キャリア初となるフルアルバム『TEXTURE,MOISTURE』をリリースしたギターレスピアノロックバンド、ENTHRALLS。
来年1月14日に、下北沢SHELTERでリリースイベントを開催し、ツアーをスタートさせる。これまでにないポップで親しみやすい旋律が、随所に散りばめられ新たな一面を覗かせた今作。そんな彼女達にアルバムに込めた思いを語ってもらった。(interview:義村智秋[SHELTER])
「きょうは休みます」は、何もかも振り切って作りました
―ルーフトップインタビューは初登場ですよね。軽く紹介できればと思いますが、結成って4年くらいになりますよね?
井上佳子(Vo / 以下:井上):そうですね。13年に大阪から東京に出てきて、ENTHRALLSを始めて。
―当初からギター入れるつもりはなかったのですか?
中井傑(Ba / 以下:中井):最初はいたんですよ。前身バンドの頃は。
井上:当初は5人でやっていて、もっとジャズっぽい要素だったり、ボサノバの要素が入っていて、おとなしめでした。でも、青木くんとギターの子がぶつかって。「ギターの子がいるせいで僕が自由に出来ない!」とストレスが爆発して (笑) 。気づいたときにはもう4人でやりますって青木くんが勝手に進めてて。
青木康介(Key / 以下:青木):いろいろ前置きはあったよ!(笑)
井上:まぁ、なるべくしてなった感じです。
―そうだったんですね(笑)。13年に東京に来て、初SHELTERはUPSETの企画でしたよね。そこから2014年6月の企画、同年8月の昼企画、会場限定音源『TAMAYURA』のツアーファイナル、前作『ねむれない夜に』での企画、ワンマンと、結構やってますね!?
井上:そうですね! 東京のホームだと思ってます。大事な時は全部SHELTERでお世話になってますね。
―ありがとうございます! これからもよろしくお願いします!(笑)今作のリリースですが、フルアルバムということで大変だったんじゃないですか?
井上:2015年10月に前作『ねむれない夜に』をリリースして、翌年2月に今回のフルアルバムのプリプロが始まるっていうスケジュールだったんですよ。ただその10月の時点で1曲もできてなかったんです (笑) 。そこから凄いスピードで作ったのを覚えています。バンド内でも、みっちゃん(前ドラマー吉田氏)のこととかいろいろあって。彼が一番大変だったと思いますが、体調とか状況を見ながらのレコーディングと、同時にツアーもあって結構大変でした。
―前作のツアー中に曲を書いたってことですね?
井上:そうですね。ほとんどの曲はツアー中に書いたんですが、1曲目の「きょうは休みます」はプリプロの前日にできた曲です。歌詞はプリプロ中につくったんですが、休みたくても休めない、という気持ちが反映されました(笑)。
青木:プロデューサーの村田さん(U-re:x)にプリプロの一週間前に偶然会って聴かせたら「これは良くない」とボツをくらったり。そんなギリギリの中で「きょうは休みます」は、何もかも振り切って作りました。
明るいことも照れずにやれるようになってきた
―タイトルの『TEXTURE,MOISTURE』はどういう意図でつけたんですか?
井上:コンセプトについては、最初から決めきるよりは、全貌が見えて閃いて、そこで決めることが多いです。今回は女の子という言葉が出てくる曲が多いんですけど、全曲の歌詞を見返していると、「モイスチャー」っていう言葉がパッと浮かんできて。化粧水とか乳液とか、スキンケア用品にはモイスチャーって言葉がよく使われているのですが、この言葉をどうしても使いたいと思って。語呂がいいので前に「テクスチャー」を付けて、タイトルはどうしてもこれにしたい! と、それに合うようなコンセプトを整えていった感じです。
―なるほど。前作の『ねむれない夜に』から1年弱ですが、今作に至るまでに変わっていった事ってありますか?
井上:『ねむれない夜に』が、おセンチなコンセプトのアルバムなので、そういうナーバスなものをとことんやりきって、今作では新しいENTHRALLSを見せたいと。ライブのことも含めて考えて、明るいことも照れずにやれるようになってきました。
―確かにこれまではダーク、闇なイメージが強い印象でしたが、明るくなりましたね!
井上:前作があったおかげで、そのモードは一旦終わったし、新しい方に向かえたと思います。
―眠れるようになったって事ですね!(笑)
中井:僕はすぐ眠れるんですけどね(笑)。結成当初からのアルバムを並べて聴いてみうると、すごく変わっていってて。『合法的浮遊』から音楽的に、勢いだけじゃないという感じが出せてきたと思います。そして今作で、ポップであることはダサいことじゃないなというのがだんだんわかってきて。受け入れられたというか、迷いがなくなりました。
―確かにアレンジも洗練されて分かり易くなった気がします。これまではもっとカオスでマニアックな曲もありましたが、今作は結構シンプルな感じですね。
井上:もしかしたら物足りないと感じる方もいるのかなと思うくらいシンプルになったなって。でもその辺も聴いてるうちに沁み込んでいってくれれば嬉しいです。
―そういう意味でも、やはり女性に聴いて欲しいですか?
井上:そもそも私がライブに行ってない女子だったのもあるんですが、なかなかライブハウスに行かないと思うんですよ。普通の生活をしていて特別音楽好きというわけじゃない女の人が、このCDを聴いてライブハウスに行きたいって思ってくれたら良いなって。男の人は聴かないでくれとかそういう意味じゃないんですけど。とっかかりになってくれたら嬉しいです。わたしは一人でライブハウスに行けなかったので。
―入り易い空間づくり頑張ります(笑)。さて、メンバーそれぞれの推し曲を教えてもらえますか。
中井:「センセーショナル」が好きですね。フルアルバムってものすごく節目だと思うのにサビで「伝えたい事なんてない」っていうのが衝撃で(笑) マジで? みたいな。フルアルバムなのに!
井上:(笑) この曲は、着飾って盛り立てて自分を装っている人が「実際、自分には伝えたいことも楽しいと感じることも何もない」ということに気付いてしまったという悲しい曲です。
青木:曲で格好良いのができたと思うのは「センセーショナル」なんですけど、歌詞で共感するのは「マジックアワー」ですね。
井上:私は、「誓いのとき」ですね。シンプルなバラードで、もしかしたら今作に入らなかったかもしれない曲なんですけど、潔く入れて良かったと思います。
これだ! っていうのを見せたい
―ちょっと話がそれますが、前作もでしたが、インストが入ってますよね?2作続けて入っているのは珍しいなと思って。
青木:『ねむれない夜に』のリード曲は中盤にあったので、ここから違うぜっていう特別感を出したいってのがあって。
井上:今回は「ほら」って曲が歌から始まるんですが、その曲の前にもそういのうのを入れたいなってことで、青木くんにつくってもらいました。
青木:前作の方は夜明けみたいなイメージで、東京の駅中、私生活っぽい、この音聞いた事あるなというのを入れたかったので東京の駅中でとりました。今回はモイスチャーってことで水の音、まぁ僕んちの水道の音なんですけど (笑)。
井上:それは言わんとこう! 確かダメ出しあったよね?
青木:あまりにもシンクの音がでかすぎて(笑)。
―作品についての裏話、たくさん聞かせてくれてありがとうございます(笑)。最後に、来年1月14日のSHELTERを皮切りにツアーが始まりますが、意気込みをお願いします。
井上:リリースしてからツアー初日まで、いつもの編成でライブハウスでやるのがお預け状態なので、やっぱりこれだ! っていうのを見せたいです。ファイナルまで突っ走りたいと思います。集結してください!
中井:がっと頑張ります!!