Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー劇画狼(Rooftop2017年1月号)

漫画始末人・劇画狼が案内する、
エクストリーム(極端・極限)な魅力を持ったマンガの世界!!

2017.01.05

 エロ劇画などのマイナーマンガを紹介するブログ「なめくじ長屋奇考録」や、自主レーベル「おおかみ書房」などの活動で知られ、リイドカフェで2016年10月より始まった怪作Web復刻企画「劇画狼のエクストリームマンガ学園」など、乗りに乗っている劇画狼に、2017年の幕開けにふさわしいめでたいお話を訊かせてもらおうと、メールインタビューを行なった! (interview:宮武孝至[Loft PlusOne West])

…すごいマンガは宝島社が決めろ。だが、ひどいマンガはなめくじ長屋が決める!!

 

——街が、クリスマスやこれから訪れる新しい年の幕開けへの期待に浮かれる年末の恒例行事といえば「…すごいマンガは宝島社が決めろ。だが、ひどいマンガはなめくじ長屋が決める!!」というキャッチコピーでもお馴染み「このマンガがひどい!」ですよね。これってどんなきっかけで始めたんですか?

 

劇画狼:宝島社の『このマンガがすごい!』に代表されるマンガランキングって、いろいろな作品を知れて参考になるんですけど、投票できるのが「その1年で単行本が出た作品」だけなんですよ。自分が専門としてやっているのは人妻・熟女専門のエロ劇画誌と、芸能界の闇! みたいなコンビニコミックスなので、そのほとんどが単行本にならない。じゃあ、単行本にならなかったマンガの情報ってどこに残るんだろうと思って「○月に起こった芸能人の不倫騒動を、翌月に大御所エロ劇画家の××先生が漫画化した」とか、そういうどうでもいい情報をまとめていったのが最初ですね。「今年の節分の時期に出たエロ劇画には、鬼の面をかぶった義父を旦那と間違えてSEXした主婦の話が何本あった」とか、使い古されているプロットの新作数をチェックしたり。そんな感じで、単行本になってるマンガが全てじゃねえぞ! って反骨心で始めた企画なんですが、なぜか話題になってここ数年では本家『このマンガがすごい!』の方にも関わらせてもらってるという。

 

——『今日のテラフォーマーズはお休みです。』の服部昇大先生や、『累』の松浦だるま先生など、タイトル画像が豪華ですよね。

 

劇画狼:田中圭一先生や平松伸二先生に無理を言ってお願いしたこともありますね。やまだないと先生や西村ツチカ先生も、僕が紹介してるマンガとは1ミリもかぶらない作風なのにご協力いただけました。こんなクソみたいな企画なのに協力したいと言ってくださる方がどんどん増えてきて、我ながら意味が分かっていません。

 

——初めて「このマンガがひどい!」をイベントにしたのはいつですか?

 

劇画狼:「このマンガがひどい!」という名前を冠したイベントを初めてやったのは、2012年の7月の「このマンガがひどい! 劇盛」ですね。この時はそこまでの活動のまとめと、自主レーベル「おおかみ書房」の立ち上げ発表のためにやりました。

 

——ロフトの初イベントは、2013年8月16日に阿佐ヶ谷ロフトで開催した「このマンガがひどい! 内臓大爆発」ですよね?

 

劇画狼:イベントを主催したのはそれが最初ですね。その前に一回だけ、新宿ロフトプラスワンでのコアチョコTシャツデスマッチに出たことがあります。女犯坊とシシカバブー(キン肉マン)の画像を高速でシャッフルする最悪なネタをやりました。阿佐ヶ谷ロフトでの「内蔵大爆発」は、そろそろ東京でも主催で何かやってくれと言われていたタイミングだったので、せっかくなので大ファンである掟ポルシェさんに聞き手に回ってもらって開催しました。もともと、ここ15年くらい気持ち悪いくらいのロマンポルシェ。ファンで、モー娘。にあやかってロマンポルシェのユニット名にも「。」がついたタイミングで、当時プロキックボクサーだった自分のリングネームにも「。」をつけた挙句、それが全然、誰にも伝わらなくて、一般の格闘技ファンにはただのハロヲタ格闘家だと思われていた上に、掟さん本人に当時のことを聞いたら「ライブ終わりにいつもエロ本の表紙にサインをねだってくる筋肉質の気持ち悪い男」と言われたので、本当に人生は消したい過去ばかりだなと思います。

 

作家さんが次の仕事を取れる「起爆剤」を仕込みたい

 

——「おおかみ書房」を立ち上げたいきさつは?

