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米村智水(株式会社カイユウ代表取締役社長)(Rooftop2016年12月号)

 Webメディア群雄割拠の今、「数」ではなくあえて「質」で勝負する『KAI-YOU.net』。「すべての人のためのポップポータルメディア」を自称するKAI-YOU.netでは、文芸・音楽・アニメ等はもちろん、ありとあらゆるカルチャーを「ポップ」という視点から切り取っている。「ポップの聖地」渋谷を拠点に「ポップとは何か」を常に考えてきた、株式会社カイユウ代表取締役社長・米村智水に「サブカルの聖地」新宿ロフトプラスワンから這い出してきたLOFT9 Shibuya店長・石崎典夫がいろいろ訊いてみた!(Interview:石崎典夫 構成:マツマル[LOFT9 Shibuya])

似て非なる「ポップ」と「サブカル」の線引き

―僕がここLOFT9 Shibuyaに新宿のロフトプラスワンから移ってくるにあたって、今までの「サブカル」から「ポップ」のハコにしたい、というテーマがあったんですが、個人的にKAI-YOUさんに取り上げてもらうことを目標に頑張っておりまして(笑)。

米村:そうだったんですか(笑)。

―「サブカル」と「ポップ」って、似て非なるところがあると前々から思っていたんですが、そのあたりKAI-YOUさんがテーマに掲げる「ポップカルチャー」とは何ぞや? というところをまず伺ってもよろしいでしょうか。

米村:いろんなところで話してはいるんですけど、「外に広がっていくもの=ポップ」で、「仲間内で楽しむもの=サブカル」と線引きしてますね。まだ知名度が低いものでも「これから広がっていく可能性があるもの」は「ポップ」と認識しています。

―「オタク系」と「サブカル」は似ているんですかね。

米村:うーん、たとえばアニメだと『君の名は』のように、どうにかして一般層に届けようとしているものもありますからね。なんとも言えないところですけど。

―ウチのイベントでもアニメのスタッフさんのトークイベントは多いんですけど、それはある程度作品を見ている人たち同士のクローズドな空間になってしまいがちでしたね。

米村:「一見さんに理解してもらう」って、かなりハードルが高いですからね。趣味の違う人に無理やりわかってもらうよりも、気の合う仲間同士でコミュニティを回していった方が楽しいことは楽しいですから。でもそれだと外に輪は広がらないし、メンバーもどんどん歳を取ってパワーダウンしてしまう……っていう悪循環に嵌ってしまうんじゃないかと。

―ホントにそうなんですよね。僕も新宿で10年間ぐらいイベントをブッキングしてきて、それはそれは下品なことをずーーーっとやってきた自負はあるんですけど、気が付けば演者さんも店のスタッフもお客さんも、みんな歳を取ってきて、「ロフトプラスワンってこんな感じだよね」っていう、凝り固まった価値観から先に進めなくなってしまっているような気がしてきてしまって。

米村:それを渋谷では払拭したいと。

―そうなんです! だから今はレギュラーイベントを少し控えめにして、新しいイベントをどんどん入れていきたいなと。

米村:一時期、僕もライブハウスに通ってたんですけど、「会場にいる客がみんなバンドマンだった」みたいなことがよくあって(笑)。「みんな友だち」みたいなイベントもダメではないけど、その先のステップにいくにはどうすればいいのかを考える必要があるんじゃないかという気がしますね。

属しすぎてはいけない

―7月にオープン以来、毎日イベントをやってるんですけど、既にノイローゼ気味でして(笑)。今後、ウチが渋谷というライブハウス激戦区で生き残っていくためにはどうしたらいいか、渋谷の先駆者であるKAI-YOUさんにアドバイスをいただけたらと。

米村:いや、ウチも渋谷に移ったのは2014年なんで、新参ではありますけどね。それまでは池袋を拠点にしてました。Webメディアの他にWeb制作だったり、雑誌を作ったりしてたんですが、3年くらい前のハロウィンに衝撃を受けて、「若者の文化を追っていくなら渋谷だな」と思ったのが、移転したキッカケですね。ハロウィンはずっと追ってますけど、今年はビジネスのニオイが露骨にし始めて、文化として落ち着いてきてしまったような印象を受けましたね。

―たしかに、徐々にオトナの存在を感じるようになりましたよね。米村さんが社長に就任した2013年のブログによると「世の中にムカついていた」っていうのがKAI-YOU立ち上げのキッカケだったとのことですが、これはどういうことでしょうか。

米村:もともと本が好きで、大学時代も文学部に所属していたんですが、文学って未だに「文壇」って表現されるように、かなり閉塞的なイメージがあったので、結局僕らが作品だったり批評を書いたところで、「上に認められなければ意味がない」っていう状況をどうにかしたいと思っていましたね。「文学」って括ると高尚なイメージはありますけど、ギャルとか地方のヤンキーは読まないじゃないですか。でもそういう人たちにも認められない限り、文化としては衰退していく一方ですし、「あまねく届ける」という意味で「ポップ」という言葉を使っているところはありますね。

