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INTERVIEW

トップインタビュー宅野誠起(アニメ監督)×柴宏和(プロデューサー)(Rooftop2016年11月号)

『うどんの国の金色毛鞠』

2016.11.01

 宅野誠起監督・柴宏和プロデューサーの黄金コンビで作られる『うどんの国の金色毛鞠』。日常芝居・子供の表現・食べ物とアニメーションでは難しいとされる表現を真正面から取り組み、人間ドラマを表現している今作。誰もが懐かしさを感じる今作はどのように制作されているかを伺いました。
(interview:柏木 聡[Asagaya/Loft A])

念願の作品

 
──まずはアニメ化に至った経緯を伺えますか。
柴(宏和):原作コミックスの表紙が可愛いなと思ったんです。そこで作品について調べているときに、「次回重大発表」というブログ記事があったので、これは絶対アニメ化だと思ったんですが、ラッピング電車『ポコでん』が走りますという内容だったんです。アニメ化じゃなくてホッとしました。でも、アニメ化してない作品の電車が走るのはすごいなとも思って新潮社さんに連絡したのが、2014年10月ころです。
──宅野(誠起)さんはどのタイミングで入られたのですか。
柴:『石膏ボーイズ(以降、石ボ)』もあったので、かなり後でした。普段から日常ドラマが好きだと聞いていたので、原作を読んだ時に好きそうだなと思ったんです。
宅野:『山田君と7人の魔女(以降、やまじょ)』や『石ボ』のような喜劇的なものも好きなんですが、ドラマ志向も強いので、今回は念願の作品でもあります。
──待ち望んでいた作品だったんですね。今作の特徴はポコが狸だという点だと思います。人間ではないので、作中では野性的な部分もありますが演出されていかがでしたか。
宅野:セリフは子供・幼児なんですけど、人間社会で生きてきたわけではないので、完全に人間になりきれていないんです。その微妙なニュアンスが難しく、ポコ役の古城門(志帆)さんは苦労されていました。
 

現場の雰囲気・バランスを大事にしています

 
──キャストはどのように選ばれたのですか。
(俵)宗太役の中村(悠一)さんは、香川出身ということもありお願いしました。篠丸(のどか)先生もイメージ通りだったらしく即決でした。
宅野:ポコは男の子のキャラクターなので、女の子っぽくなるのは嫌だったんです。古城門さんはハツラツとしていて伸びやかでした。また、ほかの作品で人間ではない役も演じられていて、そういうキャラが得意だということも聞いていたので(笑)。
──あまり聞かない理由ですね(笑)。
宅野:ポコは狸の状態の時もあり、鳴き声で感情表現をしてもらわないといけなかったので、古城門さんで良かったと思っています。
──柴さんの中でポコのイメージはあったのですか。
一緒にいると明るくあったかい気持ちになるというイメージです。向日葵だとちょっと主張がつよすぎるので、タンポポくらいのイメージを持っていました。
──ほっこりする感じということですね。他の方はどのように選ばれていったのですか。
宅野:中島(忍)役の杉田(智和)さんは中村さんとの掛け合いを見たいという私の欲もありますが、イメージに合う方を選んでいきました。
(大石)凛子役の中原(麻衣)さんは愛媛にいらっしゃったことがあって、それもあるかと思います。オーディションもぶっちぎりで良かったです。
宅野:特に4話は素晴らしくて、かずら橋の上で民謡を歌うシーンは鳥肌が立ちました。
アフレコ現場では、雰囲気・バランスを大事にしています。良い作品を作ろうという空気を出せると、全体のベースアップにもなるので、良い相乗効果が得られます。
──今作は香川が舞台ですから、方言も必要になってきますね。
宅野:眞鍋(昌照)さんに方言指導としてベタづきで頑張ってもらっています。
通常の芝居+αになりますから、みんな大変そうです。中でもくじらさんの讃岐弁は是非聞いていただきたいです。香川出身の中村さんが「こんなばあちゃんいたわ」って仰っていました。
宅野:音響面では鶴岡(陽太)さんにも非常に助けられています。
そんなベテランが揃っている中で本渡(楓)さんという新人の方に(田中)のぞみ役で入っていてもらっていますが、注目の新人だと思います。
──のぞみはポコの初めての友達なので、キーパーソンになりますね。赤ちゃんがえりをするというのもなかなか演技力を問われそうですがいかがですか。
宅野:なかなか難しい役柄を見事に演じていただきました。
──声の演技もそうですけど、日常芝居を重ねていく作品ですから演出・作画も手を抜けない作品ですね。
宅野:本当にそこは逃げられないので、非常に基礎力を試される作品です。やはり子供の表現は難しいです。幸い優秀なスタッフが多く可愛らしい表現・芝居など非常にこだわって作ってもらえています。
──実際に香川には行かれたのですか。
はい、ロケハンやイベントで行きました。
宅野:行ったらひたすら資料写真を撮りまくっています。現地の方がご覧になって「違うな」って言われてしまうと非常に悔しいので、リアルに再現したいなと思っています。
──今の香川を表現されているんですね。さらに、重要な要素である食べ物を、絵で表現するというのは非常に難しいと言われていますがいかがですか。
宅野:美味しそうに見えるように頑張っています。ただ、うどんで助かったなとも思っています(笑)。刺身とかだったら、食べた量を細かく表現しないといけないので。
僕と宅野さんはうどんの手打ち体験もしました。
宅野:私は講師の方から褒められました。アニメの仕事がなくなったら、うどん屋をしようと思います(笑)。
さらに宅野さんは独身ですから、この作品のために貫いてきたんでしょ。
宅野:幾度のチャンスを断って、キャラの心情にならんといいものが作れんと(笑)。
結婚してたら宗太の気持ちわかんないもんね(笑)。
宅野:やかましいよ!
 

「うどんの国と金色毛鞠」
著者:篠丸のどか 

出版社:新潮社〈BUNCH COMICS〉

1~6巻 ¥552+税
7・8巻 ¥580+税

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LIVE INFOライブ情報

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=TVアニメ=
「うどんの国と金色毛鞠」
日本テレビ 毎週土曜日 深夜25:55~  西日本放送 毎週日曜日 あさ7:00~ ほかにて全国にて放送中
アニメ公式サイト< http://www.udonnokuni-anime.jp/
 
=イベント=
11/19(土)
『「うどんの国の金色毛鞠」アニメ制作秘話トークイベント』
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥2,000 (飲食代別)
【出演】
宅野誠起(監督)、 臼井文明(助監督) 、古城門志帆(声優:ポコ役) 
千矢真理子(新潮社:担当編集 )、細井駿介(バップ:プロデューサー )
池田臨太郎(ライデンフィルム:ライター)
会場:Asagaya/Loft A

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