トップ > インタビュー > 上原ひろみ(Rooftop2016年10月号)

上原ひろみ(Rooftop2016年10月号)

 新宿ロフト40周年で豪華なラインナップが続く中、最後を飾るにふさわしいスペシャルなイベント、上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトの EX シアター スタンディングライヴが決定。日本を代表するピアニストとして多くの栄誉を得た事以上に、その聴く者の胸を激しく揺さぶるライヴ・パフォーマンスは国内外の多くのミュージシャンにも支持される。でも上原ひろみと新宿ロフトのコラボレーションって一体何故? (取材・文:吉留大貴) 

上原ひろみ「私、以前から新宿ロフトでライヴがとてもやりたかったので、実際に何度も出来ないかとロフトの人達とも相談させてもらったんです。それが今まで出来ていない理由はたった一つで、私が現在弾いているサイズのグランドピアノを搬入するのが難しいからなんですよね。だから今年新宿ロフト40周年と聞いて、何とか参加したいと考えて、40周年イベントの一環としてEXシアターでのスタンディングライヴをやらせてもらう事になりました。でも本当は新宿ロフトでライヴがやりたいので、50周年イベントまでには、何とか壁を壊さないでピアノを搬入出来るシステムを導入して頂きたいというのが正直な本音なんですよ(笑)」 
 
 本来ならもうこの言葉に何も付け加える必要はないのかもしれない。今年発表されたアルバム「SPARK」がビルボードジャズチャート1位を獲得した事でさえある種納得させられる程、文字通り世界レベルで活動し続ける上原ひろみが新宿ロフトでライヴをやりたいと願い続けてきた事実の持つ意味は余りにも大きい。だからこそ新宿ロフト40周年の今年遂に実現するスタンディングライヴは、アニバーサリーイヤーの最後を飾るサプライズと呼ぶに値するのも分かるはずだ。同時に彼女にとって東京のホームグラウンドでもあるブルーノート東京とのライヴとは、根底から異なるのが予想されるスタンディングライヴをどうして必要とするのだろうか?
 
HiromiA.JPG
 
上原ひろみ「有り難い事に今私のライヴに来てくれる人達は本当に幅広い層になっていて、子供から70代、80代までいるんですね。だから正直座れないライヴは難しいという人もいると思います。普通音楽を聴く時って精神力は必要かもしれないけど、スタンディングライヴは何と言ってもまず体力が必要ですしね。ただ私はライヴをやる側でもあるけど、同時にとてもライヴをよく観に行く人でもあるんですよ。音楽を貪って生きていると言ってもいいかもしれない。ライヴに行くというのは時間やお金を使うわけだし大変な事であって、さらにはスタンディングともなると、本当に体力勝負。でもやはり、だからこそ得られる対価って絶対にありますから。私のファンもそういった体験をしてもらいたいから、フェスだけではなくて、単独のスタンディングライヴをやりたくなるんだと思うんです。その点では新宿ロフトに日頃から行っている人達は、ステージからミュージシャンが放つ波動を全て受け入れる準備が出来ているんじゃないかなって感じますよね。そうじゃなかったらロフトに足運ばないでしょう。私は海外のロック系のライヴハウスを多く知っているとは言えないけど、新宿ロフトが持っている雰囲気や氣は世界でも類を見ないのは分かります。多分多くの凄いライヴを積み重ねたからこそ生まれる空気感がとても好きなんです。私のお客さんにはまだ新宿ロフトに行った事が無い人もいるだろうし、またロフトによく行かれる人達で私のライヴを観た事の無い方もたくさんいらっしゃると思うんですね。今回のスタンディングライヴがその両方を繋げる懸け橋になれば嬉しいな。でもね、スタンディングの時にふっと会場を見ると、若い世代が多いんだけど、それでもかなり年配の方もいらっしゃるんですよ。思うに、ずっと追いかけているスタンディングを中心に行うバンドと一緒に歳を取っていったり、あるいは、その人達は自分達よりも若い世代のバンドやミュージシャンに触れたりすることで、精神的にも肉体的にも若々しくいられるのもあるんじゃないかな。私のライヴって観ているだけなのに体力を使う(笑)と、世界中で言われるぐらい凄くエネルギーを消耗するらしいんですけど、ステージ側と様々な世代のいる客席の間で、本気で魂がぶつかり合うスタンディングライヴの醍醐味をお届けしたいですね」
 
何故上原ひろみがジャズシーンだけでなく、新宿ロフトや下北沢シェルターに出演するような多くの若手ロックバンドに多大な影響を与える存在になったのか。ピアニストとしての圧倒的な技術力も重要だが、それ以上に彼女の発言に込められた、「ライヴに賭ける一期一会の過剰な情熱」がより広範囲に伝わってきた事の証明であろう。そしてその事実に一番敏感であったのが、今回のスタンディングライヴ実現におけるキーパーソンと言える新宿ロフト店長大塚智昭であり、日々新しいバンドに出会う彼にとって上原ひろみを今回の新宿ロフト40周年イベントにブッキングするのは、今後のロックシーンに対する明確な意志を示す上でどうしても必要な最重要ミッションであった。 
 