 

劇画狼:先に言ったように、好きなマンガ・読んでもらいたいマンガは全然単行本にならないんですよ。で、2012年の冬に、当時イチオシしていた三条友美先生の『人妻人形・アイ』の掲載誌である『熟女ものがたり』が休刊することになって、これはアカンと。このままではこの超名作が単行本化せずに消えてしまう。どうにもならないのなら、版元に文句を言うんじゃなくて自分で出そうと。それで当時から親しくさせていただいていた白取千夏雄さん(元「ガロ」副編集長)にすぐに連絡を取って「自分が書いた同人マンガじゃなくて、プロの作家さんの未収録作品を本にするレーベルが作りたい。まず何をすればいいか?」と訊ねたのが最初ですね。その後『人妻人形・アイ』は無事に版元から単行本化されたので、それなら三条先生の絶版ホラーも本にしようと一から教えてもらいました。三条先生も、その時点ではなんの実績もない僕に貴重な原稿を預けてくださり、2013年3月に第一作『寄生少女』を出すことができました。

 

——2015年には、掟ポルシェ最低コラム集『出し逃げ」も「おおかみ書房」から出版されましたね。

 

劇画狼:三条先生のホラーを2冊出したあと、掟さんがエロ本の端っこに書いているような、クソしょうもなさすぎるけど面白いコラムもここ10年ほど書籍化されていないなあと思って。それで、今までの一方的な恩もあるし、インディーズですけど出させてくれませんかと。この本を白取さんに相談したときは、結構マジで反対されましたね。いい意味でも悪い意味でも最低すぎるって。確かに「男のモテ指南書!」みたいな作りにしようと思って始めたのに、並んでるコラムは初っ端から「もう獣姦でいいよね」とか「テニスとペニスって似てるよね」とかばっかりで。収録順を考えるためにこういうのを100本以上、何度も読み返したので、発売を迎える頃にはちょっと掟さんのことが嫌いになってました(笑)。でも世の中には意外とニーズがあったようで、限定1000部の出版のはずが通販予約だけで1500部も売れて。嬉しいんですけど、その全てを封筒詰めして出荷するのも自分なので、それはそれでキツかったですね。

 

——最近では「おおかみ書房」から『抱かれたい道場』を出版している中川ホメオパシー先生の『バトル少年カズヤ』と『干支天使チアラット』の発売記念イベントを東京と大阪で開催し、どちらもソールドアウトとなりましたが。

 

劇画狼:自分が誰かの本を出すのは、固定ファンによる内輪のお祭りがしたいからじゃなくて、その作家さんが次の仕事を取れるように起爆剤を仕込みたいからなので『抱かれたい道場』イベントにリイド社の編集さんが来てくださって、そこからすぐに正規の新連載につながり、その発売イベントの司会をやるまでの流れを見せること自体を商売にできた、というのは理想的だったし、自分が何をどこからどこまでパッケージングして戦っているのかが再確認できたので、非常の大きな収穫でした。

 

——『干支天使チアラット』を連載しているリイド社の『LEED cafe』で『劇画狼のエクストリームマンガ学園』が始まりましたね。

 

劇画狼:マンガ好きなら少なからず、自分の好きなマンガをセレクションして人に読ませたいという気持ちがあると思うんですが、リイド社さんのご好意で「おおかみ書房」の活動では手を出しづらい絶版作品の復刻と、短編集を作るほどの量がない作家の作品単品公開を、好きにやっていいよと言っていただけて。そんな中、引退されて消息がつかめなかった谷口トモオ先生が見つかり『サイコ工場』をWeb復刻できたことは、我ながら奇跡に近かったなと思います。基本的に月2回の更新なんですが、誰も知らない作品から誰もが知ってるあの人の黒歴史的作品まで、現時点で半年分くらいのストックがありますから、いつか皆さんの「どこかで見たけど忘れていたあのトラウマ作品」にぶち当たるかもしれませんのでぜひお楽しみに。

 

——2月5日には『掟ポルシェと劇画狼のブスにきびしくする会』が控えていますが…それにしても酷いタイトルですね。

 

劇画狼:最悪ですね。最悪です。最大限ブスにきびしくするつもりですが、でも我々が「ブス」って言ってきびしくするのは「女性の容姿に対して」ではないですからね。ブスとは何か? みたいな頭のいい人たちっぽい定義付けや分類は多分やりませんが、なぜだか翌日からみんなの背筋が真っすぐになるようなイベントになると思います。多分。

 

——今後の活動に関しては?

 

劇画狼:次の新刊はインディーズとか関係なく、間違いなく戦後マンガ史の欠けたピースを埋める超大作です。ご期待下さい。

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LIVE INFOライブ情報

2017/2/5(日)

大阪ミナミLoft PlusOne West

「掟ポルシェと劇画狼のブスにきびしくする会」

 

【出演】

掟ポルシェ

劇画狼

 

性別・国籍・学歴・年齢・宗教、その全てとは無関係に存在する悪意、ブス。

日頃から無自覚にブスにきびしくする掟ポルシェと劇画狼が、改めて「ブスとは何か」を検証する…ことはなく、いつも通り根拠のない持論でブスにきびしくするイベント。

 

※ブス入場者(申告制)は入場時に「ブスですいませんでした」という内容の謝罪文を書いていただきます。

 

OPEN 18:00 / START 19:00

一般:前売¥2,000 / 当日¥2,500(共に飲食代別)※要1オーダー500円以上

特別ブスシート(椅子なし・地べた直座り 泥団子付き):

前売¥20,000 / 当日¥25,000(共に飲食代別)※要1オーダー500円以上

前売券一般発売はイープラス、ロフトプラスワンウエストWeb&店頭&電話予約にて12/17(土)発売開始!

イープラスはこちら

※ご入場は会場先行予約(終了)→イープラス→Web予約→店頭&電話予約→当日の順となります。

電話→ 06-6211-5592(16時~24時)

 

 

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