおっしゃられてましたが。
横槍:出てきたらそのキャラになるという感じです。だから同時に対話していると忙しいです。
――キャラになりきるという方法なんですね。ストーリー展開をすごく練られているのかと思っていました。
横槍:描いているときはすごく集中しているので、そのときは考えて伏線を張っているんですけど。終わると忘れてしまって、次の話数を描き始めると思い出す感じです。私は基本的にプロットもなくて、打ち合わせでうっすら決めてるんですけど、全く変わってしまうこともあって、そこはネームしだいです。
――天才の仕事じゃないですか。
横槍:必要に迫られないと描けないだけです。なので、面白かったと言ってもらえて最初に感じたのが安心でした(笑)。描いているのは自分なので、自分で読み返すと感情のままに描いているなと感じるくらいです。
──衝撃です。
横槍:頭の中は完全に読めないじゃないですか、私自身は単純だと思っていても他の人にとっては衝撃なのかもしれないですね。周囲の作家さんはロジック派の方が多いので、羨ましいです。
──感性が豊かだからこそ言葉選びのセンスも際立っているんだと納得しました。本能で描かれているとのことですが、キャラクターとして一番自分に近いのは花火なんですか。
横槍:そうなっちゃうのかな(笑)。もちろん、私だったら絶対やらないという部分もありますし、ストーリー展開の上で言わせているセリフもありますから、一部を抜いてこれが横槍メンゴの主張だと捉えられても作品の内容がぼやけてしまうので一概には言えないですね。
──『クズの本懐』は1月からノイタミナでアニメも放送されていますが、最初にお話が来た時はどうでしたか。
横槍:ほんとにビックリしすぎて、意識が朦朧としました。怖いとかプレッシャーとか夢、嬉しいというのももちろんあって、いろんな感情が一気に巻き起こりました。
──アニメ化に際して要望等はあったんですか。
横槍:いろいろと打ち合わせを重ねていく中で間違いがないと感じたので、安藤(正臣)監督にお任せしています。解釈が間違っていたら直さないといけないと思って会議に出たんですけど、そんなことは全くなくて、むしろこちらが驚くほど作品を深く理解してくださっていて。出た意味はあったのかなと思ったくらいです(笑)。
──アニメ・ドラマもあり連載もクライマックスに向かいますが、最後にファンの方に向けてメッセージをお願いします。
横槍:読むのがしんどいと言われることの多い『クズの本懐』を支持していただけるのは本当にありがたいです。漫画は娯楽だし楽しくなるために読むものだと思うのですが、あえて辛い気持ちを思い出す作品を選んでくれた人にはそれ相応の財産となる作品ができるようにしているので、是非それを受け取っていただけたらと思います。