トップ > インタビュー > VERTUEUX(Rooftop2017年1月号)

VERTUEUX(Rooftop2017年1月号)

曲が歌詞を呼び、歌詞がアレンジを引き出す

──アルバムを何度も飽きずに聴けるのは、構成の妙もあるんでしょうね。

秀樹:曲の並びに関しては意識したね。基本的に3曲ずつのパートで並べてる。あまりダラダラと聴いて欲しくなかったのもあってね。ただ、いまの若い人はアルバム全部を通して聴かないでしょ? だからこういう並びのこだわりはおじさんの嗜みって言うかさ(笑)。おじさんの好きなようにやらせてよ、って感じかな。

Ken1:アルバムをどんなふうに聴かれるかは分からないけど、作る側はちゃんとしたいいものを作りたいから並びにも当然こだわるよね。

──配信音源を1曲単位で買える時代になったからこそ、強くこだわりたい部分ですよね。

Ken1:考えてみれば、Valentine D.C.にしろDe+LAXにしろ、何かのために1曲作ることってなかったんじゃない?

秀樹:うん、なかったね。

Ken1:常にアルバムのことを考えてるわけだからね。シングルだってアルバムの代表曲という意味合いだし、シングルを作ろうと思って作るわけじゃない。格別にいいメロディが浮かんだとか、これはキャッチーだなと思ったらシングルにするけど、曲作りの段階ではそこまで考えてないよね。

秀樹:まぁ、俺たちは昔気質のバンドマンだからそういう発想なんだろうね(笑)。昨今の若いバンドがどういう基準でシングルを切るのかは分からないけど。

Ken1:俺もよく分からないけど、シングルにするだけの曲を作って期待に応えてるのは純粋にすごいよね。

──でも、聴く側が1曲単位で音源を買うのが定着するとアルバムの重要さが薄れてしまうし、楽曲を提供するバンドがそれに応えてキラー・チューンばかり作るのは面白くないですよね。アルバムのB面の前半曲みたいな、地味だけどいい曲って大事じゃないですか。本作で言えば、ジャジーでラウンジ・ミュージックっぽい雰囲気のある「Fantasy」はアルバムならではの収録曲だと思いますし。

秀樹:アルバムのなかのポジションってあるからね。だから俺はけっこう打順を真剣に考えてる。

──メランコリックなメロディとアレンジが光る「hide & seek」も終盤のいいポジションに配置されていますね。

秀樹:「hide & seek」の憂いを帯びたアレンジはKen1のアイディアなんだよ。ちょっとアラビアンナイトっぽいって言うかさ(笑)。

Ken1:それも曲が呼んでたんだよね。鶏が先か、卵が先かって話だけど、秀樹にそのつもりがなくても曲の匂いを感じ取って歌詞にしたり、その歌詞からぴったりのアレンジが引き出されることもある。

──清涼感溢れる「I don't care」も、メロディに呼ばれてビルの向こうの太陽や宝箱のカギという言葉が出てきたんでしょうか。

Ken1:「I don't care」に関して言えば、曲を聴いた時に何の装飾も要らないと思ったんだよね。自分っぽい部分を詰め込もうとか、歌詞で泣かせようとか余計なことは何も考えなかった。これは俺の声量全部で唄い切るだけでいい、そうすれば間違いないと最初から思ったね。他の曲でも唄ううえでメロディを変えることはほとんどないし、秀樹から「それは違う」と言われることもない。秀樹が狙った通りのメロディをちゃんと唄えてるんだよね。

秀樹:Ken1はきっとこう唄うだろうなって考えながら作ってるからね。ただ、Ken1が唄う姿が全然思い浮かばない曲もあって、それを聴いてみたくて作るケースもある。「Fantasy」がまさにそうで、あのリズムとジャジーな雰囲気はいままでのVERTUEUXにはなかったからね。

Ken1:「papa ra papapa…」っていう部分を最初は唄ってなくて、全部打ち込みだったんだよね。そこにどんな歌詞を入れればいいんだよ!? とか思ったんだけど、これはもう「papa ra papapa…」のまま行くしかないと開き直った(笑)。

秀樹:でもそれが良かったんだよね。全然外してるわけじゃないし。

Ken1:歌詞をつける時って、曲全体の雰囲気やメロディの端々から泣きや怒りを読み取ったり、星空や太陽が目に浮かんだり、そのなかで自分の思いや感情を寄せていくんだけど、「Fantasy」に関しては歌詞をつけようがなかった(笑)。「papa ra papapa…」って言葉が出た時点でトランペットの絵が浮かんで、クラブでやってるジャズっぽい演奏が雰囲気に合うと思ったんだよね。

──実際、トランペット奏者がゲスト参加していますよね。

秀樹:そうそう。荻原和音ちゃんっていう、国立の音楽大学を首席で卒業した女の子でね。あのトランペットのおかげで曲が格段に良くなった。

 

