Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー鮫肌文殊(Rooftop2016年11月号)

それぞれの心の中にいる中島らもがイベントで復活!

2016.11.01

 2001年11月から2004年9月まで開催され、今や伝説的なイベントとなっている中島らもと鮫肌文殊によるトークライブ「らもはだ」。ガンジー石原、大槻ケンヂ、室井佑月、松尾貴史、井筒和幸、仲畑貴志、かまやつひろし、野坂昭如、本上まなみ、萩尾望都、チューヤン、高田文夫、山田ジャック、星川京児、三木俊治、等ゲストを並べるだけでも歴史と凄みが分かる。今回、中島らもと共にイベントを作り上げてきた鮫肌文殊が『らぶれたあ』出版記念イベントとして、一夜限りの『らもはだ』復活祭を開催する運びとなった。最終回から12年、それぞれの心の中の中島らもがイベントで復活する。(interview・構成:鈴木恵[LOFT / PLUS ONE]/高橋啓[Naked Loft])

自分の人生の落とし前

 
——ロフトプラスワンで開催していたイベント『らもはだ』から12年経ったこのタイミングでの発売ですが、何かきっかけはあったのでしょうか?
 
鮫肌:去年50歳になったんですけど、中島らもさんが生前50歳の時に”好きなことしかやらない宣言”をしたんです。例えば書く小説も、エンターテイメント的なものから私的なものに移ったり、“らもミーツザロッカー”という好きなアーティストと一緒にジョイントライブを積極的にやってみたりだとか。その宣言をしてから、本当に好きなことをやり始めたのが印象的でした。僕はずっと放送作家をやってきたんですけど、50歳になったから、らもさんに倣ってそれ以外のこともやろうかと思っていて、その中の一つに本を出したいという想いがありました。そう思った時、やっぱり中島らもさんとのことを自分の人生の中の落とし前をつけるじゃないですけど、一冊の本として残しておきたいと思い立ちました。最初は出版などの予定も全然決まっていなくて、とりあえず書き始めたんです。それが二百何十枚かになった時に、知り合いのホームページで連載を始めることになって、その連載をしているうちに、講談社から話を頂いて出版をすることになりました。だから、一年越しで出版が決まったという感じですね。本当に最初はどこから出すとかではなく、自分の中の落とし前として書き始めました。
 
——50歳を迎えての思いから始まったんですね。
 
鮫肌:そうですね。私事なんですが、“捕虜収容所”というバンドをやってまして、10年くらい活動休止してたんですけど、メンバー全員が50歳になったから「いいじゃん、還暦までバンドで遊ぼうよ」とみんなに声をかけて、もう一度バンドも始めたんです。今年の6月に復活ライブをやって、10月もロリータ18号に対バンをしてもらって、今年のクリスマスは大阪編なんですけど、また復活ライブをやります。バンドも、もう一度本格的にやろうかっていう話になりました。本業の放送作家はやりつつ、それこそらもさんに倣って自分の好きなことをやっていこうと決めたのが去年、50歳になってからですね。
 
——連載には、当時のことがすごく鮮明に描かれていましたね。
 
鮫肌:僕、日記をつけてたんですよ。自分の所属事務所のホームページでブログみたいな形でそれを公開していて、当時のことを書いた文章があったんでそれを見ながら細かく思い出していった感じですね。当時、らもさんがこんなことしたあんなことしたっていうのがちゃんと書いてあったので、読むとその日のことを鮮明に思い出しました。
 

伝説的なイベント『らもはだ』

 
——ロフトプラスワンのことはご存知でしたか?
 
鮫肌:富久町の時代から、出演もしたこともありましたし知っていました。今でこそ真面目になりましたけど、当時は無茶苦茶だったじゃないですか(笑)。その無茶苦茶だった場所から、またいかがわしさの極地みたいな歌舞伎町のど真ん中に移って、そんなサブカルの聖地みたいなところで『らもはだ』を開催するのかと、逆に嬉しかったっていう思い出はありますよ。『らもはだ』は、最初、僕とらもさんの往復書簡みたいな感じの連載にしようと言ってたんですけど、らもさんがトークライブにしようと言い出してロフトプラスワンに白羽の矢が立ったという感じですかね。
 
——その『らもはだ』なんですが、印象に残っている出来事はありますか?
 
