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INTERVIEW

トップインタビュー川口潤(映画『オールディックフォギー / 歯車にまどわされて』監督)(web Rooftop2016年8月)

オールディックフォギーの得体の知れぬ魅力を切り取った川口潤監督の単独インタビュー

2016.08.01

 オールディックフォギーのドキュメンタリー映画『オールディックフォギー / 歯車にまどわされて』が完成した。監督は、『77BOADRUM』(2008年)、『kocorono』(2011年)、『山口冨士夫 / 皆殺しのバラード』(2014年)などの川口潤。ロック・ファンなら実に興味深い絶妙のタッグではないか!
 オールディックが放つどこか得体の知れない匂いと、それを嗅ぎ取り更に匂いを強烈にしていく川口監督。だがしかし、解散とか復活とかトピカルな出来事が何一つない(笑)オールディックから何をどう映していくのか。それは日常であり、そこから逸脱した非日常であり、つまりオールディックの音楽そのものでもあり、素顔でもある。バンドのリアルを見せながら何層にも重なっていく仕掛けに、まさに「まどわされて」いく新しい音楽ドキュメンタリー映画だ。川口潤監督に訊く。(interview:遠藤妙子)

予測不可能だったからこそいろんな挑戦ができた

──まず最初に、どんなふうに映画の話が始まったんですか?

川口:去年の4月に、映画『kocorono』の近藤プロデューサーから「オールディックフォギーってバンド知ってる?」って聞かれて。面識はなかったんだけど、橋の下世界音楽祭と下北沢ユニオンのインストアライブで見かけたことあって。「(DIWPHALANXの)広中さんと企んでることがあるんだよね」って言われて。それでその後、ボーカルの伊藤君とドラムの順堂君に会って。ちゃんと話したのはそれが最初。

──最初の印象はどうでしたか?

川口:良かったですよ、ていうか酔っ払ってた(笑)。伊藤君に「どういうのやりたい?」って聞いたら「カンフー映画」って(笑)。もともとカンフーが好きなんだろうけど、ちょうどアルバム『グッド・バイ』のレコーディングで「マネー」を録ってた頃なんじゃないかな。

──あぁ、カンフーっぽい曲だし(笑)。

川口:とにかくふざけた連中、面白い奴らだなって。

──川口さんは、すぐに「やろう!」って決意したんですか?

川口:「やろう!」っていうか「やるんだな」って感じ(笑)。初めて会った日の週末には沼津のライブに行ってた。ツアーにはかなり一緒に行ったんだけど、別に密着しましょうって話もしてないし、密着してるつもりも全然ないんだけど。僕は彼らと知り合いでもなんでもなかったから、彼らのことを知るには現場に行ってみようってシンプルなとこですよね。「どんなレコーディングしてるんだろう?」「どんなライブしてるんだろう?」、それが映画に映ってる。

odf_sub_photo.jpgsub_05.jpg──うん。川口さんのオールディックに対する好奇心が感じられます。知り合いじゃないってことも大きいんでしょうね。例えばブッチャーズとは違うわけで。

川口:全然違いますよね。ブッチャーズはずっと撮ってて知り合いという思いもあった。オールディックは初対面で、それも僕にとっては挑戦でもあるし。

──知り合いじゃないからこそいろいろ挑戦ができたんだろうし。

川口:そうですね。予測不可能だからこそ挑戦できたのかも。音楽ドキュメンタリーが増えた中で、奇をてらうのも嫌なんですけど、滲み出てくるもので面白い個性溢れる作品を作りたいっていうことをずっと考えていて。そういう中で今回の映画の話が来た。そしたらちょうどいい役者も揃っていた(笑)。

──ホント、素晴らしい役者で(笑)。川口さんの中で、新しい音楽ドキュメンタリー映画への挑戦と、オールディックという素材が、ビタッと繋がった。

川口:そうですね。

仲野茂&中尊寺まい.jpg増子直純&NAOKI.jpg渋川清彦.jpg──じゃ、映画の中でドラマ仕立てで演技する場面もありますが、それは映画のために考えてたもの?

川口:「シラフのうちに」のMVにも使ってますが、個人的には映画で使うつもりで挑んでました。

──ゲストもみんなノリノリで。仲野茂さんのエロっぷりは…、凄いですよね(笑)。

川口:伊藤君もどこ見ていいか分からなくなって目が泳いでました(笑)。ホントに皆さん真剣にやっていただいて。

──錚々たるメンバーのバンド仲間が集まって、各々タクシーの客に扮して。

川口:愛があるんですよね。あと最後に出てくる俳優の渋川清彦さん。彼もバンドやっててオールディックと繋がりはあるんです。

──ホントにプロのいい演技していて。伊藤さんも渡り合っていて。

川口:いいですよね。ありがたいです。

 

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【伊藤雄和が敬愛する作家・西村賢太氏よりコメントが到着!】
音楽で人生を棒にふる──かような一途バカも、そのポーズだけなら容易いことだ。
だが実践となるとやはり並大抵の意思でできるものではなかろう。
それをごく自然体に、当たり前のような顔をしてやってのけているこのバンドの面々は、ちょっとこれは……どうにも稀有の、見上げた落伍者たちだ。
              ──西村賢太(芥川賞受賞作家『苦役列車』)

主演:OLEDICKFOGGY(伊藤雄和、スージー、TAKE、四條未来、yossuxi、大川順堂)
出演:渋川清彦、仲野茂(アナーキー)、増子直純(怒髪天)、NAOKI(SA)、TezukaTakehito(LINK13)、HAYATO(CROCODILE COX AND THE DISASTER)、中尊寺まい(ベッド・イン)他
監督・撮影・編集:川口 潤
製作:「OLEDICKFOGGY」映画製作委員会(ディスクユニオン+日本出版販売)
制作:アイランドフィルムズ
エグゼクティブプロデューサー:廣畑雅彦、小松賢志
プロデューサー:広中利彦、近藤順也
©2016 OLEDICKFOGGY Film Partners
ビスタ|ステレオ|カラー|デジタル|99分|2016年|日本映画
宣伝:VALERIA
配給:日本出版販売
8月11日(木・祝)よりシネマート新宿にて公開決定! 以降、全国順次公開!

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