大塚「音源がデジタルで幾らでも作れるようになった今、これから若いロックバンドが世に出るにはどんなスタイルでもいいですけどやはり高い演奏力が必須で、具体的にジャズとプログレの要素が必要不可欠になったのを実感します。その上で若い世代が上原ひろみの存在を自らの基準値にするのは正しいし、上原さんが新宿ロフト40周年のイベントに参加してしてくれたのも嬉しいのですが、これからの新宿ロフト50周年に向けて新たな変化を示す意味合いの方が実はもっと大切なのかなと考えているんですよね」 
 
HiromiB.JPG
 
 ロフトグループと上原ひろみの関係はオーナー平野悠との対談に始まり、何度か本誌ルーフトップでもインタビューさせてもらっているし、アルバム「VOICE」ではジャケット撮影が新宿ロフトだった事を知る人も少なくないだろう。また極めて個人的な事ではあるが、筆者の結婚パーティーを新宿ロフトで行う事を上原ひろみに背中を押してもらった事が、彼女がロフトに足を踏み入れるきっかけでもあった。現在まで友好的な関係は築かれていたので、後はタイミング次第という見方は出来たかもしれない。だがそれでも今回のスタンディングライヴが成立したのは、大塚店長の「ロックシーンの変化に対する新宿ロフトとしての意思表明」というファクターが結果として一番整合性があるのではないか。ジャズやプログレ、出来るならクラシックやクラブミュージックの要素を含んだ演奏力や発想力にパッションが常に己にあるかどうかを問われる日々がこれからの新宿ロフト50周年に向けてもう始まっている。若いバンドは勿論、ロフトレジェンドの人達も何処かでこの変化にどのように対応するかが興味深い。そして最も大切な事は、上原ひろみが新宿ロフト50周年参加の意向を早々と表明した以上、今後10年間折に触れ彼女と何らかの関わりを持つだろう。つまり世界レベルで自らのハードルを高めてきた上原ひろみが今後のロフトの基準値になれば確実に何かが変わってゆく。新宿ロフト大塚店長、完全に確信犯。恐るべし! 
 
上原ひろみ「以前に出演したスイスのフェスで、第一部が大好きなクラシックのピアニスト、マルタ・アルゲリッチ、第二部が私のトリオ、第三部がジャック・ブルース・バンドというブッキングがあって、それが私の理想のイベントなんですよね。音楽に対して異常なまでに本気の人達ばかりで、そういう人達だったら誰でも通じ合えるんじゃないかなと思ってます。よく言ってますけど、私は普通の人ですけど、音楽に関しては半端じゃない愛情を持っているのは自信がある。だからね、ジャンルの垣根を超えるとか、ジャズシーンでの自分の立ち位置をどう考えるかとか聞かれてもよく分からない(笑)、毎日本気で全部のエネルギーを愛情込めて演奏しただけなんですよ。例えば先日の東京ジャズフェスでのミシェル・カミロとの共演はピアノさえ入れられれば新宿ロフトでやってもおかしくないライヴだったんじゃないかな。11月のEXシアターのスタンディングライヴも本気でぶつかるから、本気で返して欲しいです。あとこの40周年で新宿ロフトに出演したいのに駄目なのは私だけなんですよね、何か寂しいなあ(笑) この前ロンドンでスタンディングライヴをやった時、一曲目から携帯で撮ってた人がいて、「私ははるばる旅をして、今日ここで全力を尽くすためにここに来た。だから、そんなデジタルな物体を通さず、通じ合いたい!」とMCで言ったら、それから運命共同体みたいに盛り上がったんですけど、やっぱりユーチューブで動画を見ても新宿ロフトの匂いや気配は絶対に伝わりませんから。実際に自分で足を運んでしか得られない真実が確かにライヴにはある。その真実をお客様に全力で証明したいから、私は本気でやり続けたのかもしれないですね。」
 
Hiromi2.jpg
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト / SPARK

[限定盤][SHM-CD][+DVD]
品番:UCCO-9998 2016.02.03発売
3,564円税込み

Live info.

 SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト 「SPARK」ジャパンツアー 2016 スタンディングライブ
 
【出演】上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat アドリアン・フェロー&サイモン・フィリップス
 
【日程】2016年11月16日(水)
【会場】EX THEATER ROPPONGI
【時間】OPEN 18:00 START19:00
【チケット】ADV 5500円(税込・ドリンク別) スタンド/指定席¥7,500(税込・ドリンク別)
【発売日】10月22日(土)
ぴあ、ローソン、イープラス、CNプレイガイド
 
主催:TBS/J-WAVE
企画制作:(株)ヤマハ ミュージック アーティスト
協力:イープラス/ユニバーサル クラッシク&ジャズ/ヤマハ(株)/LOFT
後援:スペースシャワーTV
ステージ制作 :エピキュラス
問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999(平日12:00〜18:00) http://www.red-hot.ne.jp
オフィシャルHP :http://www.hiromiuehara.com/