夢だけの世界でも現実だけの世界でも無理

──6分を超えるバラードの大作「傷」は本作の肝となる楽曲ですね。アコギとピアノの切ない音色が叙情性を掻き立てていて。

秀樹:肝の曲だったね。「傷」もタイアップ曲で、イメージ的な部分の打ち合わせの段階からアコギがメインになると思ってた。タイアップ曲って聴く人に強い印象を残さないといけないから、プレッシャーはあるけど面白いんだよね。ゲームなりアニメなりの画を実際に見るわけじゃないし、基本的な内容を聞くだけだから難しいんだけどさ。

──ああ、そんなアバウトなオファーのされ方なんですか。

Ken1:いままでのタイアップ曲は全部そんな感じだよ。

秀樹:まだ画が出来てなかったりしてね。漠然と言われたテーマを自分なりに膨らませるしかない。漠然と言われたテーマなのに、書いた曲がNGになるケースもあるんだけど(笑)。

Ken1:歌詞を書くうえではある程度のイメージをもらえるんだよね。こんな場面で使われるとか、使って欲しいキーワードとかさ。でも基本的には暗中模索でやるしかない。

──「傷」は傷に傷を重ねても歩いていくんだという自身を鼓舞するような歌詞で、Ken1さんの人生観が反映された部分もあると思うんです。VERTUEUXの歌詞はValentine D.C.よりもパーソナルな側面を出そうと意識しているんですか?

Ken1:なんて言うのかな、Valentine D.C.の歌詞で自分の思い出なり経験を全部使い果たした感じがあるんだよね。初恋一つだけで何曲書いただろう? っていう(笑)。

秀樹:ネタ的にね(笑)。また新たに人生経験を積まないといけないね。

Ken1:誰かとの別れにしても、そんなにいくつも経験してるわけじゃないので、ポイント的に絞られた何人かとの別れをいろんな言い回しを駆使して歌詞にしてるわけ。だからVERTUEUXの歌詞に関しては、自分の感情は使うけど過去に経験したシチュエーションは使わない。ゲーム音楽に携わるようになってから特にそうだけど、映像や匂い、一瞬フラッシュバックする画とかからインスパイアされるようになった。Valentine D.C.の歌詞は自分が生きてきた長いスパンのなかから言葉をすくい上げるんだけど、VERTUEUXの歌詞はもっと瞬間的に思い浮かぶ色や情景を切り取るわけ。自分のなかでは小説を書くような感じじゃなく、一瞬一瞬で感じたことを歌詞にしていく感じだね。

──でも、「夢だけの世界 それは無理/現実だけの世界 それも無理」という「primitive」の歌詞は含蓄があるし、若い頃には書けなかった歌詞だと思うんです。今日まで生きてきた経験があってこそ出てくる信条ですよね。

Ken1:仰る通りで、本当にその言葉に尽きるんだよね。「primitive」は「アンドロイド」とか「ランデブー」とか聴きやすい言葉に耳を取られるだろうし、「真っ赤な嘘の海岸」とか色も与えてるので、自分が伝えたい本質に気づきづらいかな? と思ったんだけどね。夢だけでも現実だけでも無理という歌詞は、残りされた人生がもうそれほど多くはないことに気づく年齢じゃないと思い浮かばないだろうね。

──自分もそうですけど、若い頃と違って現実ばかりを見て夢が足りていないことに気づかされますよね。

Ken1:そういうことを自分もいま感じてるわけ。生活を基盤にすればどうしても夢を忘れかけてしまうし、このままあと2年で50歳を迎えるのはどうなんだ? と思ってね。もっと自分のやりたいことに貪欲になるべきだし、音楽以外で全く新しいことをやろうと思って空手を始めたりしてさ。

──退路を絶って音楽や自分の好きなことに打ち込む、自分の人生に懸けてみようと考えたわけですね。

Ken1:「1 shot 1 kill」にもそういう思いを込めたつもりなんだよ。まぁ、実際には極真空手の歌のつもりで書いたんだけどね。「1 shot 1 kill」=“一撃必殺”ってことだから(笑)。

秀樹:YouTubeに上がってる極真空手の映像と合うなぁ…なんて言ってね(笑)。

Ken1:空手の曲と思えばそうも聴こえるけど、もちろんそういう狭い意味は持たせてないんだよ。もう後がない自分の置かれた立場、それでも限界まで昇り詰めていくんだという思いを歌に込めたつもりだから。今回のアルバムにはそうやって自分が転機を迎えた頃に書いた歌詞が多いので、俺なりの信条みたいなものがいつになく出てると思う。

 

THE VERTUEUX

BadRideRecords BRE-001
価格:2,500円+税
2016年12月5日(月)一般発売

【収録曲】
01. 18
02. primitive
03. I don't care
04. 1 shot 1 kill
05. Fantasy
06. 傷
07. Glamorous Night
08. hide & seek
09. Angel
10. あのくだらない愛をもう一度
11. 灼熱