鮫肌:やっぱり一番印象に残っているのは、野坂昭如さんがゲストの回ですね。あれが一番じゃないですかね。らもさんが躁転してらして…一番躁状態の時だったと思うんですけど、もう周りは振り回されて大変だった時期ですね。
 
——いつもと違う異様な雰囲気が流れてて、ピリピリしてる感じがしました。
 
鮫肌:すごく鮮明に躁なんです。らもさんがいきなりブチ切れて「原発反対!ロフトプラスワンの電気を全部消せ」って言い出して。
 
——それ覚えてます! とても驚いたので。
 
鮫肌:それで、非常灯だけ消せなくてらもさんがものすごく怒って、それも消せって言ったら店員さんが泣き声で「すいません、これだけは消しちゃダメなんです」って言ったっていうことがあって(笑)。『らもはだ』は結構ピリピリする場面がありましたけど、僕はあれが一番印象に残ってますね。その後は、真っ暗な中で野坂昭如さんが『黒の舟歌』を歌って(笑)。らもさんがギターを弾いて、野坂昭如さんが歌って、僕とアトムさん(大村アトム氏:当時の中島らもマネージャー)がコーラスするっていうすごい状況でした(笑)。
 
——主役のらもさんが欠席している回が何回もあるというのもすごい話ですね。
 
鮫肌:そうですよ、3分の1はいないですからね(笑)。その度に大槻ケンヂさん達に来ていただいたりして、本当にありがたかったです。
 
——鮫肌さんから見た中島らもさんのことを、イベントに先駆けてちょっとだけ教えて頂けますか。
 
鮫肌:師匠とはあえて言いませんけど、今思えば本当にいろんなことを教えてもらったなって思うし、いろんな出会いを作ってもらったし、そもそも放送作家になるきっかけを作ってくれたのは中島らもさんなので、だから僕のルーツというか…今の人格形成に多大なる影響を与えてくれた人だと思っています。らもさんに一番最初に会った時、“なげやり倶楽部”(1985年10月19日から1986年1月25日まで読売テレビで放送されていたバラエティ番組)の司会をやるんでブレーンを探していて、それに誘われたことが、僕が放送作家になるきっかけなんです。だから本当に、今の自分があるのは中島らもなんだなっていう。らもさんに会ってなかったら、僕は今ここにいないってすごく思います。
 

それぞれの中島らも

 
——11/28のイベントのこともお伺いしたいんですが、さすがのメンバーですね。
 
鮫肌:『らもはだ』にも出ていただいたりとか、らもさんと一番ディープな関わりがあった方というと、やっぱり僕も含めてのこの4人になるのかなって思って。中島らもさんのことを今一度語り合うにはこのメンツしかないと選びました。関西在住で今回はお呼びできない人もいるので、僕が大阪にカメラを持って出向いて行って、ロケ形式でインタビュー映像を撮ってこようとも思っています。
 
——それは楽しみですね。
 
鮫肌:今回、本を書いていて思ったんですけど、中島らもさんってものすごく多面的な方だったので100人いたら100様、それぞれの心の中にその人が感じたらもさんがいると思うんですよ。だから”鮫肌文殊対中島らも”でも本が一冊書けるし、”山内圭哉対中島らも”または”松尾貴史対中島らも“でも一冊本が書けちゃうと思うんですよ。それぐらい深く多面的な方だったと思うので。僕はたまたま鮫肌文殊バージョンで書いただけで。そのトーク版というか、今回のゲストの心の中の中島らもって一体何だったんだろう!? っていうのを話せればと思っているんですけども。
 
——人によって、らもさんの印象が全然違いそうですね。
 
鮫肌:全然違うと思います。テレビタレントとして、放送作家として、コピーライターとして、小説家として、ギタリストとして、それぞれの世界からそれぞれの心の中に中島らもがいるので、そういうことをお話しできればなと思っています。中島さなえさんは娘さんですから、娘から見た中島らも、というこれ以上濃い繋がりはないですからね(笑)。
 
——イベントでは、その辺のお話がたっぷり聞けそうですね。
 
鮫肌:それぞれの心の中にいる、中島らもについて話します。だから僕は僕の中にある中島らもについて話すし、松尾さん、山内、娘のさなえちゃん、それぞれの心の中にある中島らも、みんなの知ってる中島らもも、共通点としてあるでしょうし。いろいろと盛りだくさんで、楽しい夜にしようと思っています。
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鮫肌文殊
「らぶれたあ〜オレと中島らもの6945日〜」

講談社
11月22日発売
320頁
予価:本体1500円(税別)

LIVE INFOライブ情報

2016年11月28日(月) 
「一夜限り!らもはだ復活祭
~鮫肌文殊『らぶれたあ』出版記念~」
【出演予定】
(敬称略)松尾 貴史、山内 圭哉、中島 さなえ、鮫肌 文殊
VTRゲストあり
OPEN 18:30 START 19:30
前売2,000円/当日¥2,500円(税込・要1オーダー500円以上) 
※前売り券はe+にて10/21、10時~発売致します。
【会場】新宿ロフトプラスワン(03-3205-6864)
※会場にて、『らぶれたあ~オレと中島らもの6945日~』
鮫肌文殊(講談社/11月22日発売)の販売あり。
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