―KAI-YOUさんといえば今のフリースタイルブームが始まるだいぶ前からヒップホップに注目されている印象があったんですが、この前の『高校生ラップ選手権』のレポートの「ヒップホップは流行じゃない」というキャッチには唸らされました。

米村:ありがとうございます。あれ僕です(笑)。

―あのキャッチにしてもそうなんですが、取材も批評も目のつけどころが他のWebメディアとは違うトガり具合を感じますね。

米村:そう言ってもらえるとありがたいです。取材に関しては、なるべく足を運ぶし、掘り下げるのは前提ですけど、「属してはいけない」というのを常に意識してますね。

―染まりすぎて「中の人」にならないように、ということでしょうか。

米村:そうですね。片足突っ込むぐらいでやめておかないと、バランスよく批評できなくなってしまうので。ただ、ヒップホップ界隈は特になんですけど、「オルグ感」が強くて(笑)。

―なんかわかります(笑)。その辺のバランス感覚は難しいですよね。ウチによく出てもらっている吉田豪さんが絶妙で、あれだけアイドル業界にコミットしていながら、絶対に運営側には回らず、あくまで批評する側のスタンスを貫いてるのは流石だな、と感じます(笑)。

「まだ見ぬ最強のポップ」にたどり着くために

―『KAI-YOU.net』の記事を読む度に思うのですが、一本一本の掘り下げ度がハンパないので、これを続けていくのはかなりキツいんじゃないでしょうか。

米村:そうですね……。他のWebメディアだとたった一日でウチの一週間分くらいリリースしているようなところもありますけど、ウチは普通のニュース記事一本とっても、一見さんがわかりやすいように「この人はどういう人か」「どういうキッカケでこれを出すのか」みたいな説明から入るので、やたら長くなるし、コストがかかってます(笑)。

―今は「とにかく本数」っていうのが主流ですよね。これからのKAI-YOUにはどういう展望がありますか?

米村:今後の目標としては、ひとつのメディアとして今の100倍の規模に成長したい、っていうのはありますね。近年のWebメディアは「ひとりひとりのニーズにあったコンテンツづくりが大切」という流れがあるのですが、それはある意味テレビなどのマスメディアが持つ影響力に対する諦めなんじゃないかとも思っておりまして、最終的には「KAI-YOUが」というより「Webメディア全体が」マスメディアに負けないような土台を作っていかないといけないのではないかと感じます。

―YouTuberなんかはテレビが取り上げる頃にはすでにネット界隈では有名ですもんね。

米村:そうですよね。あとは世相も関係があるのかもしれないんですが、今は「衣・食・住」関連のコンテンツ力の強さを感じるので、ウチはその「衣・食・住」にプラスして、「遊ぶ」っていう概念をハメ込んでいきたいなと。遊ばないと人間として生まれた意味がないじゃないですか。

―僕もライブハウスなんかは正直、なくなっても生活自体には支障ないと思うので、その感覚はよくわかります。さて、今度のKAI-YOUさん主催のイベントについても触れたいんですが、企画内容が「Webメディアの編集長が集まって、Webメディアに書けないような怖い話をする」っていうものでして(笑)、なんでまたそんな恐ろしいことをしようと思ったんでしょうか。

米村:普段書けないことを一気に放出する「ストレス発散の場」にしたいなと(笑)。あとは「これからのWebメディアの未来」とか「ライターとしてメシを食うには」みたいな意識の高いイベントはあるんですけど、それをぶっ壊して、いろんな人に出会いたいっていう目的はありますね。

―真面目なライター志望の方にこそ来てほしいですね(笑)。最後にひとつ聞きたいんですが、今後、我々LOFT9 Shibuyaがこのライブハウス激戦区である渋谷で生き残っていくにはどうしていけばいいか、アドバイスをいただけないでしょうか?

米村:だいぶお悩みなんですね(笑)。現状、LOFT9さんの一番のライバルはAbemaTVさんだと思うので、AbemaTVさんより先に、確実にブレイクする人たちをどんどん発掘していってほしいですね。

―なるほど。ありがとうございます! AbemaTVをぶっ潰せるよう、今後とも勉強させてください!!

※ちょうどAbemaTVさんと「ロフトチャンネル」開設の打ち合わせをしたばかりでした。調子に乗ってすいません……。(石崎)

Live info.

2016年12月5日(月)
DARK POP NIGHT -本当にあったWebメディアの怖い話-
【出演】
古田大輔(BuzzFeed JAPAN)
尾田和実(SILLY)
佐野恭平(MTRL)
新見直(KAI-YOU.net)ほか
時間:OPEN 19:30 / START 20:00
料金:前売¥1,800 / 当日¥2,000(税込・要1オーダー500円以上)
会場:LOFT9 Shibuya